晩秋の里山で仕事。
里に近い山は、人の暮らしに便利になるよう、 長い時間をかけてデザインされている。
畑や田や住まいの役に立つもの、食糧になるもの、 そんなものが人手をかけて植えられ、育てられている。
その中の一つに、人の心の慰めになるもの、として植えたものがある。 農家の裏庭や、お社に向かう野道の辻や、川端なんかに植えられている。
娯楽の少ない山里にとって、四季折々の変化は大切なエンターテイメントなのだ。
イタヤカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、クヌギにサクラが、 蒼穹を背景に、色とりどりに映えている。 漆黒の太い幹と美しいコントラストを成している。
自分に視覚が備わっていることに、大いなる喜びを感じる。 どんな名画よりも、どんな由緒ある庭園よりも、 私にはこの何気ない、普通の人が丹精して拵えた里の風景が尊い。
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早々と落葉を済ませた木々達は、その枝先に冬芽をしっかりと抱き、 冬の向こうにある若葉の季節に向かっている。
あらゆるものが、緩やかに−あるいは目にも留まらぬ速さで−変化している。
2007年11月11日(日) クロックマダムにパイナップルは入るのか 2006年11月11日(土) 誰にもあげない 2005年11月11日(金) 他人の死を引き受ける 2004年11月11日(木) 月と暦
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