夕暮塔...夕暮

 

 

あかり溜め息で - 2002年07月08日(月)

蝋燭の あかり溜め息で揺らめかせ 今日という日の熱と別れん




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海外旅行のお土産に貰った小さな円いキャンドル、ふと思い出してお風呂で使ってみる事にした。反復入浴の最後の入浴時間、お風呂の蓋の上にほんのりと炎を灯らせる。…ああなんだ、これって思ったよりずっといい。流行のセルフセラピーという言葉があまり好きになれなくて避けていたけれど、この落ち着いた灯りの色も、光源の頼りなさでバスルームの壁が表情を変えるのも、とてもきれいだと思う。


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忘れ雪 - 2002年07月07日(日)

あんな色をした空に落ちる忘れ雪滲む夕暮れ まだ忘れない



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「あのテレビとオーディオ、買い換えるべきだよ」
やっぱりそうだろうか、と私は何となく半ば納得しないまま思う。何度かそんな風に考えた事もあったけど、何故かいつも長続きしないままここまで使ってきた。それなりの愛着があるのかと問われればよくわからないけれど、確かに物持ちは良い方かもしれない。携帯の機種をしょっちゅう変える人の気持ちは理解できても共感できないし、そういえば今使っているデスクと本棚はもう10年近い付き合いになる。あれもおそらくそろそろ限界。でも明日あたり寝室に置くラタンのリネンチェストが届くし、ソファだって買ったばかりなのに、またそんなに色々買い換えないといけないのか。困ったなあと思いながらタワーレコードへと向かう道、低い建物の向こうは夕闇の雲に紛れて火の色をしている。
「ね、見て、あれ」
私は指差して示し、驚嘆の声を聞いてそっと笑む。嬉しい、この時間に外にいてよかった。


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ひと想ふ孤独 - 2002年07月05日(金)

知らぬ間に そのベクトルの名を忘れ 人想ふ孤独美しきかな



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…話を聞くに明らかに不眠症、本人の自覚は薄いけれどあちこち身体化している様子。どうしたものか、来週まで様子を見て変わりないようなら、何か手を打たないわけにはいかないだろう。







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笹の葉の - 2002年07月04日(木)

笹の葉の舟の上灯るホオズキの赤き光のくゆる薄闇



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久々に白衣を着ると何だか微妙な違和感、でもどこか高揚しているのも確か。「ふふふ、これが僕の本当の姿ですよ」などとうそぶいていた川原先生の言葉もすっと入ってくる気がする。でもあれはあながち冗談とも言えないらしい、白衣を着ている時はとてもいきいきしてらっしゃるし、普段のデスクワークは彼にとって相当負担なんだろう。

ドラマ改変の時期、でも今度のはあまり興味をそそられるものがないようだ。この間まで見ていたのは「天国への階段」、本上まなみ演ずる役どころが好きだった。最後まで追い風の吹かない恋なのに、決して卑屈にならない、芯が強くて綺麗に背筋の伸びた女性。もう一度あの台詞を聞きたいな、いい言葉だった、…カシワギさんが払って下さい、割り勘の関係は、もう終わりにしたいんです。裕福な主人公が何を懸念してわざわざ割り勘という頑固な一線を引いていたのか、見透かした上できっぱり手の内を明かす、あのやり方は爽快だった。



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指先の影 - 2002年07月03日(水)

君の目は 思い出すには痛すぎて 妥協してそっと指先の影



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この夏がある - 2002年07月02日(火)

灰色に街沈ませる台風の渦の底深く この夏がある



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昏々と - 2002年07月01日(月)

昏々と 眠ればあなたに会えるかな 雨音に夢が掻き消されるまで



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川沿いに - 2002年06月29日(土)

川沿いに 誰かの愛しいひとを乗せ 電車は湿った夜(よ)を駆け抜ける




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雨が降っている。黒い柔らかな生地のワンピース、これ一枚では多分冷えるだろうとカーディガンを羽織る事にした。新宿伊勢丹で買い物をした後、銀座へ向かう。
今日は同僚の送別会、彼女は今の仕事を辞めて、インターンシップのようなものに出るのだという。色白で凛とした人、態度にも表情にも媚びた所がなく、話し方も女性らしい甘さがない。クールで時に辛辣、だけど私はとても彼女が好きだった。上司に気を遣いつつの食事会は正直な所気詰まりな面もあるけれど、彼女の顔が見れるなら構わないと思う。
別れた後、全員宛に謝礼の携帯メールが入る。返信すると、すぐにレスポンスがあった。「あなたの事が、とても好きだよ」
こんな言葉を、容易く使う人じゃない。多分私はお別れを告げられたのだ。まだ雨は降っている、暗い帰り道、唯一間近に明るい携帯の画面をぼんやり眺めて立ち止まり、曇り無い空の下で平原に立つ彼女を想像する。梅雨の雨など知らない美しい大地、東京以外の土地に初めて暮らす彼女の憧憬を静かに考える。


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愁雨去り - 2002年06月28日(金)

愁雨去り 君待ち侘びるこの庭に 星滑り落つ音は響きぬ


雨止んで 香る六月闇の庭 君待ちあぐる一輪の百合



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珍しく入ったファーストフード、時間が半端なので半分くらいは空席で、殆どが一人で食事を摂っている。騒音の無い、なかなか落ち着く時間帯。何だか無性に脂っこいものが食べたくなった、これはそろそろそういう時期だろうな。昨日もクリームたっぷりのケーキを食べてしまったし、多分間違いない。それにしても見事にほぼ食欲だけで測っている、私の体調把握は極めてファジーだ。痛みを伴わないから気にしないでいられるんだと思う。これは遺伝に感謝しないといけない。母も妹達も、月の巡りで苦しんでいるのを見た事がない、歩けなくなる程辛いと訴えている子もいるのに。 「あなたはちっとも左右されないねえ」とドクターに言われた事を思い出す。…そうですね、私はいつも、割と淡々と上機嫌ですね。確かそんな風に返した。彼もそれに賛同した。私は些細な事で幸せになれるし、余程琴線に触れるような事でなければ、滅多に不機嫌にもならない。
私の座った奥の席からは少し眩しい窓際に、テスト期間だからだろう、この時間には珍しく中学生位の男の子が3人座っている、こちらに背を向けている一人の後ろ姿が弟にそっくりで驚かされた。何度か瞬きして似ていないところを探すけれど、何なのだろうあれは、これではあまりに似過ぎている。
あの名前も知らない少年が、私の愛しい子だったらいいのに。よく似た肩と背中、いつまでも見ていられたらいいのにと一瞬思う。だめだな、やはりどこか人恋しいのだろうか。今どうしているのかな、会いたい、声を聴きたい。


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梅雨空の下 - 2002年06月27日(木)

梅雨空の下にてあなたの寂しげな顔思い出す どうして今さら



氷塊をぎりり握りしむ心地する 梅雨空の下で君思う時




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