V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
リアルな研修が再開している。5〜20人単位で人が集まり、ディスカッションしながらアウトプットを出す研修だ。マスクをするかどうかは任意だ。大企業は感染拡大を恐れオンラインにこだわるが、中小企業はその点度胸がいい。それは見てるところが違うからだろう。大企業は目先のことしか見ていない。中小企業の社長達は3年から5年先を見ている。そのために今教育しないわけにいかないと腹をくくっているのだ。人に投資することが最も確実な投資である。コンサルタントはその負託に答えないといけない。
ビジョン開発の指導の一環で某社の歴史分析を行った。すると、これから伸びる分野について積極果敢に投資をしてきたことが分かった。機械を購入する必要があるため、先代は先を読み、そのたびに革新と度胸をもって投資を決断してきたことがわかる。そして、小さい会社ながらも業界をリードしていた。その流れがDNAであるのなら、同社は次の時代の一歩先を行く手がかりを見つけなければいけない。問題は「何をするか」の「何を」の見つけ方だ。情報の取り方は当時と違う。今の時代特有の情報の取り方を見つけないといけない。
ビジョン開発をする理由プロジェクトメンバーに聞いた。曰く「ビジョンを作れば何にどう取り組めばいいかわかる」「今やってることに対しても、〇×が出せる」「やるべきことは意思決定が早くできる」「効率がよくなる」「ビジョンがないと全員がバラバラになってしまう」「未来が見通せるゴールがあると行動が具体的になる」「全員の意識をそこへ入れて新しいものを海だすことが」など。素晴らしい。やらされ感ゼロ。これだけわかっていれば良いビジョンができる。
某社でビジョン開発プロジェクトを行っている。同社の理念は『公器』だ。その公器という考え方は社員と共有できている。問題は「何を通してこの公器という理念を果たすのか」が不明確なこと。それを皆で一緒に考えて明確にしたいのがこのプロジェクトの動機だと社長は言いう。それを聴いて、その問題意識の高さに感動した。いくら理念が優れていても、その時代に合った「何を通してそれを実現するか」がなければ理念は飾りで終わってしまう。理念とビジョンの関係は常にそうあるべきなのだ。
逆にもし、社員がそのような調査をして、7時開店で問題がないとなれば「7時でも良いのではないか」と提案するべきである。日本人はこのような提案力を稟議書で養ってきた。稟議書はトップに提案する前に、上司のチェックを受ける。すると上司が、トップ層を納得させるための「思考法」を教えてくれて、「もう一行足せ」とか「この一行を消せ」などと教えてくれたものだ。ダイレクトコミュニケーションの環境が整って、相対的にそういうこのような提案能力が低くなってしまったのかもしれない。
ビジネスはつくづく伝え方だと思う。朝6時から開店している店舗がある。これに対し、社員が開店を7時にして欲しいと要望した。朝起きれないからだ。しかし、6時に開店するのは、それを決めた理由があるはずだ。よって社員はまずその理由を知り、次に6時から7時の間に、想定しただけの客の利用があるのかを調べないといけない。さらには、その間にきているお客様に7時開店でも構わないかどうか聞かないといけない。そういうこともせずに「朝が早いので7時」というのでは、その意見は通るはずがない。
板取川に行く。キャンパーたちが河原や道路脇に捨てたゴミに目を覆いたくなる。同時に大谷翔平の言葉を思い出した。彼はよくグランドでゴミを拾う。日ハム時代、稲葉選手がゴミを拾うのを見て感動し、以来大リーグでも続けている。彼はなぜゴミを拾うのかを聴かれて次のように答えている。「ゴミではなく他人が捨てた幸運を拾っている」。この言葉通りなら、キャンパーたちは、自分の運を落としていったのだ。文句も言わず地元の人は立派だ。彼らに幸運が訪れますように。私もこれから板取川に行くときはゴミ袋も持参しよう。
吉村昭の小説で、最近もう一つ感銘を受けたのが『高熱隧道』だ。トンネルを掘るために危険を顧みず働く男達の物語だ。働くためには動機が必要だ。その動機が社会のために役に立つ…が必要だと私は思っているが、そんなキレイごとで動く人間はわずかでしかない。ほとんどの人は自分の家族を守るための金や名誉のために働く。それがすごいエネルギーになる。その動機なくして社会は成立しないことを教えてくれる小説だった。
吉村昭の小説よく読む。事実を元に書いているので、人間が本当にそんなことするのかと驚愕するからだ。しかもそれは、歴史の表に出ていない、凡人たちのドラマだ。例えば無人島からの脱出劇を描いた『漂流』は、読みながら江戸時代に絶海の孤島からどうやって脱出するのかとハラハラしたが、「まさか!」と思う方法だった。「諦めてはいけない」ということを、これほど思い知らされた小説は初めてだ。
汁物を付けて熱中症対策に成功した社長は、パンの無料支給では失敗した経験があるという。パンの無料支給は当初社員に歓迎された。しかしながら、食べ残す社員がいて、それをゴミ箱に捨てるのでネズミがわいたという。また、袋などがオフィスやロッカールーム、駐車場周りに散乱するようになり、ついに無料のパン支給を中止した。その体験談を聴いて、人に喜んでもらうことの難しさを痛感した。
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