4つの季節を重ねながら

2003年06月05日(木) 手作りカーゴパンツの巻

こんにちは〜。
映画の撮影はきのうようやっと打ち上げパーティがあり、一段落しました。監督&編集のかたたちはまだまだ作業中ですけどね。。。

さてさて、だいぶまえから書こうと思ってきっかけがつかめなかったはなし。

秋口に日本に帰ってきたときに、空港から実家に戻って、スーツケースを置くとそのまま父に車を出してもらって叔母の家へ。そしてミシンを載せて、帰ってきました。わたしが中学や高校のときに洋服を作るときも借りた懐かしのミシンです。

これを使って作ろうと決めていたのはカーゴパンツ。

仕事柄しゃんがでいることが多いし、ポケットも多いほうが便利なので、日本でもフランスでもストリート系、カジュアル系のお店を見つけると、ゆったりめのカーゴパンツを探していたのですが、いまの時代、ヒップハングのデザインばかり。どんなに探してもウエストまで来るものは見つかりませんでした。フロントもタックのないデザインばかりなので、ずーっとしゃがんでいるのはちょっと辛そう。

ウエストまで来るデザインにこだわったのは、ヒップハングタイプだとしゃがんでいるときに後から見るとパンツ丸見え!になってしまうから。仕事関係の人たちにパンツを見せて回る気にはなれなくて。(笑)

自分で作った経験があり、仕立て屋さんに頼んだ経験もある母には真っ向から反対されました。スカートはいいけれど、パンツは難しいから無理だと。たしかにウエストからヒップにかけてのライン、股上のカーブなどは、市販の服でも自分の体型に合うものを探すのは一苦労しますよね。

でも裏を返せば、市販のものでもそうそう、体型にぴったりのものなんて見つからないのだから、自分で作ってちょっとくらいしわが寄っても、それほど気にならないのではないか?ストリート系の服のなかには安いけれど縫製の質の良くないものも多々あるのだから、自分で作った服の縫い目がいまいちでもそれほど気にならないのではないか? そう思って、やるだけやってみることにしました。

うまくいけば同じデザインの色違いで何枚も身体に合うパンツが手に入る可能性だってあるわけですし。

そして、自分の3サイズと気に入っているパンツの実寸をもとに、レディスのゆったりパンツの型紙の本を参考にパンツのだいたいの型紙を作り、メンズの型紙の本からカーゴパンツのディテールの型紙を作って、大きめに布をカット。それを仕付け糸で仮縫いしてはいてみたら、ぜんぜん体型に合ってないんだな〜これが。(笑)

幸い、いまは実家に住んでいるので、それを母に見せ、ダーツの長さ、向き、場所について相談。股上のカーブについては自分の手持ちの服で一番着心地が良く、スタイル良く見えるものを参考に断ち直しました。

そのあとは、市販のパンツを見ては縫い方やステッチを確かめて、1か所縫い進むごとに母に相談しながら(笑)、ほぼ3週間かけて完成! 問屋街でカーゴパンツ用のファスナーを5本も買い込んできたわたしに「1年経っても、1着も完成しない」にかけると言っていた父もちょっとは見直してくれたようでした。(^^;;

真っ黒な布で作ったのでアラが目立たないこともあって、自分で作ったと言うといつも驚かれるので、素人洋裁にしては成功だったかな。

先日、2着目を作ったときは1週間とちょっとしかかからず、型紙もまた微調整したので、2着目はかなり体型に合って、座ったりしゃがんだりしてもつれないものになりました。サイドゆったりめ、股上深めなこともあって、市販のパンツよりずっと楽です。

そしてやっぱり三つ子の魂、百まで、ですね。
最近ではだいぶお料理も好きになりましたが、やはり子供のころから好きだった洋裁のほうがずっと好きですね。ミシンをかけているときはほんとうに楽しかった!

