夕暮塔...夕暮

 

 

月齢15 - 2002年03月28日(木)

生まれた日 春を嵐が揺らしたと 聞きし幼き私を迎えに





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月齢15。月はまどか、桜は盛りをややこえただろうか、マンションのエントランスに花弁が沢山吹き込んでいた。明日から2泊3日の研修の後、そのまま実家へ向かう。私はひとつ年を取って、雪国でもう一度春を待つ日々を過ごす。


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花冷えの雲は - 2002年03月27日(水)

薄黄金 輝く夕映え後にして 花冷えの雲はいずこへ流れる






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ああ、冷たい雨も今日で終わりなのだ。電車の窓からきらめく西日が射し込む。ここ数日垂れ込めていた雨雲は、気が付けば驚く程高くて薄い。シャンパンの泡のような色に発光する夕陽、煙色の雲はその輝きに押されるようにして所在なげに流れてゆく。雨に濡れた桜が久方ぶりの春光に染まるのを窓ごしに、私はひっそりと安堵する。春よ、早くおいで、誰もがあなたを待っているのに。……


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棲みついた鬼を飼い慣らせ - 2002年03月26日(火)

その胸に棲みついた鬼を飼い慣らせ 君を蝕み食い潰す前に






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ここの所、電車の中で袴姿の学生さんをよく見る。気慣れた優雅さこそないものの、とても可愛らしいと思う、若い人の和服姿は場が華やぐようだ。今日は生憎の雨で気の毒だったけれど。そういえばこの間書いた卒業の歌は、別れの歌ではなく巣立ちの歌だ。すっかり記憶違いしていた。










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言えない私は狡く弱いまま - 2002年03月25日(月)

もう二度と 会えないねなどとジョークにも 言えない私は狡く弱いまま





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突然に決めた、わたしはあなたに何の事実も嘘も告げないままに、あなたと別れようと思う。ごめんね、ありがとう。ありがとう。心から。
痛みを伴って胸を甘くする、いつも追い風を吹かせてくれる大切なことを、こんな風にすっぱりと諦めようと思う一瞬が訪れるなんて、私は今日まで知らなかった。







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千鳥ヶ淵の夜桜 - 2002年03月24日(日)

見上げる花の雲、輝く紺の闇に遠く月が浮かぶ。風が吹き抜けると一斉に花弁が舞う、音もなく、雪のように揺れながら頬をかすめる。

「桜って、匂いないかと思ってたけど、実はあるよね」
「ふうん?」
「この間、花ごとぽとって落ちたのを拾ってみたら、いい香りがした…」
「背が高い木だから、わからないんだね。花が遠くて」
「そうね、きっと」

サクラガーデンという名のオードトワレがあった事を思い出す、そうだ、去年買おうと思っていたのに結局手に入れないままだった。もう一度カウンターに行ってみようか。…でも本当は、何かの花を模した香水は悲しいからダメなのだ、私には。どれも本物の香りは勝てないし近付ききれない、それが悲しくなる。
それならいっそ、生花の香りを楽しんだ方がいい。身には纏えなくても。






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どこにいたら - 2002年03月23日(土)

どこにいたら 君を思わずにいられるの 花けぶる春を巡るジレンマ




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花の色 雲の影 - 2002年03月22日(金)

寂しさのつのるこの道にさくら散る 君よ振り向いて 今一度だけ




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5階から見下ろす窓の外、桜咲く校庭で子ども達が駆ける。今日は卒業式。大きな造花を連ねてできたアーチの両端を持って、ひとりずつ子供が立つ。私は昔歌った歌を思い出している、花の色、雲の影、なつかしい、あの、思い出。確か題名は「別れの歌」。

最後に残った少女と、校門を出てしばらく歩いた。私は徒歩で、彼女は自転車で。
「じゃあ、元気で」 
交差点で手を取って別れて、私は何度も振り向く。もうあの子と会う事はないだろう。去り難い、でもどうしようもない。文字通り「成長」をしていくひとと付き合う仕事とは、こういうものなのだ。上手に時が流れれば、当然会えなくなる。春が来れば嬉しくて切ない。
お願いこちらを向いてと心の中で呟く、何度目かに気付いて、元気よく手を振ってくれた。




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春の嵐に - 2002年03月21日(木)

身ひとつで春の嵐に巻かれても 指針はこの胸 いつも南西




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私は西ばかり見ている。空を薔薇色に染める夕映え、嵐の雲は濃鼠、立ち止まる程の強風に向かっても恐ろしいとすら思わずに、嵐に巻かれるようにしてこころ動かされる事について考える。あなたに会って、説明可能な理由もなく無上の歓喜を得る事について考える。


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口づけて甘く花の降る午睡 - 2002年03月20日(水)

その瞼 そっと覆ったてのひらに 口づけて甘く花の降る午睡





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花は枝垂れて春の顔 - 2002年03月19日(火)

夢衣 花は枝垂れて春の顔 夕暮れを待ちてその下に立つ





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今週末の美容院の予約を入れた後、買い物に出る為にシャワーを浴びてゆっくりお化粧する。ベースは薄く、シアーナチュラルなリキッドに軽いパウダーを乗せるだけ。洗顔方法を思い切って変えたのが功を奏しているらしく、ここの所肌の調子がとてもいい。それだけで気分が良くなる、私は本当に単純な女だ。
ケーキを持ち帰る為にしばしば立ち寄る喫茶店、大きなフラスコのようなガラスの器に、水出しコーヒーがぽとりと落ちる。私の持ったグラスの中にも同じものが入っている。大きな半円テーブルの隣では、今日採用面接を受けたらしいアルバイトの青年が、長く勤めている青年から説明を受けている。受け答えの印象からは、何だかあまり期待できない感じだ。これでいいのだろうか。店について説明を続ける青年の物腰柔らかで淀みない口調と気遣いを考えると、随分レベルが落ちる気がするけれど。

予想より早く、あちらこちらで桜が咲いている。植物園に行こうと約束した、あれをいつにしようかとぼんやり考える。
   


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