- 2008年03月01日(土) 前の記事のつづきです。
……つづき!
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▼イスラエルとの暗闘
イスラエルはイギリスから、議員への圧力のかけ方、軍事産業との結託の仕方、マスコミの操作術など、アメリカを牛耳るノウハウを提供され、数年で米政界に食い込み、1980年に当選したレーガン政権に政策立案者としてイスラエル系の勢力(のちのネオコン)が数多く入り込んだ。
アメリカの世界戦略をめぐる資本家とイギリスの暗闘は、資本家とイスラエルの暗闘に変質した。以前の記事( http://tanakanews.com/f0622israel.htm )に書いたように、もともとイスラエルの建国をめぐっては、ロスチャイルドなど資本家ユダヤ勢力と、活動家ユダヤ勢力(シオニスト)との間に暗闘があったが、その暗闘は数十年後にアメリカで再発した。
資本家の側は、必要以上に過激なシオニスト右派勢力をアメリカで構成して1970年代後半以降イスラエルの入植地に送り込み、イスラム側とのいかなる和平も許さない過度な強硬姿勢をイスラエルに植え付け、イスラエルが好戦的にやりすぎて自滅していく方向に誘導した。
http://tanakanews.com/f0705israel.htm
イスラエルの代理をつとめるふりをして実は資本家の代理というスパイ的な勢力は、イスラエル側の入植者(リクード右派)だけでなく、米側のネオコンも同様だった。ネオコンが入り込んだレーガン政権は、ソ連のゴルバチョフと談合して冷戦を終わらせ、ドイツを統合するという、イギリスの世界戦略を潰す大事業を挙行した。
また、レーガンは2期目の最後の1988年、アラファトを亡命先のチュニジアからパレスチナに呼び戻し、パレスチナ国家の建設に道を開いた(任期最後の年にやることでイスラエルの妨害を避けた)。1993年のオスロ合意につながるこの動きは表向き、パレスチナ問題を解決してイスラエルの安定に貢献する戦略とされたが、実際には、パレスチナ国家の創設後、ゲリラが出てきて以前より有利な位置からイスラエルを砲撃する可能性があった。
イスラエルはアメリカに引っかけられて潰される懸念があると気づき、いったんオスロ合意で結んだ和平を、その後破棄した。和平を破棄したことで、イスラエルでは右派(入植者)の政治力が強まったが、右派もイスラエルを潰そうとする米資本家が送り込んだスパイだったことは、すでに述べたとおりだ。
▼テロ戦争で巻き返そうとした英イスラエル
冷戦終結は資本家の勝利だったが、その後、イギリスが反乱してこないよう、冷戦終結と並行して起きた第2次グローバリゼーションで、アメリカだけでなくイギリスも大儲けできる金融システムが採用され、ロンドンはニューヨークと並ぶ世界金融の中心となった。だが1997年のアジア発の国際通貨危機は、米英中心の金融覇権が永続しないことを感じさせた。
(通貨危機の際、IMFが東南アジアや中南米諸国に過度に厳しい借金取り戦略を採り、反米感情を煽った行為には、隠れ多極主義の臭いがする)
その後イギリスは、イスラム側と戦うイスラエルや、軍事予算増を求める米の軍産複合体ともに「第2冷戦」的なイスラム過激派との永続的テロ戦争を画策した。アメリカでは99年ごろから「近いうちにイスラム教徒によるテロがある」と喧伝され、01年の911でそれが現実化した。この前後、マスコミを使ってイスラム側を極悪に描く、イギリスお得意の善悪操作術が展開された。
マスコミ制御を英イスラエル側に取られ、議会では反イスラエルの言動も許されないがんじがらめの状況下で、現ブッシュ政権が採った戦略は「英イスラエルの意のままに動きつつ、それを過激にやりすぎることで、英イスラエルの戦略を潰す」という、隠れ多極主義だった(レーガンやニクソンも似た戦略を採っており、ブッシュ政権の発明ではないが)。
