浅間日記

2010年11月11日(木) 秋の里

晩秋の里山で仕事。

里に近い山は、人の暮らしに便利になるよう、
長い時間をかけてデザインされている。

畑や田や住まいの役に立つもの、食糧になるもの、
そんなものが人手をかけて植えられ、育てられている。

その中の一つに、人の心の慰めになるもの、として植えたものがある。
農家の裏庭や、お社に向かう野道の辻や、川端なんかに植えられている。

娯楽の少ない山里にとって、四季折々の変化は大切なエンターテイメントなのだ。

イタヤカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、クヌギにサクラが、
蒼穹を背景に、色とりどりに映えている。
漆黒の太い幹と美しいコントラストを成している。

自分に視覚が備わっていることに、大いなる喜びを感じる。
どんな名画よりも、どんな由緒ある庭園よりも、
私にはこの何気ない、普通の人が丹精して拵えた里の風景が尊い。



早々と落葉を済ませた木々達は、その枝先に冬芽をしっかりと抱き、
冬の向こうにある若葉の季節に向かっている。

あらゆるものが、緩やかに−あるいは目にも留まらぬ速さで−変化している。

2007年11月11日(日) クロックマダムにパイナップルは入るのか
2006年11月11日(土) 誰にもあげない
2005年11月11日(金) 他人の死を引き受ける
2004年11月11日(木) 月と暦


 < 過去   INDEX  未来 >


ipa [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加