V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
鮎釣りがしたくて、近所の釣具店で道具を揃えた。必要なものだけ選んでレジへ。すると、レジのおばさんが言った。「この針は、逆針付きですけどいいですか?」「この糸は張り替えようですけどいいですか?」確かにおばさんの言うとおりで、逆針付や張り替え用では困る。久しぶりの道具調達とワクワク感で冷静さを失って、すっかり間違えてしまったようだ。それにしても、このおばさん、釣具を買う人がどんな釣りをするのか、頭に思い描きながら売っている。お客が間違っている、と思ったら指摘する。プロだなあ。大企業の研修でケーススタディ問題を出すことがある。お客様が「何かをしたい、協力してほしい…」と言ってきたとき、さてあなたはどうするか?という問いを出す。すると「お客がやりたいっているのだからそれでいいでしょう」と簡単に結論付けてしまうエリートが多いことに驚く。視点を今、ではなく未来に置く。釣具店のおばさんとは大違いだ。
そのA社長に「若い二世経営者に伝えたい言葉は何か?」と尋ねた。すると「『誰のため、何のためにその事業をするの?』その意味を後付でも良いから自分で探して、好きな形に変えていくといいよ」と言う。ねじ一本が欠陥品でもクルマは動かない。だから、ねじ一本を心を込めて作っている会社になる。そんな「幸せに貢献するストーリー」が、お客様のCSと組織のESを積み重ね、感動品質を生む会社になる。
CSに一番必要なのは「理念」。売上げ至上主義だった結婚式場を引き継ぎ、CS No.1企業へと変貌させたA社長は、引き継いでから4年目にドラッカーや松下幸之助の書籍を読んで、理念を作った。A社長が目指した社員にわかりやすいもので、「毎日話していて気持ちよくなるもの」「毎日目指していけることで言葉に出そう」「この理念に賛同した人だけで経営していこう」と思える理念だ。そしてできた理念が『結婚式=結魂式』。この言葉に出会ったとき「ああ、そうか」と感激し、鳥肌が立ってゾクゾクしたという。同社を紹介するVTRを見たが、最初にこの理念が出てきた。A社長は「大好きな理念です」と言葉を添えた。自分で作った理念に惚れて、憧れて、打ち込める。本当に素晴らしい経営だと思った。
某機械メーカーの社長と話しました。社長は以下のように社員に語ります。「お客様が儲かるような機械を作る。私たちはお客様が儲ける前にほんの少し儲けさせていただく。自信を持った機械を作り、安く売ってはいけない。名前を売るような機械を作ろう」。この中で特に共感したのが『お客様が儲けるその前に、ほんの少し儲けさせていただく』という考え方。同社がお客様にとって「必ず儲かる投資」となる商品を作っていることを端的に表している言葉です。コンサルタントも同じ。お客様に儲けていただく前に、ほんの少し儲けさせていただくのがこの商売です。
あなたは部下と個別面談したときに、どのような質問をしますか?ある会社のマネージャは、部下の成長意欲を知るために、次のように聴いています。「習得したい知識・技能と、経験してみたいことは何ですか?」。これをきいて、とてもいい質問だと感心しました。なぜなら、「知識=OFFJTで提供するもの」「技能=OJTでマスターすること」「経験=提供するべき機会」と分けて考えることができ、どのように習得してもらえばよいか、手段もわかるからです。さらに、「なぜその知識を学びたいの?」「なぜその技能を習得したいの?」を聴けば…本人が次に望んでいる仕事もわかります。ところが一般には「習得したいスキルは何ですか?」と尋ねてしまいます。これだと、答えが曖昧になりがち。スキルという言葉は抽象的なんですね。面談の質問に悩んでいるマネージャは大勢います。「習得したい知識・技能と経験してみたいことは何ですか?」是非使ってみてください。
さらに専門家は、分譲住宅の幹部をやっていた人が、リフォーム業界にやってきても上手くいかないといいます。それは下請けさんとの付き合い方。幹部が大手分譲住宅メーカーにいたときは、下請けさんがオフィスを訪ねてくると、アゴで「あっちで待て」と指示していました。下請けも仕事が欲しいから、そのアゴ指示に我慢して従います。しかし、小さなリフォーム会社でそれをやると致命傷。「元請けがそんな態度なら、笑顔や挨拶は必要ない」となり、客先で、挨拶をしなくなってしまうのです。リフォーム業はサービス業。新築と違い施主が住む家に、一か月も通うことだってあります。新築・建売と違い、現場での施主との接点が格段に多いのです。身なり、挨拶、マナーは顧客満足の生命線。そこがわからない人にリフォーム業のマネジメントはできないのです。苦しい時は誰しもモノ売りに走りがち。こんな時だからこそ、あなたのビジネスをサービス業化してみましょう。
リフォーム業界の専門家の話を聴きました。分譲住宅の営業マンだった人がリフォーム業界の営業マンに転職すると、まるで売れないのだそうです。理由は、分譲住宅はモノを説明し、価格を安く提示し、「いつまでならお得です」と期限を区切るのが営業の秘訣。一方リフォームは、要望を聞き、それに応える仕様を考え、アレンジし、満足させるのが仕事。さらにお客様もリフォームはしたいものの「今すぐでなくてもいいか」と考えがち。だから、意思決定をどんどん先送りしてしまう。そんな時にお客様の立場で一緒に考えて、「そういうことなら、お盆までにやりましょう」と納得の納期を提示できる人が売れる人だといいます。分譲住宅はメーカー営業で、リフォームはサービス業。似て非なるモノ売りとコト売りの違いがこれほどわかりやすい例も珍しいですね。
コロナ禍で結婚式が延期または中止にした人が17万組にのぼったとの報道を見ました。その人たちに対し、式場の対応は大きく異なりました。
感染者数が多くなって、もうどこでどんなクラスターが発生したかなど追う気力もなくなった昨今。ANAの第一四半期の大赤字や日産の今期の見通しを聞きながらこれが中小企業に及ぼす影響を思いつついまだ空けない梅雨空を睨み、暗澹たる気持ちになる。こんなときに思い出すのは、某社の事業部長の言葉。曰く「『人は自分のために』と思うときに一番弱く、『他人のために』と思うときに一番強くなる」。これは真実だ。一般にご主人が奥様に頭が上がらないのは、この「他人のために」の量で奥様に圧倒的に負けているからだ。自分がだんだん弱くなっていく…そんな感じがするときは…「他人のために何ができるか」…その視点が欠けているとき。だから、こんなときこそ「他人のために何ができるか」を考えよう。そして、「ありがとう」と喜ばれる、自分が今できることに集中しよう。今年の晴れ間は、自分でつくるしかない。
本部も負けていません。2005年に「のどごし生」を発売するとき、ライバル会社も同じ日に新商品を出す、という情報が飛び込んできました。もし同じ日に出すと、試飲会場を取られてしまい、お客様が試飲できなくなってしまいます。1日でも3日でも早く出せないか。そんな現場の声に、生産本部、物流本部、営業本部は出荷の前倒しを検討します。24時間稼働の工場の生産物流計画の組み換えは、手配する資材なども異なるから容易ではありません。が、各本部はチカラを合わせ、それをやり切り、1週間早く市場投入することができたのです。キリンの理念は「お客様本位」「品質本位」。「もっと喜んでもらえるものを」を追求するからこそ、こんな開発と一体感が出るのでしょうね。
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