夕暮塔...夕暮

 

 

黄昏の国は - 2002年05月02日(木)

会ひ見えぬ夜を数えて幾晩目 黄昏の国は遠く霞みぬ




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返却日が迫っていたレンタルCDを返して、ミネラルウォーターのペットボトルをまとめて捨てた後、パン屋とコーヒー豆屋に寄った。豆屋さんで沢山おまけして貰って恐縮する。注文した量より随分多いけれど、いいのだろうか、こんなに。その上、色んな種類のドリップバッグまで貰ってしまった。
それにしてもいい天気。こんな日には公園にでも出掛けて、のんびり散歩と植物観察が出来たらいいのに。そう思いながら化粧を済ませて出掛ける。私と似た研究をしている人の計画案を聞いて、ささやかに意見を述べる。風邪が完治していないのだろうか、思考しているうちにじわりと発熱感。知恵熱だったらどうしよう、と暫しぼんやりする。だとしたら恐ろしくヤワな脳味噌だ。
帰宅途中、駅からの道でサボテンの花が開いているのを見つけた。道路沿いの民家が育てている鉢植えなのだろう。夜道にそこだけ灯りがともったような白い大輪、月下美人の花によく似ている。見事だ。明日カメラを持って撮りに行こうか。


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どうしても欲しい君の声 - 2002年05月01日(水)

こんな時 どうしても欲しい君の声 思うよりずっと 依存していた





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「あなたの事を考えるわたし」を削ぎ落とす事が出来たら、どんなに清々しく身が軽くなる事だろう。


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吐息さえ - 2002年04月30日(火)

吐息さえ 触れる程そばにいるうちに 何もかもが意味を変えてしまった





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突然に新しい仕事が降って来た。そろそろだろうと思っていたのでそれ程戸惑いはないものの、アドバンストの方を任されるのは正直荷が重いだろうかと少し逡巡する。風邪薬を飲んで睡魔に身を任せると、おかしな夢を見た。4つ立て続けに見た筈なのにひとつしか思い出せない。周囲に習って靴を食べようとする夢、何かを示しているようなそうでないような、どうだろう、微妙な線だと思う。ずっと覚えているようならそうなのかもしれない。
最近復帰したお茶のお稽古、体調と雨模様を考えて休もうかどうしようか迷ったけれど、やはり行く事に。お稽古用のスカートを探すうちに時間が迫ってきて、焦ってしまう。いけない、もう出ないと。次回までに探しておこう。


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花灯り - 2002年04月29日(月)

ジャスミンがふわり清らかに香るから ひとりで歩ける そう思いました




あの人のゆく道を照らせ花灯り 月隠る晩も惑わないように





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恋を説く - 2002年04月28日(日)

恋を説く喉がかすかに震えてる もう一度きみを 信じてみようか




歌う君の 喉の震える様見れば 我が胸もまた春に高鳴る





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「4年も黙ってたからねえ……今更言い難いのよね…」
それは全くだ、と私は深く頷く。彼女は恋人に秘密を持っている。付き合い始めて4年以上、その事をおくびにも出さず続けてきたらしい。「でも凄いことだよね…本当に凄いと思う」 もう1人の友人が心底感嘆した様子で言う。けれど恋人に対してだけじゃなく、彼女は全体に秘密主義なのだと思う。恋人の話も、こちらから尋ねない限りは決して話題にしないし、尋ねた事についても余り詳細を述べるタイプではない。はぐらかしているのと紙一重の受け答えをする事もある。私はおそらく彼女の最も親しい友人の部類に入るだろうけど、まともなのろけなんて聞いた事もない。優しくて壁の少し高い人、恋人といる時の彼女を見てみたいと思う私は悪趣味か。


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名を呼んで - 2002年04月26日(金)

名を呼んで 笑って囁き手をのべて 求めるほどに かつえてゆくようで




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友人とコンサートへ。一昨日急に招待券が手に入ったからとかかってきた電話、私は彼女みたいな熱烈なファンというわけではないけれど、なかなか好きなアーティストだったので、二つ返事で同行させて貰うことにした。友人の父親が役付き職を務める大企業、そのCMソングを彼らが歌っている関係で回ってきたチケットらしい。チケットとは言っても席の場所の記載がない。「きっといい席なんだろうけど…どこなんだろうね? すごい前の方とかだったら、どうしよう!」 彼女はすっかり舞い上がっていて可愛い。素直で感情表現豊か、プラスもマイナスもストレートに、胸を開いて人と付き合う彼女の姿勢が私はとても好きだ。

