「硝子の月」
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彼はそのまま視線をルウファに向けた。 「例えば、あの時の魔法使いによく似た紅玉のお嬢さんがここにいるのは偶然だろう」 何かを懐かしむような穏やかな眼差しを真っ向から受け止めて、「運命を知る」という少女は笑みを浮かべる。 「運命よ。ただし、あたしのね」 『影王』は一瞬驚いた表情をし、「そうか」と微笑して頷いた。 「そうだな。君達は新しい輝石になればいい」 新しい輝石は、新しい軌跡を描くことだろう。そしてきっと新しい奇跡を起こす。一人の青年が仲間と共にこの国を興したように、それとは違った物語を。それは歴史を動かすかもしれないし、ひっそりと忘れられることになるかもしれない。 そしてそれは、それでいい。
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