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裸足の爪先 - 2002年02月05日(火) 春浅く 水際に白き波立ちて 裸足の爪先赤に色づく ************ ****** *** * 携帯電話の機種を変えようかどうかと迷っている。かなり前から。アンテナは僅かに曲がっているし、暗めの銀色のボディはところどころ剥げてしまっている。けれどこの2年近く使っているMITSUBISHIの旧型、形といいデザインといいとても気に入っていて、どうにも離し難い。この2代後の機種が最新機種から外れようとしているというのに、私はいまだにこれに執着している。画面は当然のようにモノクロ、でもこれについての不満はない。私にとって、画面がカラーであることは特に好ましく感じられない。最近流行りの二つ折りタイプの形状にも心惹かれない。着信メロディを変えることや待ち受け画面の候補を豊かにすることにも執着がない。機種変更するならこれだ、と思っているものはある。何度も店頭で触ってみたけれどその度溜息をついてお店を後にする、なぜ幅広のデザインなんだろう。そこだけがどうしても引っかかる。 - あなたのいない未来を見ている - 2002年02月04日(月) ゆくさきのことなどあなたに語れない あなたのいない未来を見ている ……………… あなたのいない未来ばかりを考えている。飽くこともなく繰り返し、幾パターンも描かれる青写真のどれにも姿がないと知ったら、どんな顔をするだろう。 タイムリミットは近い。 - 愛される自覚を武器にし - 2002年02月03日(日) 愛されることを武器にし斬りつけて 悔いたりしないと誰にか呟く 愛される自覚を武器にし斬りつける 悔いたりしないとくちびる震わせ ………… - 火の色の - 2002年02月02日(土) 火の色の地平飛び立ちこの街の 夕風に凪いだ面影捨て去る ************** ******* *** * キッチンでひとり抹茶を点てる。小さな生チョコレートを舌にのせてお茶菓子代わりに。抹茶とチョコレートは相性がいい。久しぶりなので上手に点てられるかと心配したが、よかった、腕はそう落ちていないようだ。おいしくて、もう一服、もう一服とお茶が進む。お茶の名は「綾の森」、若いみどり綾なす春の森を想像する。センスがいい、素敵な名前だと思う。 母が上京すると言う。「いつまでこっちにいるの?」「日帰りで…朝イチの新幹線で行くから」私は少し驚く。「…お母さん、離婚調停人になるつもり?」…返事はない。少し苛立ってしまう、説得しに来るつもりなら来なくていい、私だって今忙しい。事態をクリアにしてくれる為ならば心から歓迎できる。一緒に引越の荷物詰めでも手伝ってくれるというならとても有り難い、でもそうでないなら要らない。そうでないなら、意味がない。 - 風かおる - 2002年02月01日(金) 風かおる 如月来たりて 君がため 思い悩む日も少なくなりゆく *************** ******* *** * 薫風は5月の季語、規則からは外れるけれど東京では2月に梅が咲く。白梅の下に夜立てば闇が香る。 すばらしく天気がいい。「大林君、時々休憩して遠くの緑を見るといいよ。目が疲れるでしょう」 脇目もふらず机に向かう姿がいっそ気の毒で声をかけると、律儀に少年は立ち上がる。5階から見下ろす広い校庭に人影はない。乾いてあたたかそうな土が広がっているけれど、私はもうあの上を駆ける感触を思い出せない。かれはどうだろう。あの日だまりの土のあたたかさが、このどこか寂しげな子にファミリアなのかどうか気にかかる。 吉祥寺に寄って帰る。爪先が丸めのスクエアになっている履きの深いミュール、ぴったりでとても歩き易くて、値段も手頃。無難な色を選ぼうとして、深いワイン色が目に付く。そういえば私は赤い靴を持っていない。 器のお店に追加注文してもらったくすんださくら色のお皿を受け取りに行く。梅の花の模様がほの白く浮かんでいる。形もわずかにいびつなのがかわいらしい。