Rollin' Age

2004年08月22日(日)
 手に余る自由

 一人暮らしが始まった最初の頃は、不安と一緒に楽しさもあった。あー、ここが俺の家だ、自立した生活だ、ってな。ここにテレビ置いて、ここには本棚置いて。そんなふうに家具の配置を考えることすら楽しかった。いつ寝ようがいつ起きようがどんな生活しようが、誰にも口を出されることもなく、気兼ねする必要もなく、これが自由だ、思うように生きるんだ、なんて。

 で、今、家の中を見渡すと、いろんなものが転がってんの。敷きっぱなしの布団、何ヶ月か前の新聞紙、2リットルサイズのお茶のペットボトル、乾燥しきったまな板、オニギリを包装してたビニール、数日前の牛乳がこびり付いたグラス、空っぽになった煙草の箱、ぐしゃぐしゃの少年ジャンプ、レンタルビデオのケース、電池の止まった目覚まし時計、実際、ひでえもんだ。

 定期的に掃除はする。さすがにまずいと思って。ただ、その間隔がだんだんと長くなってきている。いつかもうあきらめて、ゴミの上にゴミを重ねて暮らすようになるんじゃないか、最近そんな嫌な予感もし始めている。

 誰にも口を出されない生活は、素敵なものだと思ってたのに。次第に、誰にも何も言われない生活が、なんて重苦しいことなのかと、気づき始める。いや、もう十分気づいている。どれほど部屋を散らかそうが、真夜中になって家を出てほっつき歩こうが、誰もそれを止めやしない。「もうちょっとしっかりしたほうがいいんじゃないの」なんて台詞、誰かが言ってくれるわけでもない。仕方が無いから自分で自分に言い聞かせる。

 たまに実家から、元気でやってるのかという電話がかかってくる。友人たちも、調子はどうかと、気遣ってくれる。そこで意地張って、「まぁなんとかやってるよ」と、電話の先の相手に応えながら、目の前にはぐちゃぐちゃに散らかった部屋。なんとかやってません。だめだめだ。どうしようもない。

 問題は、これをどうやって解決するかなのだけど。とりあえず、どうすりゃいいのかわかんねえから、放っておいてある。とにかく、スーツとワイシャツだけクリーニングに出し続ければ、生活は回る、シャツもトランクスもシャンプーも石鹸もハンカチもティッシュも靴下もいざとなりゃコンビニで買える。台所使わなくても食事すら外ですませられる。それでとにかく社会人はやってける、最低限のレベルで。そんな風に開き直ってしまったから、進まない。

 とりあえず、今の生活が、どこまで悪化するのか、それとも改善するのか。今はまだとても、先行きが想像できない。ある程度の金と、週二日の休みをもらっておきながら、俺の生活が豊かなものであるかどうか。梅田駅の道端にいるホームレスを見やりながら、俺はこの人たちとなんら変わりない、いや、ずっとひどい「質」の生活を続けていると、そこはかとなく思う。


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