2004年05月22日(土) |
宙組 『ファントム』 |
私は『オペラ座の怪人』が大好きだ。 四季版を大阪で2回、ロンドンでも見て、ケンヒル版を大阪で見て、 またまた四季版を博多で見て、京都でも見た。 6回は見たことになる。
だから今回の公演は期待半分と疑い半分だった。
でも宝塚版はどれにも似ておらず、全く違ったものだった。
まあ、ツッコミどころまたまた満載なのはいつもと変わらずなんだけど、 気がついたら見入ってしまっていた。
幕開きから黒天使よろしく従者といった名前のダークなダンサー達がセリ上がってくる。 そしてファントムが嘆く時、喜ぶ時・・・ファントム喜怒哀楽のたびに出てきて踊る。
宙組イチオシダンサー珠洲春希・・・ともえちゃんが存在感も増して、 従者の長として大活躍だった。
それでは・・・思いついた順に・・・。 まずかなみちゃん。 かわいいの・・・すごくかわいい。 トウコを思う役だけれどトウコがクリスティーヌに惹かれていくのを はがゆい気持ちで見ている。 ふくれっつらがなんともかわいい。 でももっとなにか・・・大きい役でもいいやん・・・と思ってしまった。
トウコちゃん。 ウマイ、ウマすぎ。デカイのが揃った宙組なのに・・・存在感たっぷり。 クリスティーヌを想い、ひたすら彼女のために尽くす・・・。 オペラ座で歌えるようにチャンスを与えたり、ファントムから守ろうとしたり。 歌なんて本当に正統派で聴いていて心地よい。 クリスティーヌを目の前にして自分が自分でなくなってしまうほどで その“浮かれよう”が手に取るようにわかった。
じゅりちゃん。 どうやら、ファントムのお父さんらしい。 他のサイトで「お父さんというわりには若すぎる。」という意見があったけど 20歳になる前の子で、ファントムが今またそれくらいなら、ありえる設定だと思った。 ファントムと銀橋で歌う歌は涙なしには聴けない。 息子に対しての様々な葛藤が痛いほどだった。
ワオさん・・・。 限りなく“人間”でドロドロしたものや、妖しさとかはなく、 まあ、人を殺したりはするけれどもとても無邪気なファントムだった。 「私の顔を見たから。」と人を殺すわりにはとても純粋だった。 クリスティーヌに自分のお気に入りの場所を紹介したりするところは なんともかわいらしかった。
1幕は物足りなさを感じたけれど、2幕途中からぐいぐい引き込まれた。
歌は・・・まあいいや。
花サマ。 またまた若返った(悪意なし) かわいい。ホント、かわいかった。 まあ、幕開き、農家の娘にしては華やかなドレスだし、 なぜ新曲の楽譜を売っているのかもわからない。 農家の娘が歌うだけならともかく、なんで楽譜売るの?ってね。
トウコ扮する伯爵の紹介でオペラ座へ行くけど、歌は習えず、衣装係になる。 でもヒトリで歌っているところをファントムに聞かれて影レッスンをつけてもらう。
ファントムが「デビューできる。ドレスも用意している。」と言うけど 外に出られないはずのファントムが一体どこでドレスを調達するのか? 劇場ゆえに衣装部へ行けばヤマほどあるのか?・・・だろうな。 まあ、そのドレスを着て、コンテストに出て見事デビューのチャンスを得る。 カルロッタたきちゃんの策略だけど。
あくまでも純粋無垢で・・・それが嫌味なく本当にかわいらしかった。 でもかわいらしいだけではなかった。 花サマの迫真の演技ももちろんで、最後にはすっかり泣かされてしまった。
タキちゃんのカルロッタもまあ、彼女しかできないだろう。
他に・・・目立つ役はなく、ばたばたばたーっと出てきてばたばたばたーっと去っていく。 そんな感じだった。
ただ・・・フィナーレ・・・もう少し余韻が欲しかった。 いきなり、明るく楽しいショーの始まり始まり・・・でちょっとがっかりだった。
ロケットのセンターはかなみちゃん。またかわいい。研8とは思えない。 ・・・と思っていたら、研7もゴロゴロいた。わははー。 はるか嬢や織花さんとか・・・。あははー。ま、いっか。
従者に釘付け・・・あらあらあら・・・という間に終盤・・・。
あと4回・・・。もっと深く見れるようになるんだろうか。
2004年04月18日(日) |
月組バウ 『愛しき人よ』 |
