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2008年02月14日(木) Cioccolato adorato


そぉっとコテを外すと、そこには女っぷりの上がったお姫様がいる。

くるくるの巻き毛。
同じくちゅるんとカールした睫毛。
出来る限りのソフトなメイクで、キツめの印象の顔を優しくハートフルに。
パステルカラーのワンピース。
足元は少しでも細く見えることを願って、細身の黒ブーツ。
このブーツは、たまたま通りかかった店のバーゲンで運命の出会いをした一品。

まさにこの日の為にある!

そう思って即購入。
難点は、ヒールが少し高いこと。
ただでさえデカくてイカついのになぁ・・・・。
それが目立たないことを祈るばかり。
傍らに赤いリボンの紙袋。
自分で包んだから凄く不恰好だけど・・・まぁ、そこはご愛嬌。
最後に、くちびるをグロスでてろてろに!
ランコムのジューシーチューブは、お土産の免税品(ん?ってことは日本では非売品??)。
ぎゅっとプレゼントの取っ手を掴んだら。

いざ行かん、王子様が待ってるお城へ!!

まぁ、現実のあたしは、お姫様ほど可愛くはなく(っていうか、急ごしらえの可愛い格好にどうにもこうにも慣れないので、もしかして物凄くヘンな人の可能性すら残している)、魔法使いのおばあさんもいず、カボチャの馬車もネズミの馬もネズミの御者ももちろんないので、徒歩でてくてく行くわけですが。
因みに王子様だって至極普通だ(イケメンなんて程遠い)。
白馬どころか原チャだってまたがったことはないだろう。
あ、でもカボチャのパンツは似合いそう(笑)

そんなことを考えてうちに王子様のお城(アパートという名の)に到着。

・・・付き合って結構長いけど、いつだってこの日は緊張する。
あたしたちの仲は更新制。
付き合い始めて四回目の今日。
毎年毎年、趣向を凝らした告白をすることに決めている。
一年中で一番、気合が入っているといっても過言ではない。
来年の今日まで一年間の関係性更新の是非は、今日この日に決まるから。

今年はスタンダードなタイプで攻めることにした。

手作りショコラに、自前包装。
手作り感溢れる精一杯のおしゃれ(精一杯を通り越していっぱいいっぱい感が出たのが残念なところ)。
セリフも決めてる。

『好きです、付き合ってください。』

これっきゃないでしょ!?
だから、王子様。
お願いだから、YESをちょうだい。
どうか、どうか。

多少震える指を以って、インターフォンを二度。

間があって、王子様自らドアを開いてくれる(当たり前だ、彼は本物の王子様ではないので執事とかいるわけないし)。

『おかえり〜。今、あったかいものいれるね。さぶかったでしょう??』

誤解のないように言っておくが、あたしはここに住んでいるわけではない。
でも、あたしの王子様は絶対に『いらっしゃい』とは言わない。
それは自分の城からあたしを見送る時に、必ず『気をつけてね。早く帰ってくるんだよ』と言うのとセットだ。
多分それは、『僕の部屋は、君の部屋だよ』って前に言ってたことを、忠実に実行し続けているんだと思う。

王子様のお城は割と手狭で(だってアパートだしな)、今は冬なのでフローリングの床面に座ることも出来ず、あたしはドキドキしながらベッドに腰掛ける。
きっと彼が淹れてくれるのは、あったかいアップルティ。
あたしが好きな銘柄が、この家には常にストックされているから。
彼がこちらに来るまで、あたしは飛び出しそうな心臓を抱えて、何度も何度もイメージトレーニングを繰り返す。
失敗する訳にはいかないのだ。
だってあたしは、彼を手放したくなんかないから。

『おまーたせー。さ、あったかいうちにどうぞ。』

コトン、とマグをテーブルに置く彼。
ん、と上の空でそれを口に運ぶ。
両手に包むと、かじかんだ手が程よくあたたまる。
しあわせ。
ぐっと、ひとくち。
それは丁度いい熱さで。

ふわんっ、と広がるモカの味。

・・・んん??モカ!!??
はっとしながらマグを見ると、そこにはホットチョコレートが。
え、と・・・アップルティは!!??
ぱっと、王子様の顔を見ると、そこには悪戯っぽい笑みの彼。
・・・が、割と至近距離に。

ちゅっ、と正面衝突。

離れた王子様は、自分のくちびるを舌なめずり。

『ん〜、甘いっ。そのてろてろは、いつでも甘いねぇ。』

キシシ、と笑ったあとに、こそこそ内緒話をするように王子様は耳打ちをしてきた。

『ハッピー、メリー、ヴァレンタイーン』

しまった、先手を打たれた!
そう思った時はもう後の祭り。

本命ショコラを渡す前に、あたしがとろとろにとろけちゃったのでした。



え?仲は更新されたのかって?
それはご想像にお任せするのです(笑)
(とりあえずショコラは無事に渡せました)


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狗神史狼 [直訴]

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