夕暮塔...夕暮

 

 

不可視の軌跡を - 2002年02月20日(水)

すべて人は 寂しく冷たき石を抱き 不可視の軌跡を歩くただひとり






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「明日…というか今日だけど、吉祥寺でお昼を一緒に食べない?」現在休職中の友人にメールする、時計は25時をとうにまわっているけれど、彼女にとっては活動時間だろうと見込んでのこと。すぐに返事が来る。「いいよ、何時にする?」2時でどうかな、待ち合わせ場所はいつものところで。

遅い昼食を摂ってからあちこち買い物をして、私はようやくコンタクトレンズを手に入れた。丸井が開いていないのに彼女は少しショックを受ける、「ファンケルに行こうと思っていたのに…」「中野で寄ったらどうだろう」「ううん、丸井って一斉休店するんだったかも…」それでは行っても甲斐がない。 結局お茶をして帰ることにして、武蔵野文庫へ。歩き疲れて冷たいものが欲しい気分だったのでアイスコーヒーを注文する。取っ手のない煎茶用の茶碗に似た器で来る。とてもおいしい。酸味や渋みが強すぎず香り高い、どうして自分ではこんな風に煎れることができないんだろう。彼女が少し残念そうに呟く、「ここ、コーヒーが評判なのに、私コーヒー飲めないんだよね…」それは少し損をしているかもしれないと思いつつ、しかしそれは煙草を好む人が私に「こんなおいしいものを」と思うことと似ているだろうかと思い当たって言葉にするのを控える。要は嗜好品なのだ。
茶房の向かい側には新しいお店ができている。和風で少し凝った造り、この街によくあるタイプの。今度来てみたいね、あとあの店にもと話しながら駅へ向かう。共に歩く私は空を見ない。月は着々と満ちているだろう。


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共に苦楽を - 2002年02月19日(火)

知らぬ間に 季移りゆき花開く 共に苦楽を過ごすうちにも





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恋を知らぬ - 2002年02月16日(土)

恋を知らぬ頃の目のように澄んだまま 今のあなたに会いたい 会えない




恋を忘れ 望み断たれて濡れた目の君の前に立つ 時は夕暮れ






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コンタクトレンズを作りに行かなければならないのに、昼過ぎに起きてぼんやりしていたらもう外が暗い。溜息をつく。
外に出ていない事を考えて軽めの夕食を作る、鮭のムニエルにほうれん草とインゲンのスープ、ムニエルにはこの間買ったハーブソルトを少しふる。一歩も外に出ないのもあんまりだと思い、食後の散歩を兼ねて外に出た。本屋を二件まわって雑誌を物色する。建築雑誌、個性的な家屋建築の特集はなかなか面白い、何かの基地だろうかと疑うような家がいくつも載っている。こういうのは確かに目をひくけれど、私はもう少し暖かみのあるデザインがいいと思いながらぱらぱらとページを捲る。ああでも海を見下ろす木の露天風呂は悪くない。手入れは大変だろうけど、素直にいいなと思う。温泉好きの両親にいつかあんな家をプレゼントしたい、でもまだ現実味の無い希望だ。
FRaUの今月の特集は占い。残念、占いが特集の時は買う気にならない。
深夜までやっているモスバーガーがとても空いているので、寄ってコーヒーを注文する。 Heal the world が流れる。懐かしい、一時期繰り返し聞いていた、あれはもう5年も前のこと。私は本を閉じた。









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いつも笑みを - 2002年02月15日(金)

いつも笑みを 絶やさぬところが好きでした 他にそんな人沢山いるのに




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堕ちてゆくのはわたしかあなたか - 2002年02月14日(木)