「そんなにゆっくり縫ってたら、そりゃあ楽しいわよね〜。わたしが昔やってたころは明日着て行こうと思って必死でやってたからミシンが楽しいなんて。。。」とは母の弁。


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素人洋裁を成功させるコツは1にも2にも布選びだと思いました。わたし自身中学、高校のときにスカートなどを作ってすでに失敗済み。(笑) どんなに色や触り心地が良くても、伸びる生地、極端に薄い生地、厚い生地は難しいですね。今回使ったのはツイルという、チノパンに使われる布に似たもので、布自体に張りがあるので、アイロンをかけるのも裁断するのも、縫うのもとても楽でした。

東京近郊にお住まいのかたは、日暮里の繊維問屋街 がおすすめです。
歩いていれば、小売りをしてくれるお店、しなそうなお店は雰囲気ですぐわかります。問屋街の奥の安田商店さんでは、家庭用のミシンで縫える布の厚さや、夏に涼しい布など、いろいろ相談にのってもらいながら選べるし、顔を覚えてもらえるとちょっとお得な思いもできるのでお気に入り。最近流行り?の麻の布も激安価格で手に入りますが、どうして安いのかもちゃんと説明してもらえますし。

それから、気に入っている市販の服の実寸を参考にするのもポイントです。今回作ったカーゴパンツはゆったりめにしたいし、Tシャツをなかにいれることも考えて、わたしのヌードサイズ+10cm のゆとりを入れています。見栄をはって、できるだけ小さなサイズで作りたかったけれど、できあがったものがきつきつでは意味がないですからね。ぴったりめだけど、どんなに動いてもきつくないチノパンのサイズを測ったら、+10cm もあったのです。それが自分のウエストサイズだなんて認めたくないけれど、しかたありません。

経験者のアドバイスも貴重です。
自分でカーゴパンツを作ったというとたいていの友人に驚かれるのですが、わたしの母の家系は手芸好きのようで、叔母の家にミシンを取りに行ったときも、いとこがジーンズをリメイクしたバッグが飾ってありました。(笑) 母、伯母は洋裁経験者でもあり、ダーツ1つについても相談できたのは大きかったです。とくに後ろ姿は自分ではなかなか厳密に確かめられませんから。

そして最後はやはりミシンでしょうか?
この話題はまたこれで長くなりそうなので、後日、別の機会に。



2003年06月07日(土) 美しいもの


まったく偶然に存在を知ったサイト。

おかあさんは、たましいのうつくしい人。

そして、描かれている絵の健康的な輝き。



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ほとんどの現代アートに欠けているもの。

それは見る人になにかを与える力。

年代が現在に近付けば近付くほど、作った人の自己満足でしかないものや頭のなかで考えただけのものがあふれている。

彼女が描く絵は見る人に大きな力を与え、そして思考ではなく感情をともなっている。

Hinano の さんぽみち



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カメラアシスタントの仕事をしていると、どうしてその職業を選んだの?とか、将来はカメラマンになりたいの?と、よく訊かれる。

わたしがこの仕事をしたいのは、世の中になにか美しいものを生み出す、その過程に携わりたかったから。自分の立場のことはほんとうはどうでもいい。

そして、見渡せば、世の中はこんなにも美しいものであふれている。
ただそれに、気づくか、気づかないか。それだけのこと。



2003年06月18日(水) フランス映画、冬の時代



3月に一時帰国していたときのこと。
映画関係の機材shop にて、がっかりなことを聞きました。

フランス映画を好きでよく観る人なら、日本で公開される映画の冒頭部にしばしば CANAL + あるいは CNC (Centre National de la Cinematographie) というクレジットが入るのを記憶しているかもしれません。

このうち CANAL + というのは、フランスの有料チャンネルで、日本の WOWOW のように、スポーツの中継や映画をメインのコンテンツにしている局です。ただ、WOWOW と違うのは地上波、衛星、ケーブルなどさまざまな媒体で見ることができるということ。そして、いまでは欧州各国でその放送を見ることができます。