多くの宝塚ファンが待ち焦がれたきりやんのバウ。 ポスターやチラシを見て、胸躍らせたバウ。
しかし忘れてました・・・齋藤センセの作品だということを。
最初に断っておくけど、私は正直な話、齋藤先生の作品はあまりあわない。 単純な脳細胞にフクザツな複数の人間関係は理解できない。
でも3拍子揃ったきりやんと不思議な魅力の城咲さんと 「まあ、元に戻ったん?」っていうようなるいるいと真面目な顔のさららんの・・・ あのポスターを見るたびに「おもしろそうかも」と思ってしまった。
では・・・思いついた順に・・・。 さららん・・・ケビン。 きりやん扮する和実の友人であり、ナチス親衛隊の青年幹部でもある。 なんだかいつの間にか・・・貫禄ついてウマくなっていたような気がした。 ナチスの制服もとてもよく似合い、青年幹部でありながら 恋人といる時間が1番楽しい普通の青年でもあり、 だからこそ人間としての正しい道に気付いてしまう少し悲しい役。
恋人の夏月都ちゃん扮するミーナともとてもお似合い。 見ていて微笑ましいくらいだった。
るいるい・・・川島芳子。 男装の麗人であり、東洋のマタハリと言われた女性スパイ。 男装の麗人・・・というのはぴったりだったけど、 “ボク”と言いながら、立ち居振舞いが“オンナ”なので 時々“オカマ”に見えてしまった。 「ジェラシー感じちゃう」なんてセリフは全く・・・演出家の好みだろうか。 野心と欲望が見え隠れするあたりはいいのだけれども全てが突拍子過ぎて るいるいが気の毒なくらいだった。
だけど野心のためか、和実に色仕掛けで迫ってみたり、 妖しい雰囲気で和実の元婚約者のゆらさんに迫ってみたり どうもシリメツレツに見えてしまう。
軍服姿がなまめかしく、その美しさとはウラハラに 少し短期に感情的だったり、おろかさがあったり・・・。 時代に翻弄された1人の悲しい女性が哀しく息づいていた。
ゆらさん・・・和実の元婚約者・・・若菜。 もうカンベンしてください。ゆらさんで振袖なんて今更・・・。 「和実さん・・・。」なんて声できりやんに迫ったって・・・切なさもなにもないです。 「きっとすっごいどんでん返しがあるんやろうなぁ。」と・・・最後まで思ってました。
なかったワケじゃないけど・・・ありきたりすぎて・・・期待はずれでした(をいっ!!!) 和実という婚約者がいながら、ムリヤリ父親が決めた人と結婚。 そしてそのダンナが死んだから・・・と和実を追いかけてパリまで来る・・・。 この時代にそんな奔放な女性がいたか〜?いや、いたにせよ、 それだけで充分なストーリー性があるのだから、ココでこんな強烈なキャラの組長に その役をやらせなくてもいいんじゃないか? もっと学年が下の子にやらせたほうが調和が取れたと思うのだけど。
とにかく・・・どこから声を出してるのか、「和実さん・・・。」と甘えた声できりやんを呼び、 パリ、上海と追い続け、挙句の果てには娼婦にまでなって・・・そして殺されてしまう。 そんな・・・か弱い女性・・・だから無理だって・・・ゆらさんには・・・。 はいからさんヨロシクのスタイルだって・・・ごめんなさい・・・だって。 もっとゆらさんにぴーったりの役があったでしょう・・・きっと。
磯野さん・・・オリバー・・・ナチスの幹部。 カッコよすぎ・・・。怖すぎ・・・。似合いすぎ・・・。
青樹泉さん・・・紫水梗華・・・まことさん・・・ナチスの隊員。 こちらも制服似合いすぎ・・・迫力あり。 ただ、最初、まことさん・・・偉そうにウデ組みをしながら、他の隊員に指示をしていたくせに 簡単に銃を取られ、不利な人質状態になってしまう・・・「あらら・・・」な一面も。 でもこの2人・・・妙にウマかった。
真野すがたクン・・・大門・・・和実の部下。 とても軍服が似合い、すらしとしたスタイルにどこか淋しげな面立ちが魅力。 和実に対してとても忠実で、見ていてハラハラするくらいだった。
途中、任務で護衛をしていた溥儀の身を守るシーンがあったけど、 どこかさわやかでそれでいて歯切れよく、見ていてホッとしたし、なぜかうれしかった。
セリフ運びもさわやかで、「丁寧にセリフを言う人だなぁ。」と思った。 今回の“イチオシさん”かもしれない。
