熊野にて仕事。 仕事、といってもほとんどボランティアのような対価の用事なんである。
そうだからもう、仕事がはねたあとは、 宵越しの金は持たねえ、の意気込みで消費に勤しむ。
そもそもこの土地は、そうした処なのらしい。
紀伊山地の杣人は、伐り出した木を川で運び、 河口のこの街で市に出すと、一晩豪遊して、また山へ帰っていく。
今でも熊野川上流の街からやってきて、 一晩に十万単位でお金を使う輩もいるのらしい。
しかしそうはいっても、新宮の街は明らかに衰退している。
かつて栄華を誇った形跡がみられるだけ、物悲しい。
自分が考える以上に、経済のグローバル化は-ひどい爪痕を残しながら-、
地方の小都市を侵食し、焼き払い、文化も記憶も根こぎ奪っている。
そのことに、腹の底から湧き上がるようなやりきれない気分を、
小さな酒場ののれんをくぐることで、どうにかしようとする。
2014年05月27日(火) 背徳の猫達 2007年05月27日(日) お受験母 2006年05月27日(土) 2005年05月27日(金) 梅涼 2004年05月27日(木) 適正表示
|