さて、CANAL + は毎月たくさんの映画を放送するために、映画の製作資金援助をかなり大々的にやっていました。

もう一方の CNC というのは国の機関でここもフランス映画製作のための資金援助をしています。

フランスの映画館で公開される映画で、CANAL + か CNC (あるいは両方)の援助を受けていない映画はほとんどないといっていいほど。

ところが、去年(だったか一昨年の秋くらいだったか?)、その CANAL + の親会社が潰れかけたのです。親会社が CANAL + を買収したのは会社が傾く1年前くらいだったのですが、会長は業績不振をすべて CANAL + のせいにして、CANAL + 社長を解任。

わたしがニュースで知ったのはそこまででしたが、その後 CANAL + は傾いた経営を建て直すため、そのときすでに決まっていた映画製作への援助のほとんどをキャンセル。(;_;) 

ヨーロッパでは冬の間は日照時間が短いので、映像撮影は夏が一番のオン・シーズン(夏はみんなバカンスに出かけててパリにいないので、パリ市内での撮影がしやすいという事情も(笑)) 夏になったのにどうしてこんなに撮影の仕事が来ては延期、来ては中止になるんだろう???と思っていたら、そんなことになっていたのでした。

そして、今年の3月、久々にパリに戻ってきて、「も〜うさすがに去年の CANAL + のお家騒動は終わったでしょう〜」と、機材のレンタルハウスに軽〜く様子伺いに行きました。「どうぉ?最近?」なんて軽い調子で。すると。。。。「もうね、最低最悪!」と答える人の目の色がマジ。(^-^;

いったいどうしたのかと思ったら、国の機関 CNC が製作資金援助に使うためのお金は、そもそも、TV局各局に課していた特殊な税金を資金源としていたのですが、その税金が昨年末から義務ではなくなったとのこと。

「義務じゃない税金って、いったいなに????」

と、ぽか〜んとした顔で訊いてしまいましたが、相手も税金の専門家ではないのでそれ以上はうまく説明できず。(苦笑) 「義務じゃなくなったら当然だれも払わないよね〜」と言っていました。

「てっきりもうそろそろ CANAL + の騒動も終わったかと思ったのに」というだけ言ってみたのですが、「もう去年からぜんっぜん働いてない人がい〜〜〜〜っぱいいるよぉ。日本の人たちにさ、日本の CM ロケ大歓迎!!って言っておいてね」と。


映画のプロデューサーの仕事は、本来は映画を撮るのに必要な資金を集めてくることなのですが、フランスのプロデューサーたちはいままで、CANAL + と CNC からの援助、そして海外でも公開できそうな映画なら外国からの資金、ほとんどそれだけで映画を作ってきたようなものでした。ですから、CANAL + と CNC が機能しなくなってしまうと。。。。。

ポランスキーやジュネジュネのように海外からの多くの資金を集められる監督たちはいいのですが、それ以外の人たちが映画を撮るのはかなり難しくなりそうです。現に、わたしの友人の友人(まったくの新人)が去年の2月から撮影を開始するはずだった映画はいまだに動いている気配がありません。ドパルデューの娘、アニー・ジラルド、グレゴリー・コランなどフランスでは名前が売れている人たちの出演が決まっているにもかかわらず、です。

フランス映画の魅力はアメリカ映画のような大々的なものではなく、無名の監督と俳優たちが作った地味なものにあると思っていました。はじめはひっそりと公開されて、口コミで徐々に評判が広がってヒットにつながっていくような映画です。そんな映画は何年かに1本くらいしかありませんが、日本の映画の配給業者さんたちは優秀でちゃんとそういった映画を見つけて日本でも公開してくれていたものでした。


でもこれから、2、3年はその手の映画にとっては厳寒の時代かも。

あ、有名監督たちの映画はたぶん大丈夫ですよ! 街中で映画の撮影をまったく見なくなったわけではありませんから。



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