荒ぶる魂

2004年09月15日(水) 昭和の英雄・力道山

NHKBSで「昭和の英雄」という3夜連続の番組があった。
とりあげられたのは、美空ひばり・力道山・大鵬の3人。
友人が録画してくれたものを見た。

私はプロレスというのは、1997?98年頃に女子プロレスを見たのが初めて。
それまで会場ではもちろんテレビででも見たことはなかった。
そんな私でも力道山という名前は知ってたし、
空手チョップという技名も知ってたし、
ヤ○ザとの喧嘩で刺殺されたということも知っていた。
彼が「日本のプロレスの開始者」と言われていることも知っていた。
昭和史の中で力道山が戦後の日本人に与えた力と熱気というのも
知識としては知っていた。

それでも今まで力道山を「昭和の英雄」として捉えたことはなかった。
だが、力道山の軌跡を映像で初めて見て納得した。

まあ、大衆文化・大衆生活という分野から選んだ「昭和の英雄」であって、歴史の本流では決してとりあげられることのない人選ではあろうが・・・。
でも、教科書で習った多くの本流の英雄(ほぼ全てが政治家)より
ずっと英雄という言葉にふさわしいと思った。

これは美空ひばりも同じ。(大鵬篇は未見)
二人の共通点は、戦後の自信を失った日本人に希望と元気を与えたこと。
こういう力を持つのが”大衆文化”の一面なんだな。

さて、面白いと思ったことは、力道山は相撲から出発するのだけれど
服装規定が厳しい当時(これは今もそうだけど)、しゃれた背広に
ネクタイして外出していたという。しかもまだ下っ端の時。
他と同じ列に並ぶのをよしとしない、たとえそれが服装のような
外見的なことであっても、他より抜きん出たいという
力道山の性格・意思がよく表れているエピソード。
そしてこれこそがプロレスラーというものの原点だろうと思う。

また、相撲を辞めてからプロレス団体を立ち上げる前に
ハワイにレスリングの修行に行くのだが
船でホノルルに着いた様子、ジムでの練習の様子、
またアメリカ本土に渡って武者修行の様子、そういうのを
全て8ミリフィルムに納めている。
これらの映像を撮っておくと将来役に立つ、という先見の明のもとに
撮影したものだという。
選手としてだけでなく、実業家としての才能があったということだろう。

番組では、ルー・テーズという私は活字でしか知らない、
プロレスファンやレスラーには神様みたいに思われている選手との
試合映像もたっぷり流れた。
(たっぷりと言っても、実際の試合は45分にも及ぶものだったそうだが。)
その試合ではルー・テーズがバックドロップ一発で力道山に勝っていた。
これは今のプロレスからは考えられないこと。
バックドロップなんて今やつなぎ技である。
その他の試合でも―中にはかの有名な力道山vs木村戦も―
技の数は現在よりずっと少なく、オーソドックスなものばかり。
それでも人々は熱狂し、かみつき魔プラッシーとの試合では
熱狂のあまりショック死する人もいたのだという。

技の激しさという点では現代ははるかに厳しいものになっている。
それに反比例して現代のプロレスが人々に与えるインパクトは
低下しているという言い方は公平ではないだろう。
時代背景も社会のあり方もスポーツのあり方もが違いすぎるのだから。

私がこの「昭和の英雄」シリーズの録画を友人に頼んだのは
美空ひばりが目当てであって、力道山は実はおまけだった。
でも、嬉しい誤算。
非常に面白い昭和史の番組だった。


 < 過去  INDEX  未来 >


ポー [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加