【読書記録】長野まゆみ「よろづ春夏冬中」 |
一番インパクトがあったのは『猫にご飯』。お茶碗て…!同類って…!!と、とにかくファンタジックな雰囲気に和みつつもしっかりセッティングされていて、現実とファンタジーの中間をゆらゆらした感じがとても印象に残りました。
不思議なイメージといえば、『希いはひとつ』。引越し先に現れるなぞの少年と、彼が手渡す見覚えのある道具に戸惑いを覚えはじめる主人公。何がどうなっているのだろうと思ったとき、するりと全ての意図がほぐれて着地する。掌編なのに、世界があるなぁと感心しました。
可憐で切ない感じだったのは『花の下にて』。下っ端の中浜は花見で座席確保を命じられ、おとなしく適度な場所を見つけたのだがそこで会ったのは――。最後の最後にそうくるとは思わなくて、ああ、と。それ以外のなにものでもない。
キャラクターと展開が一転二転して、彼はいったい?と魅せられたのが『アパートの鍵』。白に魅了されて買った絵画には住所が書かれていた。気の向くままに訪れたその場所は絵と変わらない場所で、戸惑っているうちに絵の作者の息子と遭遇するのだが――。手のひらで転がされているような、振り返ってみると面白いなぁとからりと笑ってしまえる感じが好き。
星を拾うシーンがとても幻想的で綺麗な『ウリバタケ』『獅子座生まれ』
とりあえず気になった作品をざっくりあげてみるとこんな感じ。全体的に見ると濃いな〜と思ったものの、好きなものは好きだったなぁということも無視できない。NO.19■p211/文芸春秋/04/10
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2009年08月20日(木)
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