夕暮塔...夕暮

 

 

昏き痛みを - 2002年12月09日(月)

ただこの世 ひとりきりにて生まれいづる 昏き痛みを君が知るまで


君や知る ひとりきりにてこの昏き痛みある世に生まれいづるを




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百年後 - 2002年12月08日(日)

この温き手のひらでさえ百年後 君のそばにはいられないのに



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初雪の欠片を捕まえて、深夜1人で満悦した。
滅多に出ないバルコニー、父から貰ったナイキのスニーカーをひっかけて、掌に舞い降りる結晶に感動する。ああ、とうとう来たのだ。 
初雪って、どうしてこんなに嬉しいんだろう。街灯の光の中、やや粗い雪はきらきらと私の指で解けている。足下にはまだ明るい色の銀杏の葉、だけどこれもその内に風に吹かれていなくなる。もっと、芯まで冷えればいい。余計なことなんて考えられなくなる位に。


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雨の道をゆく - 2002年12月07日(土)

雪を待つのにはまだ薄いジャケットで 雨の道をゆく ぽつりぽつりと



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ツヤのある厚手の綿のジャケットは、裏地がしっかりしていて春先に着るには重たいからと買う時逡巡したけれど、そのかわり今頃使ってもまだ大丈夫。少し冷えるが、私はやや寒い位が好きだ。その分を暖かいマフラーで補うことにする。
襟足が加熱しすぎるタートルネックが苦手で年中手足が暖かい、この体質はいつまで続くんだろうとぼんやり考えて、年齢的にそろそろ終わってもおかしくないという結論に行き着いた所で少し震えた。乾いた風の吹く関東で、「寒がらないよねえ」と驚く友人達に「雪国生まれだから」と曖昧に返してきたけれど、本当は、雪国でも呆れられるくらい寒さに鈍くて暑さに弱い子供だった。



ふとランキングを覗いて、この日記に投票がある事に驚く。どんな方が入れて下さっているんだろう。ありがとうございます。


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エスカーダ - 2002年12月06日(金)

君の左袖口に香るエスカーダ つと触れて確かめし冬の闇


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どうしてと - 2002年12月05日(木)

どうしてと誰に問えばいいまた甘く辛い夢ばかりみて目覚めれば



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信じていいの - 2002年12月04日(水)

好きなわけじゃないのに、不思議と縁のある色というのがある。


「着物の色を選ぶなら、いつ帰ればいい?」
母に尋ねて、返ってきた答えに仰天する。
「えっもう選んじゃったわよ、決めていいって言ったから」
ええ、私そんな事言っただろうか。以前この件で電話を貰った時疲れていて曖昧に返したような気はするけれど、母とは基本的に色の好みが合わないから、選んでいいなんて言うわけないと思う。
色味はと訊いた私に、母はやけに自信ありげな感じで「抹茶色」と続けた。
「な、なんで抹茶色なの!」
「いい色なのよー、やっぱり一番いいって呉服屋さんも言ってたし」
「ええー…………」
がっくりしてしまう、今回は淡い暖色を選ぼうと思っていたのに。しかもよりによってどうしてまたミドリ色なんだろう。

どういうわけか深めの緑色は昔から奇妙な縁のある色で、望んでいないのに手元に集まってしまうのだ。頂きものの数寄屋袋やバッグ、袱紗は何枚も。だけど、縁があるだけで、特に似合う色じゃないし、好きとも言えない。本当にいい色なのよと母は繰り返すけれど、信じて良いものかどうかためらわれる。私の幼い頃から、母の言う「いい色」は、時々私にとって「とんでもない色」だった。


「明るい色にしようと思ってたんだけど…」
「じゃあ赤い帯すればいいじゃない」
それじゃクリスマスでしょ、と言うと、母はあっけらかんと笑った。


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夢の波にまぎれて - 2002年12月03日(火)

君のそばに いたことだけなら覚えてる おだやかな夢の波にまぎれて




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どんな夢だったのと尋ねられても困る。内容は起きた瞬間に忘れてしまった、そういう質の夢だった。照明を落とした部屋で瞼を上げた途端、脆い泡が弾けるみたいに夢の記憶は消えて、そこであなたに会ったという不思議な確信だけが残った。
だけど、あたたかな世界だったよ。悪い夢じゃなかった。あなたと、あなたのお母さんがいた。


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寝過ごし - 2002年12月02日(月)

9時きっかりに携帯の着信音で目覚めた、小さなモニタには月曜の勤務先の番号が表示されている。…うわあ、やってしまった。なんてことだ。一気に血が下がるけれど、もう仕方ないから正直に言ってしまえと一瞬で覚悟を決める。

「……おはようございます、すみません、今、起きました…」

乾き気味に一拍置いた後、「じゃ、飛行機か何かで来れる?」 と上司はあっさり返してくる。相変わらずしょぼいジョークではあるけれど、こんな時にはありがたいものだと思う。だけどここで茶化して答えるには自分に非がありすぎるので、神妙に「わかりました」と言っておく。
10時半に到着。「遅くなりまして、失礼しました」 「あれえ、早いねえ」 「丁度、快特が来たので」 「ああそう、それはそれは、グッドタイミングで」 至極さわやかに赦されて、ようやくほっとした。


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どの窓の - 2002年12月01日(日)

どの窓の夜もあたたかに見ゆる頃 街いっぱいに光巡りて



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小春日和 - 2002年11月29日(金)

穏やかな小春日和、勤務後に最寄りの駅のドトールで昼食を摂る。このところずっと、ソイロイヤルミルクティーを飲んでみたかったのが叶って満足。あっさりしていてなかなかおいしい。豆乳は肌にいいらしいし、次も頼んでみよう。
もの凄く久しぶりに美容室へ向かった。平日の午後なのに銀座は人が多い、寄り道したいけれど時間がなくて、駅から直行できっちり時間通りに着く。1歳くらいの男の子を連れてきている女性がいて、前髪のカットの為に膝に抱いている赤ちゃんを腕から放すと、途端に彼が泣きそうになる。まだ言葉が発達していなくて、必死に何かを主張する中で、ままー、ということばだけがかろうじて聞き取れるのが何とも可愛いらしい。店の中全体がほんのりと淡い笑みに包まれる、こういう空気はとても好き。多分色んなものが偶然に重なってできるのだ、よく晴れた11月最後の金曜日、風が凪いで穏やかな街並み、ふわふわの髪の赤ちゃん、舌足らずの甘い声。映画のワンシーンみたいに美しい午後。
肩のマッサージについてくれている茶髪の若い男の子が、赤ちゃんを見ながら「頭の形、いいっすよね」 と感心したように話しかけてくるので、私はおかしくなってしまう。職業柄、やっぱりそういう所から目に入ってしまうんだろうな。


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