同じシリーズのふっくらとした形の茶碗蒸し入れが前から気にかかっているのだけれど、滅多に使わないものだからと我慢している。買わないとわかっているのに、お店に行くと見てしまう。店頭からあれが消えたら、わたしはおそらくもの凄くがっかりするんだろう。 - 許すほどには - 2002年01月31日(木) 時まかせ あなたが口にした嘘を 許すほどには優しくなれない ************* ****** *** * 100パーセント、私の味方をしてくれなくても良かったのに。ただ一言、私が欲しい言葉を、望む形で伝えてくれたら良かった、それだけで。嘘をつくつもりなどなかったと知っている。けれど許せない、真剣に尋ねた事に対して本気でない約束を簡単に口にするひとを、どうやって信じたらいいのかわからなくなる。私はあさはかだろうか。「失望したと、伝えて」電話の向こうで狼狽した雰囲気、わかっている、少し迷惑をかけてしまう。そんな報復めいた言葉を吐かずにいられない自分に歯噛みする。 ******* **** ** * 「このカレンダー、本当に素敵だったけど、今日で終わりね」台湾人の秀さんが呟く。黒井健のカレンダー、2001年版が1月末で終わったのだ。春に私が持参して飾った、そんな高い所に手が届くなんてと感嘆されたのを覚えている。「…うちにあるカレンダー、持ってこようかと浅井さんと話していたんですけど……これがあまりに素敵すぎて、気後れしてしまって。本当に綺麗だから」と笑う。穏やかな淡い冬の風景、柔らかなパステルの世界。ああそうだ、新しいのは手元にある。持って来ようと思って失念していたのだ。 帰宅してから取り出してみる。12月の絵が一番好きだと思う。晴れた日のさびしげで眩しい冬の日暮れ。 - チョコレート - 2002年01月30日(水) 夕べ買ってきた生チョコレート、いけないと思いながらも一晩で食べきってしまった。朝方まで研究を練っているうちに、1つまた1つと。ああ、こんなのは良くない。でもこんなことをしてしまう理由はわかっている。空では日増しに月が円に近付いていく。私の中でも。 - 眠りについたか - 2002年01月29日(火) 虹の輪の 煌めく月追う夜しずか 薔薇の雲も早や眠りについたか ************** ******* *** * 晴れた日の夕暮れ間近特有のばら色の雲、こんな絵を確かイタリアで見たと思う。旅した日々の事を考えながら、ゆったりと流れる車両に揺られる。 満ちてゆく月に虹の影。電気の消えた不動産屋の前に貼られた物件案内を眺めながら帰宅する。バッグの中には生チョコレートがひと箱。 - 風の夜の星 - 2002年01月28日(月) 忘られぬ 傷を深くに隠したら 濡れた目で仰げ風の夜の星 ************** ****** * * * この部屋を出て、ひとりで暮らす日の事を考えている。このとても気に入っている街がhomeでなくなる事、住み慣れたマンションを手放す事を憂えている。 ネットで数社に簡単に査定して貰った結果は悪くない。低い方のラインで伝えてみると、父は「ああ、そのくらいでいい、十分十分」と。この部屋の持ち主は両親だが、処分については大した感慨もないらしい。仕方のない事だけれど。両親にとってはここは都会のささやかな別宅みたいなもので、あれば便利だし売っても構わない、その程度のものなのだ。 寂しい、離れがたい、この部屋も、穏やかなアンティークの街も。心から。なのに誰に伝えても栓ない言葉。 - 高くいま高く - 2002年01月27日(日) しろかねを 駆けゆく君の息はずむ 銀の雪雲は高くいま高く ………… あんな薄着でどうして雪の原を走れるんだろう。寒くないのと問いかける私の声は僅かに呆れているのに、表情は明らかな憧憬を伝えているに違いない。彼を見る、目で追いかけている時のわたしは、とても優しい目をしていると思う。それこそ彼が呆れて口もきけなくなるくらいに。無言で背中を向けて雪を渡る姿は身軽でのびやか。…今、振り向いて、笑ってくれたら。 -
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