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今までここに書く事は無かったが、私は癌の摘出手術を受けている。 2000年暮れに大腸癌の告知を受けた。 そして2001年2月に腹部切開による摘出手術。 告知を受けた時に「転移は腹を開けてみなければ判らない」という事だった。 まあ、色々な検査である程度は判るが、細かい癌までは判らないという事である。 不思議と恐怖は無かった。 それよりも淡々と「死」というものを身近に感ていた。 無事手術が終るまでの約2ヶ月間は「生と死」というものについて両方考えた時期であった。 正確に言えば「どう死ぬべきか」という事が心の多くを占めていた。 やっておきたい事…というものがやたらと浮かんできた。 我が人生を遡ってみれば、死にかけた事は4回あった。 しかしその内の3回は突発的な出来事であり、じっくりと「死」と向き合うという 事は初めての経験であった。 それを体験して私の中に自分なりの「死生観」というものが生まれたのである。 何故、今になってこんな事を書いたかというと私は最近「甲冑」を誂えた。 甲冑というものは「生き装束」であり「死に装束」でもある。 そこに私の死生観とダブる何かがあったのである。 今、こうして生きていられる事。これは様々な縁に依るものと思っている。 時が経てば色々な事を忘れがちになるものである。 あの2ヶ月間を忘れない為に「死生観の象徴」として甲冑を誂えたのである。
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