文ツヅリ
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2005年02月11日(金)
★[ 06.真夜中]
 ひそりと足を忍ばせた。
 寝静まった頓所内。
 
 多少踏み付けたくらいで起きるような過敏な男がここに居るとは思えないが、やはり気が引けるので、足先でまさぐるように人を避けて通った。
 障子を開けると、夜の冷えた風が顔の横を擦り抜けていくので、こちらも気付かれない内に素早く閉めた。
 ゆるゆると不規則に髪を掠う夜風は心地良く。
 なるべく床を軋ませないよう庭に向かった。

 裸足のまま降りてみる。ひや、と冷えた地面が足の裏をくすぐった。
 と、庭がやけに明るいので、空をつと見上げる。
 なるほど、一面に広がる漆黒に、白く冴え冴えとした月がふっくり肥えている。満月だろうか。
 その周りにたゆたうは薄衣のような雲。ゆらゆらと丸を蝕んでいく。

 掌を翳した。
 月の燐光が、五つの指を淡く縁取った。
 そして、ゆっくりと手を差し出す。
 届かないとわかっていても、つい手を伸ばしてしまう愚かしさに自嘲しながら。
 手の内に月を閉じ込めて、どこか手に入れた気になって、握りしめれば空気が逃げるだけ。
 そんな無意味な行為を何度繰り返したことか。
 光はただ静かに降りゆくばかり。
 風は一瞬にして体温を掠う。
 袷の胸元をかき寄せても、隙間から入るそれは体中の表面を撫でては遠くへ。
 いつか指を動かすことさえ億劫になっていく。
 完全に足は捕われていた。

 ──ザワ、ザザ

 草が互いに擦れ合う音は不穏な心の音と重なっていた。鮮明でない視界の歪みに溶け込んでしまったそれは姿を見せないまま、神経を逆なで続けた。

 ──ザワ、ザザ、ザザ

 四方八方から、まるで狙われているようだ。ぐるぐると、囲まれでもしたかのようにそこら中から大小の音がする。
 ぐるぐる、その場でただ足を踊らせている。酷く滑稽であることは解っている、しかしただそうすることしかできなかった。
 逃げ場など何処にある?

 ──ザワ、ザザ、ザザ
 ──ザワ、ザザ、ザザ

 ああ、それだけじゃない。雲だ。雲が同じリズムで迫っている!

 ──ザワ、ザザ、ザザ
 ──ザワ、ザザ、ザザ
 ──ザワ、ザザ、ザザ



 ザッ、




 ゆらり、雲が流れて。


 月が、流れた。




<暗転>





×‐‐‐‐‐×‐‐‐‐‐×

で? みたいな。
最近なに書いてもこんなカンジになるんですよー。前回然り。
早く普通のお話が書きたいなー。
エグいくらい甘い沖土でも書こうかな。笑

これ土→近でもいける、ってか寧ろそっち?;



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