春迫る 今宵三日月は猫の爪 堕ちてゆくのはわたしかあなたか





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夕暮れを背にして都心へ向かう。駅のポスターで何度目にか思い出す、そうだ、上野でやっている展示を見たいと思っていたのに。当分やっているとたかを括ってしまって、いつも見逃す。気を付けなければ。一時期はしょっちゅう映画や美術展へ出掛けていたのに、最近の私はやや怠慢だ。
門の近くに座っている猫を撫でて抱き上げる。ふわふわと暖かい。「猫、好きだったっけ」不思議そうに問われる、「兎や犬が好きなんじゃなかった?」好きよ、猫も犬も兎も。どれも飼ったことがあるし、犬と兔は今も実家にいる。…だけど猫を最後に飼ったのは何年前のことだろう。最後にいた猫、拾ってきた三毛猫で性格のいいかわいい子だったけれど、ある日ふっといなくなった。今はもう無い裏口の木戸の隙間をすり抜けて出て行く姿を、私は今も鮮明に記憶している。猫はいつもそうだ。約束したようにいなくなる。子どもの私は理由を知っていたけれど、だからといって割り切れるわけではなかった。最後に見た後ろ姿、決して薄れないあの画像。思い出すだけで寂しい。だから忘れられないのだ。
すっかり暗い帰り道を歩く。今日の三日月はあまりに細い。


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切り離せぬまま - 2002年02月13日(水)

不機嫌な声色をそっと憎んでも 切り離せぬまま受話器握り締め




君の目を覗きこむたび胸痛む 恋は甘い夢と誰が言ったの





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虹にとろかす - 2002年02月12日(火)

ああ今を喪う事を恐れてはいけないだなんて言えない あなたに





あの西を虹にとろかす春が来る 祈る君の背よのびやかであれ






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声など悪魔に渡してもいい - 2002年02月11日(月)

もうふたり 言葉では響き合えぬなら 声など悪魔に渡してもいい





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「ハワイ6日間、49800円だって」友人からメールが入る。リゾートに行きたいと彼女は言う。「のんびりしたいよ、一緒に南の島へ行きたいな…それで写真撮るの、沢山」 のんびり過ごすならもう少し田舎の方がいいかも、と返す。「ハワイだと買い物熱に火が点いて大変な事になりそうじゃない?」「それもそうだね、ふふ」 私はずっとモルディブとセイシェルに憧れているけれど、ハワイよりはるかにお金がかかる。残念だけれど今はそんな余裕がない。「早く夏にならないかなあ、休暇が恋しいよ」私は多分誘われているんだろう。実現できるかどうかはわからないけれど、とりあえずお金を貯めておかなければならないらしい。でも難しいと思う。
けれど今回のメールにそれ程心打たれなかった事で自然に気付いた、私には今外国へ行きたいという気持ちがない。それは納得のいくことだ、この国は急速に春に向かっているところで、私はこの季節をとても好ましく思っている。今日買って来た『花時間』の特集はチューリップ。花の品種名を覚えるのが好きで、小さな写真と文字を淡々と追う。アーリーサプライズ、クリスマスドリーム、ロザリオ、スノースター、サザナミ、キララ。…さざなみ、きらら。どんな人達がこの名を付けたんだろう。共に白いチューリップ、さざなみは八重咲きできららは一重。人目をひく派手さや奇抜さはないけれど、ひっそりと清らかで優しい。



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夜の方角 - 2002年02月10日(日)

行かんかな 輝く闇の瀬くぐり抜け 君指し示す夜の方角



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雪の炎に - 2002年02月07日(木)

瞼閉じ 雪の炎(ほむら)に霞みゆく 君は泣いてもその手を離すな




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雪の炎が立つ、激しく吹き荒んで足下から沸き上がるようにその姿を隠す。私は泣きそうになるのを必死でこらえて、涙がこぼれないうちにひたりと目を瞑る。その手を離したらだめだよと、伝えたいけれど喉まで凍りついたように言葉が出ない。もういっそ世界の幕を下ろしてしまいたい、衝動的にそんなことができる人間だったら、私はもっと、楽に、生きて来られたのに。





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風邪が完治したばかりの友人から電話、「週末に食事でも…この間のお疲れ会って感じで」。共通の友人が結婚する、そのお祝いの席をささやかに設けたのだ。今週末に出掛けるのには今ひとつ気分が乗らないけれども、とりあえず約束をする。場所は私が決める事に。トムヤムクンが飲みたいけれど、さてどうしようか。



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