夕暮塔...夕暮

 

 

ひとことで - 2002年06月11日(火)

ひとことで楽になれる言葉知っている けれど使わない 決して選ばない



君が今投げた言葉を永久にこの世のあらゆる辞書から消したい 




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ジョージ・ウィンストンの「憧れ」が流れる窓辺、レースのカーテンが風をはらんで膨らむ。はるか海の向こうの殺伐とした情勢を携帯画面のニュースが淡々と告げている。小さな画面に並ぶ文字、熱波に揺れるこの世の中からまるきり隔絶したように、遠い国では人が人を殺す。だけどろくに語られる事もなく情報は硬質なままに通りすぎていくばかりで、その流れを止めるだけのエネルギーが今の私にはない。恋しくて会えない人を思い出す、年末のメール、あんな些細な事あの人はもう忘れてしまっただろうな、…会わないのは私の不義理でもある。ああ今年も命日が過ぎたと溜め息をつく、初夏に飛び降りた少女の面影、私の覚えている彼女は記憶の中で知らぬ間に歪んでしまっていないだろうか。気になるけれど確かめる気持ちになれないのだ。わかってる、私にこんな事を言う権利はない、だけどどうしても拭い去れない、あなたは知っているのかな、あなたは、色んなものを、変えてしまった。………



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睡る蓮の - 2002年06月10日(月)

睡る蓮の花になり地から水空を 見上げればすべて いとしうるわし 




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あの一瞬から - 2002年06月09日(日)

ふと面を上げてきらりと瞬いた あの一瞬から気付いてしまった



陽が照らす 初夏の道はなんて柔らかい 隣にあなたがいない時でも




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このところずっと迷っていた、ソファを注文する。今週中には届く筈、白くやわらかなラインのソファ、窓際の光、今日は快晴。


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花くちなしの - 2002年06月07日(金)

夕闇に 花くちなしの白き顔 差し向け囁く「夏は来たりぬ」




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見下ろす校庭は夏に満ちて、正午過ぎ、土がまばゆく光を反射する上を帽子を被った子供達が駆け抜ける。「人が信用できない」とくっきりとした発音で少女が言う、その表情にいつものふざけた調子がないので、私は笑わずにじっと耳を傾ける。この一見底抜けに明るく、傷つく事から程遠そうに見える子が、奥に何を抱えているのかが、最近ようやく少しずつ見えてきたように思う。
一度帰宅した後、日が落ちて涼しくなったのを見計らい買い物に出た。西の空はまだ少し明るい、ほんのりと霞んで、オールドローズの花弁を光に透かしたような色をしている。


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夏を待ちかね - 2002年06月06日(木)

物言わず夏を待ちかね夕闇に覗き込む白いくちなしの顔




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津波の夢は見なくなった、と友人が言う。私は彼女の夢の話を聞くのが好きだ。何それ、と夢の話を初めて聞いた子が尋ねると、一時期はディープインパクトの夢ばかり見たのよと自嘲気味に笑った。「…解釈し易すぎるよ」「そうね、本当そう思うよ、自分でも……それでね、最近は代わりに、雪山の夢を見るようになったの……」 


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変わらぬ人など - 2002年06月04日(火)

時を経て 変わらぬ人などないことを 知っていて何故に期待するのか



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群青の帳 - 2002年06月03日(月)

群青の帳にひそりと星の波 息を詰め君の指を見ていた




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思いがけず仕事が忙しい、アポ無しの訪問が絶え間なく重なってつくづく疲労した。こんな筈じゃなかったのにと思うことで余計にだめになる。帰りの電車の中で眠っていたのかどうかすら曖昧だ、眠った記憶はない、瞼を閉じたまま起きていたような気もするのに、それにしては車内でのアナウンスが耳に残っていないのはどういう事だろう。帰宅して途端に夕食を摂る気が失せる、ああ、もう眠ってしまおう。ドラッグストアでクナイプのバスソルトを買ったけれど、今夜は湯船にゆっくり浸かる体力も時間もないようだ。


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パライソと - 2002年06月02日(日)

パライソと呟き死する夢の海の 狂おしくこころ焼き払う碧(あお)



パライソと祈るごとくに呟いて 君を思ひぬ 夢の死の海




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「愛しても愛しても、愛し止まない」



慄然として目覚めた。なんでこんな夢を見たのだろう、透明度の低い碧緑がゆるりと揺れる水面を見ながら、幸福感と陶酔と後悔が表現し難く入り交じった気持ちになった私は、一体誰と入水したのだったか。最後のシーンが鮮烈過ぎるためか、そこまでのストーリーが想起できないけれど、あれはおそらく自殺だったろうと思う。ああ違う、2人なら心中という事になる。でも相手が思い出せないなら、その事自体に大した意味はないのかもしれない。それよりはるかに私の胸に焼き付いているのは、寸前の感情と言葉だ。パライソ。朝起きて冷たい水を喉に流し込みながら、高校生の時に読んだ遠藤周作の小説を思った。私の中にこの言葉が何らかの重大な意味を持って生きているとすれば、確実にあれの影響だ。



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模様替え - 2002年06月01日(土)

旧いベッドを解体して、粗大ゴミ処理センターに電話をする。窓枠やエアコンを綺麗に拭い、窓際の汚れた壁を清めると、寝室の雰囲気が随分変わった。枕元のワゴンに硝子のランプを置く、試しに点灯して緩急を付けて伸びる光りの美しさに満足する。黄ばんだカーテンはもう捨ててしまおう、アイボリーの遮光カーテンと甘さのない格子レース、レースの方は替えがあったので、とりあえずそれだけかけておけばいい。曇り硝子だし、まあこれで困らないだろう。
机の移動に伴って、パソコンと周辺機器を動かす。コードが恐ろしく多い、しかもあちこち絡んでいて嫌になる程煩雑だ。ああ、疲れた…。
ふと思いついて、ネットでぼんやり風水を調べてみる。ベッドの向きが変わったので、東枕はどうなんだろうと気になったのだ。けれどなかなか面白い、そうなんだ、枕にタオルを巻いてはいけないのか。毎日バスタオルを被せて取り替えているのだけれど、やめてみようか。

コーヒーを飲んでいると専門学校に通う妹からメール、「ワールドカップの受付のバイトをする事になったの」。
身長160cm以上の女の子、という注文が付いている事から友人伝いに話がまわって来たという。よくわからないけれど、話を聞いているとどうやら「女の子」の前には、「ある程度以上の容姿の」という条件が隠れているのだろう。妹は駆け出しのモデルの女の子達に混じって働くらしい。化粧の仕方もうるさく注文を受け、立ち歩き方は勿論の事、しまいには「落とし物の拾い方」 まで研修で細かく指導されたとかなり呆れ気味だ。
「要するに、エレガントに振る舞えって事らしいんだよね……」 
辟易した様子の妹に、そう、とあっさり返しながら、あの豪放な子が少しはエレガントになるかしらと内心少々期待している事は、本人には秘密。


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斬って捨てる - 2002年05月31日(金)

斬って捨てるだけならばいっそ容易いと 苦しげに笑んだ 月を背にして




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