ナツ日記
ちょっと


暗い…って言ったらおかしいのかな。まじめな話をします。
そういうのがいやな方は読んじゃだめですよ。

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私が社宅に住んでいたころ、隣の部屋にいた家族のお父さんが亡くなられました。
私がそこを引っ越したのは中一のときで、その家のお嬢さんたちは幼稚園にあがったばかりのお姉ちゃんと、もっと小さな、立って歩くのが普通になったくらいの妹の、二人姉妹でした。
二人ともよく抱っこさせてもらってました。妹の子の方は、まだ首がちゃんとすわってない状態でも抱っこさせてもらいました。あの頃は、抱っこさせてもらいたくてしょうがなかったんだと思いますが、子供に子供を抱かせるのは怖かっただろうな、と今になって思います。実際私の母は止めていたのですが、その家のお母さんはそんな様子を微塵も感じさせずに抱っこさせてくれました。とても優しくて、可愛らしい人でした。
母に聞いてもそのお父さんが亡くなった原因は教えてくれなかったのですが、父と母が話している様子から、なんとなく自殺したことがわかりました。
お焼香あげて、遺族の方に挨拶するときに九年ぶりに二人の子供たちの顔を見ました。びっくりしたような顔で私を見ていた彼女たちには、多分私のことはわからなかったんでしょうけど、私はすぐ昔の二人の顔と結びついて、「変わってないなぁ」と懐かしむ思いと、「まだこんなに小さいんだなぁ」という切なさで、胸がいっぱいになりました。
棺にお花を入れるときにお顔を見せてもらえました。そのとき、ずっとお姉ちゃんの子の方が、「どうして?どうして?いやだ。いやだよ」と泣いていました。とても悲痛な声で、顔をくしゃくしゃにして泣いていた彼女は、私が傍にいた昔から、とてもパパっ子でした。
以前、予備校の先生から大学の恩師が自殺した、という話を伺いました。「先生は、自殺することを誰にも言わなかった。僕にも言ってくれなかった。一人だったんだろうなぁ。それが、とても悔しい」というようなことをおっしゃっていたのを覚えています。
自殺してしまった人たちは、こうして悼んでくれる人がいることを、わかっていて死んでしまったのでしょうか。
妹の方は対照的に泣いたりはしませんでした。参列者もほとんどの方が泣いていたのに彼女とお母さんは毅然としていました。
思えば彼女たち姉妹は昔からこんな感じでした。お姉ちゃんは甘えん坊で、妹の方がどちらかといえばおとなしかった。

足が悪くて、少しひきずって歩く、小柄な人でした。いつもにこにこ笑顔で接してもらってました。機転の利く、頭のいい人で、私は、あのおじさんがとても好きでした。

ご冥福をお祈りします。