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■ おめでとう愛してる!+忍足誕生日SS
2006年10月15日(日)
忍足誕生日おめでとう! ケーキバイキングでお祝い!初めて行ったお店だったけど美味かったです。 愛しいよう愛しいよう。
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あと十分で終わる特別な日。 せめて、声が聴きたかった。
一枚上手
少し肌寒く感じる廊下を歩いてバスルームから自室へ。 急な温度差と濡れた髪のせいで少しだけ身震いした。 せっかく風呂に入ったというのにこれじゃああまり意味が無いなとも思ったり。 暖房をつけるほどじゃないけれど、何か一枚羽織らないと風邪をひきそうな、そんな中途半端な気温。 パジャマ代わりのスウェットの上にパーカーを着て、ベッドの上に放置したままの携帯を手にとる。 今から三十分ほど前、風呂に入るときに確認したのと変わらない画面がそこにはあった。 少なからず期待していたことは、無意識に漏れてしまった溜息からもわかる。 このわずかな時間にメールか着信があればいいなと、心の奥では期待をしていたのだ。
十月十五日。 今日は自分の十五回目の誕生日だ。 日曜日と重なってしまった今年は偶然部活も無く、かといって何か予定があるわけでもなかったのでのんびり家ですごした。 普通の日よりも携帯は働いたほうで、朝からクラスメイトや部活仲間から祝いのメールや着信がぽつぽつと届いている。 一番早かったのは岳人で、朝起きたらすでにメールが入っていた。 休日ともなればみんなに忘れ去られるだろうと思っていた誕生日は思いがけず人の記憶に留まっていたようで、一通一通簡単ではあるが御礼のメールを返信して一日がすぎる。 実家にいれば母親がいつもよりは気持ち豪華な夕食を作ってくれたりするのだろうけれど、生憎今は一人暮らし。 いつもと同じように簡単に作った料理で食事を済ませた。
「これは、忘れてるのかどうでもえぇのかどっちやろ」 部活もオフとなれば、せっかくなら恋人と過ごしたい。 一日一緒にいることは出来なくても、せめて一目見るとか声を聴くとかしたかったのが本音だ。 それとなく誘ってみたのだけれど、跡部には「家の用事」の一言でその誘いを断られてしまった。 跡部は何かと忙しいとわかっている。 だから誕生日くらい予定を空けておいてくれなどど我侭は言えないし、そうなのかと納得するしかない。 跡部の時間は自分だけの物ではないのだ。 自分よりもよっぽど跡部は忙しい。だから仕方ない。 頭ではわかっている振りをするけれど、心の奥がチリチリするのはやっぱり寂しいからだ。 「せめて電話くらいくれてもえぇやろ…」 会えないならせめて声だけでも。 律儀な跡部が覚えていないということは無いだろうし、今日中に電話の一本くらい…と淡い期待を抱いていた自分は、今日が残すところ後十分になったところでその期待を捨て去る羽目になった。 声が聴きたいなら自分から電話すればいい。 けれど電話をしたところで誕生日なのだと告げて何になるだろうか。 どうせならば催促する前に言ってほしい。 相手はあの跡部だ。 「で?」なんて言われたらそれこそ自分は立ち直れない。
「あーあー…」 携帯を握り締めたままベッドにダイブ。 ギシリと音を立てたスプリングと、冷たいシーツの感触。 無情にも手の中の携帯は時を刻み続け、悶々と考えているうちに残り五分となってしまっていた。
きっともう電話もメールも来ない。 明日学校で会ったときに気が向けば「おめでとう」と言ってくれるかもしれない。 それでも彼の言葉としてもらえるのならそれでいいかもしれない。 もうこのまま寝てしまおうかと、ある意味不貞寝に近い状態で丸まって目を閉じる。 布団をかぶらなければ風邪を引くとわかっているのにそうしないのは、未だに残されたあと五分に期待しているという証拠かもしれない。 跡部は自分を裏切らないと、どこかで信じていた。 ―ポーン… 遠くでインターフォンが鳴ったような気がする。 一瞬だけ目を開けて、でも気のせいかもしれないと体勢はそのまま。 そもそもこんな時間に客なんて来るわけがない。 期待のし過ぎで空耳が聴こえたのだと本格的にベッドへ潜り込む。
あと三分。
ピンポンピンポンピンポン― アラームをセットしてさぁ寝てしまおう、と再び瞳を閉じると同時に聴こえた、確かなインターフォン。 しかも連打。 空耳ではないと飛び起きて、バタバタと玄関に向かう。
確認することもなくチェーンを外して、開けたドアの向こう。 冷たい風とともに入り込んできたのは随分と冷えた体。
「―!」 首に手を回されて後頭部をがっちり掴まれて。 その冷たい身体と同様に、触れた唇も冷たかった。 ひんやりとしたそれがゆっくりと開かれて、入り込んできた舌はそれとは対照にひどく熱い。 口内をゆるゆると動き回る熱い舌に自分のそれを無意識に絡める。 細い腰を引き寄せたらジャケットに包まれた背中がふるりと震えた。 「ン、はぁ…」 ちゅ、と最後に唇を吸うように啄ばんで離された身体。 とろけるように少し潤んだ青い瞳が細められて、赤く色付いた唇が弧を描く。 「…あ、とべ?」 「いるんならさっさとドア開けろよ、寒ぃだろうが」 「え、あ、すまん」 口調とは裏腹に、跡部の表情は穏やかでどことなく楽しそうだ。 突然跡部が現れてキスをされて、状況を掴んでいるのかさえわからない自分はその冷えた身体を抱きしめるだけ。 少し下にある綺麗な顔が何かを企んだかのように微笑む。 「プレゼント、渡しに来たぜ」 「え?」 「まだ間に合ってんだろ、誕生日」 そう問われて跡部の腕時計を確認すればあと一分。 間に合うというかギリギリというか、でも一応まだ十五日であることには変わりない。
「誕生日おめでとう」
目の前の唇が動くのを、ぼんやりと眺めた。 その言葉の意味を理解するより先に再び軽く口付けられて、ぼーっとしていた頭は再びフル回転。 ぱちぱちと瞬きをすればおかしそうに跡部が笑った。 「ぼんやりしてんじゃねぇよ。プレゼントだっつってんだろ」 「え、プレゼント?」 「俺よりも極上のプレゼントなんてねぇだろ?」 してやったり。いたずらが成功したみたいな顔で笑う。 綺麗な青い瞳が細められた、綺麗な顔。 そんな顔で、そんな台詞は反則だ。
「…なんやねんもう。そんなん反則や」 「いらねぇんなら帰るぜ」 「ありがたくいただきます」 逃がさない、とばかりに抱きしめた腕に力を込める。 跡部が喉の奥で笑っているのが振動で伝わってきた。 せっかく自ら飛び込んできた愛しい人を放したりなんかするものか。
「今日はとことん付き合ってやるぜ」 そう耳元で囁かれればもう降参。 元々跡部に勝とうなんて無理な話だ。 俺様で強くて優しくて、そんな跡部に自分は随分と前から惚れ込んでしまっているのだから。 「…お手柔らかに」 満足げに微笑むその顔にキスを降らせて。 ゆっくりと玄関の鍵をかけた。
やっぱり、彼には敵わない。
HAPPY BIRTHDAY Y.Oshitari!!
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太紀ちゃん祭りに行ってきました。 楽しかった! 久しぶりに感想はブログに書こうと思います。
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