楠恵華氏・・・城咲さんの恋人。 さわやかすぎる・・・“白”すぎる・・・。 のぞみちゃんのそんな役は想像できなさ過ぎる。 ひたすら一途にジョセフィーヌを想い、和実から遠ざけるため、哀しいウソをつく。 なのに最後には「彼のところへ行くんだ。」なんて言って、飛行機の切符をあげてしまう。 「は〜? 許しちゃうわけ? 決闘とかしないの?」みたいな・・・ 少し物足りなさを感じたりしたけど・・・まあ、ナチュラルなタイプののぞみちゃんもいいか・・・ とヴィジュアルを楽しんでしまった。
ケビンの恋人ミーナを想い続ける学生・・・嘉月さん。 「なぜ?」と思ってしまうようなシーンが多々あった。 嘉月さんが演じているから、ここまでできたんだろうなぁ・・・と思うけど どうも脚本的に人物設定が浅すぎて・・・「なんでやねん!?」と思ってしまった。
ジョセフィーヌ・・・城咲さん。 まあ、令嬢・・・というよりも未亡人といった感じの雰囲気のある人。 声がキレイ。貴族の令嬢というにはありあまるほどのなまめかしさがある。 父の死と待ちくたびれた恋人・・・に絶望を感じ、和実に「殺して」と言ったかと思うと 次にはとても楽しそうに和実とデートをしている・・・という またまたこれも展開が早すぎて・・・。
和実から「あなたのお父さんを殺したのはボクだ。」と打ち明けられて 彼を恨み・・・でも想い焦がれてしまう・・・という“心の葛藤”に揺れ、 あげくの果てに突然帰ってきた恋人と・・・半ば投げやりな感じでよりを戻し、 言われるがままにアメリカに行ってしまう・・・という・・・ なんとなく「わからないでもないなぁ・・・。」という女性だった。
城咲さんはとてもしっとりと・・・静かな情熱を抱いた女性を演じていて 「トップ娘役・・・というよりもかつて各組いたなんでもできる女役になればいいなぁ。」と思ってしまった。
きりやん・・・遠藤和実。 まさしく“時代に翻弄された哀しい人生を送った青年”という感じ。 婚約者に裏切られ、異国でアヤマチを犯し、そして恋に落ち、 野望に巻き込まれ、そのあげくに失明までしてしまう。
きりやんが歌う主題歌は心地よかった。 見ていてはがゆいところもあったり、切ないところもあったり・・・。 友情と恋と・・・絶対逆らうことができない任務の間で揺れ動く。 なんともいえない“哀しさ”があった。
脚本的にもっと“遠藤和実”を掘り下げて書き込んでほしかった。
ジョセフィーヌが和実に渡した豪華な首飾り・・・。 豪華なだけかと思っていたら、川島芳子が狂気のごとく、欲しがった“ブルーダイヤ”という・・・なんでもこのダイヤと“エメラルドタブレット”とかいう2つの宝石をヒトツにすると世界が手に入る・・・なんていう野望を抱く、エライ首飾りで そのおかげでヒト波乱もフタ波乱も起きてしまう。
ブルーダイヤ・・・と言えば、洗剤しか思い出せない。 今なら“きよし君人形”がもらえるんだっけ? 金銀パールプレゼント・・・だっけ? そんなことを「ブルーダイヤ」というセリフを聞くたびに思った。 まったく気・・・散りすぎ。
・・・・・・全体的にあまり印象に残らない作品だった。 ただ、出演者ヒトリヒトリ・・・が印象的だった。 その彼らが結びついて・・・・というイメージがあまりないのが残念。
齋藤先生・・・ナチスが好きなのねぇ・・・。 フクザツな人間関係が好きなのねぇ・・・。 恋ゆえに狂気じみた女性が好きなのねぇ・・・。 いいです・・・もうおなかいっぱいです。 登場人物は多くてもいいのでもっとちゃんとそれぞれの人物がはっきりした設定で ぜひ・・・書いてほしいと思います。 そしてたまには違うパターンの作品をお願いします。
『花吹雪』しかり『血と砂』しかり『ヴィンター』『巌流』しかり・・・。 今回はラストに少し救いがあったからまだマシだったけど。
そして何よりも時代設定や今までのストーリーを全く無視したフィナーレのショー。 余韻っていうものはないのか?・・・と少しガッカリした。 楽しいショーはいいけど、今回はもう少し抑えてほしかった。
・・・・・・あんなこんなで不完全燃焼の感が否めない作品だった。 けど、出演者に対して全く悪意もないので暴言・・・お許しください。
|