![]() |
風の吹く - 2002年06月26日(水) 風の吹くここへ来て君のしがらみも目眩もほどけて流れて行くから ………… - 真夏の指 - 2002年06月25日(火) ツユクサの 青で染めたる九つの 真夏まぶしく胸に封じいる ********* * ***** *** * いつからだろう、気が付いたら暖色を好きになっていた。昔はもっと苦手な色が多かった筈だ。ずっと敬遠していたピンクや赤を積極的に纏うようになって、わたしのワードローブは恐ろしく様変わりした。高校生までの私のクロゼットの中身は、白、水色、青、紺と黒ばかり。「パステルを着てるイメージがある」と言われて驚いたのは何年前だったろう。ゆっくりと禁忌を解凍するように色の好みは変わったと思っていたけれど、基本的なところでは多分幼い頃から殆ど変わっていないのだと、この間ふと気付いた。叔父の神前結婚式、三三九度のお酒を注ぐ子供の役目を負った時着ていた着物、あれは確か紫に近い青で菖蒲の花みたいな色だった。子供心にあの色はとても好きで誇らしかった事を覚えてる、子供用に限らず女性の着物の色は殆どが暖色で、あんな色合いは相当珍しい。小さな頃の断片的な記憶、真夏の朝の道で見つけた露草の青、摘んだら指が染まってしまった事、その時の頭上の抜けるように晴れた空、遠くの山の陰には入道雲の予兆があった。 - 震えながらに花開け - 2002年06月23日(日) いざ君よ 震えながらに花開け 生まれ来し謎を解く人見つけて 愛などと 何かに誓う愚かさを 今日は忘れよう君を祝うため ………… - 夏に至る - 2002年06月21日(金) 夏に至る かがやく緑の道を行く 待っていてじきに君に向かい合う *************** *** ** * 生徒達とトランプをして、少女1人が臍を曲げたまま時間終了。駅までの眩しくてやや長い道のり、朝はバスだけれど帰りはいつも歩く。公園沿いの遊歩道は季節の花が咲いて美しいから、雨の時でなければ別に苦にはならない。公園に繁ったくちなしの花、私はあたりに人気がないのを確認してそっと近づき、花に顔を寄せる。…いい香り、飽きる事などない、初夏の美しい甘さ。寝室に鉢を置きたいけれど、香りにつられた小さな虫が沢山ついた事件を思い出すと、正直な所かなり腰がひける。書泉に寄ってあちこちで新刊を物色する、欲しい本は沢山あるけれど今日は寄る所があるし、荷物が重くなるのには抵抗がある。丸山健二の『夕庭』が平積みになっているのを見つけて内心歓喜した、嬉しい、この間探した時は見つからなかったのに。岩井志麻子の単行本、毒々しいような苺のカバーは好みじゃないけれど、内容は割といいかもしれない。でもこういうのなら立ち読みでささっと最後まで読めてしまいそうだし、読み返す気にならないかも。購入はちょっと考えよう。 - むらさきに凪いだ - 2002年06月18日(火) 雨上がり こんな気落ちした時でさえ むらさきに凪いだ夜が始まる ************* **** ** * 「…japonais de quatre……」 インタビューで声を詰まらせたトルシエのフランス語が耳に響く。地下道から出れば空は淡い灰紫、僅かばかりの西明かりで246号がまどろむ中を、半ば呆然とお茶の先生の家に向かった。…ああ、終わったのだ、ほんとうに、これで。雨上がりの夕暮れ特有の気配に、ゆるやかに落胆が浸食されてゆく。2002年6月18日、冷たい雨の降る火曜午後、日本はW杯出場初の決勝トーナメントにホームという利を得て進出し、トルコに敗れた。 - 蛍籠 - 2002年06月17日(月) 蛍籠 座して仰げば星々の静寂(しじま)染まりぬ 悲しみに似て 世の中の われらふたりの静けさと悲しみ切り取る この蛍籠 **************** **** *** * 今月号の婦人画報に、蛍籠という江戸時代の移動式茶室を模して作られたお茶室が掲載されていて、とても素敵だった。細い木がわざと隙間を空けて組まれていて、名の通り四角い虫籠のようだ。