夕暮塔...夕暮

 

 

冷たい目 - 2002年01月25日(金)

いいですね愛妻弁当、からかい半分な調子で羨ましがってみる。正直な所真剣に羨ましい。作ってくれる人はいないし、自分で早起きするには時間が惜しい。今日の私の昼食は、駅構内のきれいなカフェで買ってきたシュリンプとトマトのサンド。
こんなもの、無理矢理持たされているんだよと退職校長は笑う。そして「先生、何か書くものを持っていますか」。何だろうと思いつつ手帳のフリーメモのページを差し出す。青い上質紙にグレーの罫線、こんな上等なところに失礼と言いながら金色のペンでさらりと力強い達筆が走る。

「出たくない日にも靴をそろえられ」

笑っていると、気をよくして下さったのか、今度は赤いボールペンでもう一句。

「冷たい目 いいえ私の 気の迷い」






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決して離すな - 2002年01月24日(木)

月の木影 かすかに震えし我の喉 かく絡め取り決して離すな



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迷うこともせず - 2002年01月22日(火)

この道を ゆくことが誰の為なのか 迷うこともせず途方に暮れても




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さざめく - 2002年01月21日(月)

君と手を取りて眺めし海原よ 夜の彼方には不安さざめく





君が手を 取りて異国の夜の海へ 向かう胸の帆は風に荒ぶる






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ゆうべの些細な雑談から、数年前、南の島で夜の海へ向かった時の事を思い出した。
私も友人も、終わりとはじまりを迎えようとしていた時期だった。
広大な敷地を持つリゾートホテルでのんびりと過ごしていた日々のうちのある一夜、散歩の途中で誰もいない砂浜に立った。雨期の夜で星も月も見えなかったが、サーチライトが海を照らしていたから、海がさほどおだやかでない事がわかった。
隣に立った彼女が何を考えていたのかはわからない。「こわいね、なんだか」わたしたちはサーチライトに照らされた波の荒い海を目の前にして黙り込み、私はこれから来る障壁とその困難を思った。今となってしまえば随分軽々と飛び越えた壁ではあったが、当時の私に自信があるとは言えず、自信だとか不安だとかを論じる以前の、もっと漠然としたところにいた。未来を展望する事が時に恐ろしいという事実に、私はかすかに喉を震わせて夜を睨んだまま、もう帰ろうという友人の声を待った。




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春告げる夢 - 2002年01月19日(土)

君笑めば 空気ゆらめき立ちのぼる これは花の香 春告げる夢




薔薇の頬 向けて微笑めば花開く 君の呼ぶ春に僕はいるのか





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言の葉を - 2002年01月18日(金)

言の葉を 愛しみ憎んでもどかしく 振り回されても 手放すことなど 






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今日からまた先生と呼ばれるようになる。久しぶりの事なので最初は一瞬レスポンスが遅れてしまった。


「ねえ、先生、下の名前なに」
突然に色白の少年が問う、かれはまるで外国の子供みたいだ。私は振り向きざまに名乗る。遠い国の街の名前。
「思っていたのと、違った……」
たいして残念そうでもなく少年達はさざめく。そう悪い感じはしない笑い方だったけれど、一体どんな名をつけてくれていたのか。教えてくれたらいいのに、この年頃の彼らは時々秘密主義だ。





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水辺の月を - 2002年01月17日(木)

せめてもと 水辺の月を手繰っても 欲しいどこかに届くわけもない




焼け消えたものは帰ってこないから 代わりに私が歌おう さよなら






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ごまかす事は容易い - 2002年01月16日(水)

邪気のない風を装うこの笑みで ごまかす事は容易い それでも



太陽の下で好きだと言える程 私に勇気があればよかった




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鏡に問うても - 2002年01月15日(火)

睦月風ぬるくはためくマフラーを ばさり剥ぎ取る わたしは闘う



あの人はなぜに私を選ぶかと 鏡に問うても解のなきまま




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遠い国にて君眠る闇 - 2002年01月14日(月)

夜ひらく 花の名前を呟きし 遠い国にて君眠る闇



遠い国 眠れる君のその頬を 柔らかに照らす夜来香の花




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