V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
九州に猛烈な台風がやってきたとき、被害が甚大と予想されるので、九州のある中小企業は社員全員に対し、心配な人は家族ご関西などのエリア外に避難し、ホテルなどで過ごしていい、という避難指示を出しました。費用は会社負担です。しかもこの決断をしたのは一社だけではありません。複数社が金曜日の時点で同じことを社員に通達しています。もちろん避難するかどうかは社員の任意ですが、会社は社員を守るためにそこまでやるのかと感心しました。気象庁の伝え方も尋常ではありません。最悪を想定した上で最善を尽くす行動ですね。杞憂に終わることを祈るばかりです。
京都ツウの人から聞いた話。コロナの影響で祇園も閑散としています。それを支える旦那衆は、置屋に「3か月先の請求書を持って来い」と言っているそうです。置屋は、お客が利用しようがしまいが、請求が発生するサブスクモデルみたいなもので成り立っていたのですね。長寿企業ほど、お客様に支えられていることを強く実感しているものですが、こういう経験が語り継がれていくのでしょうね。
英語を学ぶにも「ビジョン」が必要です。そうしたビジョンを持つ人は「命がけで勉強する」から修得も早い。もし英語で話す恋人ができたらあっというまに英語が上達します。グローバル産業のクライアントの社員が英語を話せるのは、同社の技術を広く世界に伝え、その国をよくしたい、という使命感があるから。伝わった時の快感も得難いものです。すべての差は、目的意識から生まれているのですね。
リーダーの一番の罪は「ビジョンなき仕事を与えること」だと昔、ある人から教えていただきました。関心を持たずに仕事をすれば「やらされ感」ばかりが強くなり、手ごたえが感じられず虚しくなります。だから、チームで「何のためにやるのか」という理念・志を共有し、「やり続けることで、良い影響が生まれる」という重要感を感じさせる工夫が必要です。例えば英語を勉強したがる人は多いが、「何のために英語を学ぶのか」を明確にしている人はあまりいません。そこを見切っているのか、あるとき英語の達人に「どうしたら英語が上達しますか?」と尋ねたらすぐさまこう切り替えされました。「英語を勉強するのではなく、英語で○○を伝えるために、英語を学ぶ。自分が伝えたいこと英語圏の人に伝えることができたら英語圏の人にも社会貢献できる。その目的意識があれば上達は早いですよ」。
2チャンネルや求人サイトなどでガッカリすることを書かれて悩む会社があります。そんなときは謙虚に受け止めて改善します…と言えばかっこいいのだが、実は聞き流した方がいいことも少なくありません。人の書くことはテキトーなこともあります。全く違う世界観で生きている人もいます。歴史ある会社や、個性が売りのオーナー企業は「ごめんなさい。変な会社と言われて本望です」と、割り切りましょう。アンケートやサイト上の書き込みは全員に相談しているようなもの。が、そもそもあなたの会社の未来や経営品質の向上を全員に相談する必要はないのです。自社を誰かの役に立てたい時に、この先のビジョンを策定するときに一番相談すべきは、誰でしょう?それは、今の自社に100点をくれる顧客です。その顧客に次のように尋ねてみましょう。「どうしたら150点になるでしょうか?その答えの中に、新しいビジョンに氣づくヒントがあります。
リーマンショックの翌年、元リッツカールトン代表の高野登氏の講演を聴きました。高野氏はリーマンショックのとき、世界中のリッツの支配人が集まったミーティングに招集されたといいます。高額所得者に支えられた同ホテルはどこも売上げが半減。当初は暗い気持ちで参加したといいます。が、数字の話は一切無し。話し合ったのは「自分たちが戻る立ち位置」。理念で差異化してきたホテルだから、自分たちらしさを失わないようにする、ということでした。このことについて話し合いをするうちに自分には世界中に仲間がいることを実感。理念について話し合ううちに自分の心が「ガチャーン!」とスパークした音がしたといいます。リッツカールトンのモットー「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」はあまりにも有名ですね。このとき高野さんは、リーダーの並々ならぬ覚悟を感じたといいます。窮地に追い込まれて何を最優先するかで、リーダーの覚悟は伝わりますね。
こんな考え方の友人もいます。「今回のコロナは、人類の掃除だと感じています。掃除といってもゴミを掃くのではなく、整頓なんだと。変化が大切と分かりつつなかなか踏み出せないシフトチェンジできない我々に環境を変え変わるきっかけを作ってくれた気がします」
子供が小学生だった夏休みに、トヨタ白川郷自然学校のナイトハイクに参加したことがあります。ナイトハイクとは、夜の森の中を灯りを点けずにインタープリターさんと約2時間散策するツアー。決して一人では行かない森の中でコノハズクの鳴き声を聞いたり、超音波探知機でコウモリが飛ぶ音を拾ったりしました。真っ暗の中を歩くと、眠っていた自分の聴覚・視覚が研ぎ澄まされます。その日、お目当てのムササビは見られませんでしたが、自分の中にも野生があることを感じました。今、コロナ禍で闇の中にいる感覚の人も多いでしょう。その中で多くの人が自分の感性を研ぎ澄ませています。例えば、こんな考え方の友人がいます。「コロナはウイルスではなく、選択です正解がなく方向性も決めづらい時に選択していくためには、選択基準=自分の軸や価値観をより明確にしていく必要がありますね」。闇の中でこそ磨かれる感覚があります。コロナ禍だからこそ感じたこと、気づいたことを、次の時代を生き抜く糧として大事にしたいですね。
今から15年前、米国で夜TVを観ていたら、終戦特集をやっていました。当然日本に原爆を落とすシーンも放送されましたが、観たこともない映像が多数ありました。長崎に落とされる原爆には米軍兵士が皆、笑顔で自分の名をサインしていました。そして、終戦の日、米軍水兵がNYで抱き合ってキスをしていました。日本人としては苦々しい思いですが、この番組は一貫して「日本人がちっとも諦めないから原爆を使うしかなかった」と伝えていました。「本土決戦になり国民の1/3が死ねば勝てる」との陸軍幹部の閣議での主張を大きく取り上げて原爆肯定の材料にしていました。先日NHKスペシャルで原爆投下を特集していましたが、状況に応じて自分を変えられず、「本土決戦で勝てる」という軍部の主張と「広島に落ちたのが原爆のはずがない」という思い込みによる意思決定の遅れが悲劇を広げたのは間違いないようです。状況が変われば、かつては強みだったものが一気に弱みに変わります。素直に弱さを認め、長期的な展望を持つこと革新・飛躍の第一歩ですね。
コロナ禍が長続きしそうな中、よく「生き残る企業の条件」という言葉を耳にします。が、最近はむしろ「生きる資格」こそ肝心なのではないかと思います。「生き残る」には競争に勝つという意味がありますが、「生きる」には「個」を確立することや、自分の本分に忠実であること。社会の中で自分の使命を全うすることなどの意味があります。これからも求められる企業とはコロナ禍だろうが米中戦争下だろうが「生きる資格」を満たした企業です。SDGsは今を生きる資格リストですよね。対して、大企業同士の合併話に余り興味が持てないのはそこには「生き残る条件」のみを課題にしているからでしょう。
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