天井は細かい格子状で、無数に漏れる光が星のように見えるのだという、いいな、あの中に座ったら、本当にそこだけ世界から切り取られて時が止まったように感じるんじゃないだろうか。 - のぼる三日月宵の風 - 2002年06月16日(日) 夏窓にのぼる三日月宵の風 口ずさむ歌は あなたに届くか ………… - 淡々と - 2002年06月15日(土) 数人の友人からの携帯メールに受け答えしつつ淡々と過ごす、明日しなければならない事について考えながら、今日その予定を消化する事をあえて避けて。ソファのファブリックを選びに出掛けて、意に添うものが見つからず、何故かキッチンマットを購入して帰宅する。アイボリーのワッフル調生地の右隅に紺と水色でささやかにクローバーの刺繍、実際敷いてみたらなかなか映えて嬉しい。いい買い物をしたかもしれない。ラオックスでパソコンを見る事にする、やはり実際見比べてしまうとプリウスが見た目に可愛くて魅力的だ。硝子の使われたデザインが女性向けでいいと思う。買うのには少し躊躇してしまうけれど。今使っているのはNEC、バリュースターのすごく旧い型。液晶モニターが出始めたばかりの頃に買って、愛着もあるから手放し難いけれど、流石にもう動作が苦しそう。 コンタクトレンズを外して、眼鏡をかけてパソコンに向かう。明らかに視界がクリアだ、やっぱり今のレンズでは視力が足りないと思う。街を歩く時でさえ、たまに目を眇める。乱視矯正用のディスポーザブルレンズが体質に合わなかったのが悔しい。もう一回チャレンジしてみようか、という考えが頭をかすめる。駄目なものは駄目なのかもしれないけれど、何にせよこれではいけない。 「ゴスペラーズを見たんだよ。今日来てるの」 スタジアムでワールドカップの受付をする妹からメールが来る、この子は最近、5年近く付き合った恋人と別れて、新しい恋をしている。少しの見返りも見込みもなくても芯から燃えるようにして何もかもをその人に向けて、酷く分の悪い環境で頑張っているらしい。私にはこの子がとても可愛い、世間で高いステータスを得るような、いわゆる賢さはないかもしれないけれど、感受性豊かでストレートだと思う。見た目にはたぶん雑駁で豪放で礼儀に欠けた今時の子なのに、話す時には美しい敬語を使い、文章を書かせると予測をはるかに超えて豊富な語彙で楽しい言葉を綴る。どうやったらこんな素直で優しい素朴な子が育つんですか? と感動したように両親に尋ねた小学校教員の気持ちがわかる。それなのに、彼女が今熱く恋をしているお相手は、何だか掴みきれない感じのキックボクサー。 「意中の彼がベッカムヘアにしたの。真似って感じで軽くひいた…ギャグのつもり?」 …ギャグだといいね、と苦笑しつつ返す。そうでなかったらちょっと痛い、…悪いけど。 - 香る水無月の - 2002年06月14日(金) 目を閉じて 香る水無月の奈落へと 落ちてゆけ君よ 何も望まず *************** **** ** * 昨日届いたソファの上でうたたねをするのは、もうこれで何度目だろう。アイボリーのラブソファ、布張りで座面高が高めという条件はどうしても譲れなかった、私は皮革のソファの座り心地が苦手だし、低い椅子にかける時一気に腰を落とさないといけないのがかなり苦痛だ。身長が高いせいもあるのかもしれない。しかし、ここでしょっちゅう眠るようになったら生活が乱れるだろう、実際今日もそうだし。コミットしすぎる事に注意しないといけないと思いながら、新しいクッションを選ぶ私は少し矛盾している。 - その声を - 2002年06月13日(木) その声をこの耳に閉じていま胸にどうか焼き付いて命果てるまで ***************** *** ** * 「今日ね、怖い夢をみたの……」 何という事なく始めた話だったから、返事なんて期待していなかった。「俺も」と珍しく自分の事を話してくれた時の驚きを、苦しいほど鮮明に思い出す。あなたがこんな風に私を甘く苦しくさせるから、私はいつまでもあなたのことばかり考えていないといけないのに。同じ夜2人別々のベッドで恐怖に震える夢を見た、そんな些細な、意味があるのかどうかもわからない偶然ひとつで。 -
|
![]() |
![]() |