2005年、夏。
コンビニ店員である私には、気になる人がいた。
年齢も 本名も知らないその人は 「九ちゃん」と呼ばれていた。
いつのまにか 惹かれるようになっていた お客さん。
いつのまにか 二言三言 交わすようになり、 メアドも交換して、日に日に 仲良くなっていった。
そして 告白され、付き合うようになった。
私には 到底 似合わないような人。
両手首に、 タトゥーが入っている。
ひとつ年上の、怖そうな 塗装職人だった。
付き合い始めても、友達だか何だか分からない、
そんな日が続いていた。
だけど 優しい言葉・甘い言葉は 何度もくれた。
ぶっきらぼうな態度の裏に、温かさがあった。
大好きだったけど、1年も経たないうちに
終わってしまった―――。
九ちゃんと入れ違いで、ヒロと仲良くなった。
九ちゃんの 仕事仲間。
3つ年下で、店でも何度か話したことがある。
私を気に入っているようだ と、 前に 九ちゃんが言っていた。
付き合っていた時、九ちゃんが つねに警戒していた人だ。
ヒロは、とにかく私に纏わりついた。
好かれている・・・と 言うよりは、なつかれている感じ。
当時、私にとっては 恋愛対象外だった。
かと言って 友達という感じでもなく・・・・
「姉さん」と呼ばれていたこともあり、
“弟分”でしかなかった。
“弟分”でしか ない はずだった――――。
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