【読書記録】長野まゆみ「あめふらし」

ストーリー:都心の一等地に居を構え、大して儲かりそうにない仕事を請け負う橘川のもとでアルバイトをすることになった市村。「蛇を捕まえに行く」そういわれて向かった家で、なぜか入浴させられ清掃を用意され、そして衝撃の内容を聞かされる。

『よろづ春夏冬中』内で出てきた橘川氏と、魂を持ってゆくというあめふらしのお話。そこに『天然理科少年』の岬が登場する、という展開でいいのかな。最初は、ファンタジーなのやらSFなのやらよくわからない感じで始まりますが、少しずつ現実とも浮世ともいいがたい世界が姿を現します。特に通貨さえ違う時代へもつながる扉なんてとてもわくわくしますよねvv大正っぽさを感じるところが、この上なく雰囲気としては気に入っています♪
そうやって、少しずつ岬は置かれた現状を理解して、周りの人間が落ち着いた半ば過ぎ。事態は急転する。岬が同居している兄、そして岬少年という存在がゆっくりと何者かによって侵食され始める。それは橘川によるものなのか、はたまた他の…。
最後まで読み終わると、はわぁ…となんとも言いがたい気持ちになりました。あんなに兄さん兄さん!と騒いでた岬と、正体不明の兄、それに岬がなぜ橘川の店でアルバイトするようになったのか、なぜその依頼者が橘川の元を訪れたのか。混乱気味ですが、お兄ちゃんを慕っている様子の岬を見ていたので、ラストでお兄ちゃんの一面を垣間見てしまうと、なんともいえない気分になるものです。ほんわかファンタジー風味で終わると思ったのに、最後にそういう人間関係を絡ませるのか〜と思った一冊。

ところで、巻末広告に『よろづ春夏冬中』『天然理科少年』の二冊が紹介されており、よろづ〜の方は既読で内容的に合致するので、こういうつながりなのかと考えたわけですが、気になって読んだ理科少年の岬とこの本の岬がイコールで結ばれるような何かは見つからず、だけど明らかに同じ名前で、困惑気味です。同じなのかしら・・・?
NO.24 p217/文藝春秋/06/06
2009年10月21日(水)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン