磁石になった夜 2005年08月14日(日)
夏休みのちょうど真ん中の週末、夏実の友達家族と一緒に九十九里へ行きました。昼間は海で泳いで、夜は海辺のコテージで一泊です。 夕食の後、二家族で酒盛りをし、さて寝ようかという段になったら、夏実は友達の方のコテージで寝たいと言い出しました。そんなの、もちろんOKに決まってます。 夏実の夏休みが始まってからというもの、夫婦水入らずの時間が持てずに、本当に苦悩の日々でした。このまま夏休みが終わるまで、禁欲の日々かと覚悟を決めかけていた矢先、突然訪れた神様のご褒美のような時間でした。 言葉には出さなくても、夫婦の気持ちはひとつです。僕はさっきまで開けっ放しだった窓を閉め、エアコンを入れました。秋菜は玄関の鍵を閉めるだけでなく、しっかりチェーンロックまでかけています。 長い間ご無沙汰だった僕たちの体は、いつの間にか強力な磁力を帯びていたようです。部屋の明かりを消し布団に入ると、二人のN極とS極はたちまちバチンとくっつきました。 ぴったりくっついて幸せにひたる僕たちでしたが、こういう神様からのご褒美には、たいていいつも試練がついてまわるものです。今回のそれは、コテージの遮音性がひどく悪いということでした。ちょっとした声でも、隣に筒抜けなのです。つまり秋菜は自らの願望と引き換えに声を奪われるという、人魚姫のような罰を受ける羽目になってしまったのです。 快感の発露としての喘ぎ声を必死に押し殺す秋菜。その苦悩を楽しむように、ありったけのテクを駆使する僕。海辺のコテージという非日常空間で繰り広げられる夫婦の営みは、いつになくサディスティックでストイックなものとなりました。 やがて、秋菜の中で規則正しいピストン運動を繰り返す僕の棒磁石。溜まりに溜まった磁力のせいで、発電量もいつもより多めです。最後に、白いスパークを秋菜の中に発射して、二人の夏の夜の狂宴は終わりました。 気がつけば、部屋の中にまで潮騒の音が聞こえます。寄せては返す波の音が、やがて秋菜の寝息と重なり合うとき、九十九里の夜は静かに更けていきました。
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