夕暮塔...夕暮

 

 

黒曜のひとみの君が - 2002年04月10日(水)

黒曜の ひとみの君が星の夜に 傍らで眠る この幸福を




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みずみずしささえ - 2002年04月09日(火)

帰れない日を思い涙流すそのみずみずしささえ直視できなくて





帰れない 留まらず時は流れゆく 君の焦燥をはぐらかしても






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「県展にお出しになる額が、届きましたので…」
祖父が近頃贔屓にしている写真屋さんから午後の電話、私は「お世話になっております」と代わりに挨拶をして用件を聞く。この間お会いした女性の店長さんだと思う。祖父に一分ほど遅れて入店し、現像に出す写真の申し込み用紙に苗字を書き込んだ時、あれ、不思議そうな表情をされた。私が祖父の孫と知って、もう一人の従業員の女性と共にとても驚いた様子だった、おそらくこんな大人の孫娘がいるとは思わなかったのだろう。もとより若く見える人だけれども、この人達には祖父はいくつくらいに見えているのだろうか。

「どんなのを出品するの」
「写真…」

それはわかっています、と私は笑う。絵画を出すなどと言われたらそれこそ腰を抜かす。ある意味非常に興味深いけれど。

「見るか」 夕食後、祖父が居城にしている和室で問う、勿論私は喜んで受ける。黒い背景に切り取られた空の写真、野と樹と空の自然風景、けれど空の比重が高く、雲の層が橙に眩く輝いている。たまらなく美しい。夕暮れですかと尋ねた私に、祖父は少し得意げに言う、「これは朝に撮った」。
「前兆の朝、という題名にしようかと思ってる」
いい名ですねと小さく呟き、暫く黙って額を眺める。この写真について余計な言葉を述べることを避けたいと私は思っている。予想が外れたからではない、あまりに崇高で美しいからだ。こんな空を目にしたら、私は多分何も言えなくなる。







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あれが地の果て - 2002年04月08日(月)

春の夜の彼方に真珠は連なりて ゆらめき輝く あれが地の果て






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田舎の夜の闇は濃い。街灯の光も浴びずたゆたう濃密な夜、遠くで流れる車のライトは一線に連なり、その明かりが空と地の境を示している。糸が切れてばらばらになった真珠のネックレスはきっとあんな風だろうと思う。


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春長けて - 2002年04月07日(日)

春長けて 行く先も知れぬこの恋に 時は満ちたかと花が囁く





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すべて塵にして - 2002年04月05日(金)

このままでいられないなら眠りたい あなた以外を すべて塵にして



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夜の御国で俯きて  - 2002年04月04日(木)

出口なき 夜の御国で俯きて 誰をか待つや その頬に泪






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夕食を摂って入浴を済ませても、7時にもならない。
東京とは時の流れ方がまるで違うのだと思う、少なくとも私一人の生活の上では。
陽はとうに落ちきっているけれど、西はまだ僅かに明るい。水の上に透明水彩をいっぱいに流したような空、青碧に淡い黄が滲んでいる。少し夜が濃くなったところに最初の星。 3階の弟の部屋、はるか遠くまで見渡す事ができる窓を開けて、火照った身体に夜風を受ける。冷たくて気持ちいい。風に乗ってどこかから猫の鳴き声。部屋の暗さに目が慣れるにつれて空に星が増えていく、この時間がとても楽しくて幸せだと思う。淡くオリオン座を見つけて私はひっそり喜ぶ、誰に告げるわけでもなく、ひとりきりで幼稚な歓喜に浸る夕間暮れ。



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鳥の歌高く空に満ち  - 2002年04月02日(火)

名も知らぬ鳥の歌高く空に満ち 見はるかす野はみどり若草





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君眠る春はましずか  - 2002年04月01日(月)

君眠る 春はましずか その夢の端に立ちたく目蓋閉じる午後




君眠る 隣にひらりと滑りこむ 風は梅の香 春はましずか





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深夜、2階リビングのベランダに出て夜の空気を吸い込む。左手にはビールの缶。玄関向かって左に咲く白梅は今が盛り、涼やかな気品のある香気が一帯に満ちている。欠けてゆく月は僅かにおぼろ、梅の花はその光で雪が積もったように見える。私は幸せな気持ちで暫し月見と花見を楽しんでから眠った。



















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もどかしく手繰るこの重い枷 - 2002年03月30日(土)

心安く 肩に触れることも許されず もどかしく手繰るこの重い枷




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信じ抜く - 2002年03月29日(金)

信じ抜く 価値さえ言葉に尽くせない 無力とは決して思わないけれど




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