2004年03月06日(土) |
『ハムレット』四季版 |
初めての“自由”。 先月、“秋”に行ったときに垣間見た外観はちっちゃい…と思ったものだが、実際に中に入ってみてもそうでした。 随分とちっちゃくまとまっている…それが第一印象。 客席より舞台のが広そうな気がした…(^^; 多分、写真に撮ったら綺麗に写りそうな内装だけど、実際にはロビーが狭くって休憩時間に寛ぎづらい。 相変わらずトイレがスムーズなのは賞賛したいが、お飲み物を持ってうろうろしてるお客さんに遮られてトイレの列に辿り着くまでの方が大変でした。 …人に揉まれる為に行ってるわけではないので、舞台の機能重視するだけじゃなくてあらゆる面において客が満足できる環境を作って欲しいと願わずにはいられない。 いくら優れた作品でもショボい小屋での上演では…せっかくの気分も台無しになってしまうから。 ここの劇場で広いと思うのは劇場に入る前の階段くらいか(笑)。
下村ハムレット…多分、今回が最後になるはず…演るのがではなく、私が観るのは…!(笑) ハムレットには19歳ハムレットと30歳ハムレット説があるという。 当然、下村さんは後者。 優れた役者は年齢を感じさせずにどんな役でも違和感なく演じてしまうものだが、19歳とは…思えない。外見だけでそう思っているのではなく、二手三手先を思い悩むようなハムレットだから。 若さだけでがーっと突っ走っちゃうようなところのあるハムレットはここの劇団では無理なんだろう…というか、そもそもコンセプトが違う。ホレイショーもフォーティンブラスもおじさんだし…(^^; 藤原君を観た後では潤いに欠ける…。<失礼な(>_<; 悩んでないハムレットも嫌なものだが、少し先のことを考えながら思い悩むハムレットも嫌なものである。 しかも…やはり、下村さんも器用な人だけに、ハムレットのやることなすこと空回りしちゃう不安定さに欠けているな…と。
それで何だって観に行ってるんだかといえば…新しい劇場が見てみたかったから(笑)。 今回、不意に時間が空きそうだったので検索してたらいろいろな演目が引っかかってきたけど、その中で一番いい席で…そして、“自由”は今までの演目よりもチケット代が嬉しくなっていたので。 …ディズニーだろうがロイド・ウェバーだろうが、他の演目でも、ウエストエンドやブロードウェイ並みのこのくらいの値段になるようにしてくれたらいい劇団だと思えるのに。<切実
そしてもうひとつは…もう一度、野村さんのオフィーリアが観たかったんです。 …この人こそ、年齢不詳の演技。(^^; 40過ぎてるというのはわかっているけれど、首筋に年齢が現れているけれど…可愛い。 それに、今まで観てきた中でオフィーリアがムズカシイ役どころだと思う訳は…狂気の演技とヴァレンタインの歌。どちらかが上滑りしたり、どちらかがこなれてなかったり、どちらかでもコケることほど滑稽なものはない。今まで観た中でそれを遜色なくこなしている…と思う女優さんはこの人だけ。(女形は…まあ、いろいろOKな人ばかりなんですが) あのヴァレンタインの歌はCDにならないんだろうか。(…CCが余分についてたら絶対に買わないだろうけど) ただ、この人もいくら可憐でもこの役をやれるのはあと数年だろうな…というのが透けて見えてきてますね。
四季の演出は傾斜舞台以外はごくごくスタンダードな衣装や演出なので、『正統派を観ている!』という気にさせられるのでそれなりに満足なのですが、かの有名な『尼寺へ行け!』のところでオフィーリアを叩きつけてないどころか、指一本触れていない…。 それがなんだか寂しいというか、物足りないというか…そんなに奥さんが可愛いのかとか、先生が怖いのかとか…下世話なことまでいろいろ考えてしまいます。
クローディアスは…なんだか小粒。兄を殺してまで何がしたかったのかが希薄に感じる。(私的解釈として王になるというのは目的ではなく手段だと思っているので) もうちょっと悪役なりの貫禄を身につけて欲しい。…せめてあと+10kgになってくれたら存在感も変わってくるだろうに。
しかし、やはり好きな役者だからとか関係なく一番いいなぁ〜と思うのはハムレット王の亡霊であったり、墓堀の件であったり、旅役者達。 それらは流石の貫禄の松宮さん…この人もかなりの高齢なはずだけど、声の張りなどはいつまでも変わらず、すごいと思います。 とか、亡霊の地の底から響くような低音は…音響の効果を抜いてもいい声だなぁ…と思ってました。(^^; また、旅役者が出てきたときにバック転してた人には…単純に感嘆しました。 傾斜舞台なのに、飛びにくい状況なのに、ジャンプが高い! 喋れる役者は少ないのに、こういうことのできる俳優さんはいっぱいいるんだよね…四季ってところは。
今回、俳優座の方とか、昴の方とか、民藝の方が客演してらしたのですが…『歌うために鍛えられた喉』と『喋るために鍛えられた喉』の違いを堪能してきました。 井上君が蜷川さんに『歌うように喋るな!』と怒られた訳を納得してきました。 四季の劇団創立メンバーはそんなに違和感がないのに、それ以降の人たちがストレートプレイをやるときにどこか違和感を感じていた訳にも納得できました。 ベースとして『喋るための喉』と『歌うための喉』では全く違うのはもとより、歌うように喋ってしまうと全員がそういう時はそれもひとつのスタイルとしても受け取ることができて、そんなに気にならないでしょうが、今回のように混ざると妙に間延びした感じが際立ちます。 …井上君くらいだったらまだ微笑ましくも受け止めてもらえるんでしょうが、四季で出演している人たちは…なまじ、そこそこのキャリアがあるだけにちょっとシャレにならない。 ストレートプレイに回帰したがってるけど、四季はもうミュージカル集団でしかない…っていうことが証明されちゃったような気分。 そうやって一生懸命に足掻いてる姿は嫌いじゃないんだけど…四季はやはり、ミュージカル劇団でした。
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