ブッシュ政権の隠れ多極主義は今、成功の直前まできている。ブッシュは今年、任期末なので再選努力をする必要もなく、イスラエルに気兼ねせず好き放題ができる。イスラエルは、イスラム側との自滅的な最終戦争にいつ突入してもおかしくない。イスラエル軍が予定しているガザ大侵攻が、大戦争の幕を落としそうだ。
金融界では、連銀のグリーンスパン前議長が先日、アラブ産油国(GCC)にドルペッグ破棄を勧めた。連銀のバーナンキ現議長は「アメリカの不況はひどくなる」と景気に冷水を浴びせる発言を何度も繰り返している。いずれも、金融とドルの覇権の大舞台を支える大黒柱を斧で切り倒そうとする、多極化誘発の言動である。かつてイギリス好みの戦争機関の一部だった米連銀は、今では隠れ多極主義の資本家の手先に成り変わっている。
http://www.reuters.com/articlePrint?articleId=USL2515874520080225
▼イギリスをEUに幽閉する
アメリカが金融崩壊していくと、同じ金融システムに乗っているイギリスも連鎖的に崩壊する。以前の記事( http://tanakanews.com/080115UK.htm )に書いたように、イギリスは今年、金融財政の危機になると予測されている。ス
コットランドでは、イギリスから分離独立を目指す動きも続いており、独立支持の元俳優ショーン・コネリーは最近、77歳の自分が死ぬ前にスコットランドは独立すると発言している。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7261161.stm
米英同盟の崩壊、金融財政危機と国土縮小の末、イギリスはアメリカを操作して世界を間接支配することができなくなり、EUに本格加盟せざるを得なくなるだろうが、EUでは今、リスボン条約などによって、政治統合が着々と進んでいる。独仏はすでに軍事外交の統合で合意しており、イギリスもEUに本格加盟するなら、軍事外交の権限をEU本部に明け渡さねばならない。
これは、イギリスが外交力を駆使してアメリカを牛耳ることを永久に不可能にする。アメリカの資本家から見れば、いまいましいイギリスをEUに永久に幽閉することができる。
イギリスは、EUを牛耳って覇権の謀略を続けようとするかもしれないが、かつて二度もイギリスに引っかけられて潰された上、50年の東西分割の刑に処されたドイツは、もう騙されないだろう。サルコジのフランスも、親英的なふりをしつつ実際には多極化の方に乗る狡猾な戦略を展開している。独仏とも、イギリスの長年の謀略から解放されたいはずである。
アメリカは、イギリスとイスラエルから解放されて国際不干渉主義に戻っていくだろうし、ロシアや中国や中東(GCC+イラン+トルコ)も、米英覇権から抜け、独自の地域覇権の勢力になっていくだろうから、たとえイギリスがEUを牛耳れたとしても大したことはできず、世界は多極化していくだろう。アメリカを好戦的にしていたイギリスとイスラエルが無力化されることで、世界は今より安定した状態になることが期待できる。
-----------------------------------(以上引用)
田中の言う「隠れ多極主義」「多極主義の臭い」というのも、まあみんながみんな本気でそんな目論見を持っているわけではなく、ただ単に目先の仕事をちゃんとやろうとしたらそうなった、ということの方が多いだろう。
とはいえ、「覇権主義」「多極主義」という軸で現代史を切り分けてみる試みは、わたしにとって世界を把握するのにとても便利な概念ではある。
ただし。
忘れてはならないのは、「あれかこれか」の「二元論」に陥ってはいけない、ということ。
世界はアメーバのように、構成する分子(個々人だったりそれぞれの国家だったり)はめいめい勝手な方向に動いていて、たまたまその中で動きが多い方(その場でトクな方?)に全体がちょこっと移動する、というタイプのものだと思う。
はっきり言って、わたしたち個人が思うほど、「社会」とか「世界」って、頭良くはないのではないか。