早い夕食を摂って、彼女のお母様と合流して会場へ向かう。もの凄い人の渦で入場口もごった返しているが、スタッフの人に招待状を見せて入り口を尋ねると、マスコミや関係者用の特別ゲートへ案内される。受付で芳名帳に記名を求められて少し驚く。勿論荷物などノーチェックで、「ロイヤルボックス」と書かれたチケットと、「終了後、楽屋へご案内しますので、こちらのラベルをお貼り下さい」とゲストシールを渡される。今度こそ本当に驚いて、仰け反りそうになった。
「……ほ、本人に会えるって事…よね!?」 受付を離れて、切羽詰まったように呟く友人の顔が見る見る赤くなっていく。何だか私にも伝染してしまいそうな位、彼女が動揺しているのがわかる。

「…死んじゃうかも」 と真剣に言う彼女を冷ややかに見つめるお母様は、既にお仕事用の顔になっていて、その対比が少し面白くて困る。


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君を無理に閉じ籠めて  - 2002年04月25日(木)

朝見かけて気になっていた、芍薬を買って帰ることにする。小雨が降り始めているから少し荷物になるけれど、仕方ない、我慢しようと思う。3〜4本ずつ束ねられた包みの内のどれにしようか少し迷って、固い蕾と少しほころんだ蕾、僅かに花開いた状態のものとが1本ずつ入った包みを選んだ。帰宅してひと息ついてから、水切りして花入れに活ける。もう少し葉を落とした方がいいのかもしれないと思いながら、とりあえず定位置の靴箱上に置いてしまう。夕食後、レンタルビデオショップに出掛けようとして、もう随分花が開きかけている事に気付いて、少し悲しくなった。ああ、やはり。衣類乾燥機の位置のせいで、うちの玄関先と廊下はいつも暖かいから、玄関に花を活けるとどうしても咲き急いでしまうのだ。…けれど玄関を開けた時に花が目に入るのは、帰宅時のささやかな愉しみだし。困ったなあ。




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この胸の檻に君を無理に閉じ籠めて 満たされるような恋ならいいのに





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青白く - 2002年04月23日(火)

青白く わたしの姿したひとを 土から引きあぐ 明け方の夢




明け方の 夢にて己の姿した 青白き人を引きずりあげしと




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洞窟に入ってはいけないと警鐘を鳴らす家族を尻目に、彼らが決して入って来れない、入って来ようとしない暗い洞窟の中、一心不乱に土を掘る。見つけた誰かの腕、青白いその手首を掴んで一気に引きずり上げると、「それ」は自分の姿をしていた。




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これは私の夢の話ではない。お酒を飲んだ帰り、地下鉄の中でこの話を友人から聞いた時の衝撃を、わたしはずっと忘れないだろう。涙が滲んだ。恐ろしいのか感動したのかわからない、とその時思った。ただその衝撃に激しく心震わせられた。…意味自体は、とても解りやすいのだと思う。ある意味ストレートな夢。けれど単純だとは思えない。

それは見てはいけない何か。知らない方が幸せでいられるのかもしれない、でも私達はその蓋を開けたいのだ。どうしてかは解らない、しかしそういう人に育ってしまった。それだけは確かなこと。


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許される朝 - 2002年04月22日(月)

許される朝もいつかは来るものと 願う夜(よ)の夢は深くてあさまし




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声を失って - 2002年04月21日(日)

さよならと言った後声を失って いつまでも慣れぬ自分を罵る




もういらない 嗄れてしまえば楽になる 別れを告げる為の声など





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春夏に愛用している、白い布のバッグを洗う。光沢のある太い繊維でざっくりと編まれた、小さめの舟形トート。ぬるま湯に浸して、洗剤の泡の中で押し洗いする。ブラシがないとシミが落ちないかもしれないと思い、新しく買ってきたお風呂用のブラシを下ろす事にした。このバッグ、どれくらい使っているだろう。見る間にきれいになっていくのに感心しつつ、買った時の事をぼんやり思い出す。確か夏だった、駅近くの可愛らしい品揃えのセレクトショップ、あのお店がオープンしたての頃だったろうか。ふらりと立ち寄って一目惚れした気がする。しかしいつの夏だろう。少なくとも去年ではない筈だから、一昨年か……もしかしたらその前の年かもしれない。
女の人には珍しくない嗜好だと思うのだけれど、バッグがとても好きだ。昨日もひとつ買ってしまった。先月も買い求めている事を考えて自重しようと思いながら、それにしてもあまりに好みだったので、さんざん迷った果てに結局レジまで行ってしまった。ああ、ダメだ、弱いなあ…。


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