日々雑感
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2005年05月16日(月)

バイトが思いがけず早く終わったので、まだ明るいうちから銭湯に出かけた。サンダルをぺたぺたいわせながら、湯上りで夕方の町を歩く。木の高いところが風に揺れている。

角の店の前では、お店のおじさんが通りがかりのお客さんと立ち話をしている。「昨日の雨はほんとひどかったね」「でも虹出たでしょ」「出た出た」。ついさっき、銭湯の脱衣所でも同じようなことを聞いていた。「昨日、すごかったね。雷も鳴ってね」「でも虹出たでしょ」「そうそう、息子が言うんで、みんなで外出たら、虹出てたのよ」。

どんなにひどい雨でも、びしょ濡れになっても、「でも、虹出たでしょ」、それだけで十分なのだ。虹、見たかった。

しばらくゆくと、耳鼻科の入り口の前にて、小さな女の子がお父さんにしがみついて大声で泣いている。真っ赤な顔に、大粒の涙がぼろぼろとこぼれてゆくところまで見える。お父さんは女の子を抱きかかえて、一生懸命に話しかける。「先生に、痛くしないようにしてくださいって言ってあげるから!」

「痛いの痛いの、とんでけ」というあの言葉を、そういえばずいぶん聞いていないし、口にもしていない。いつの間にか、痛みは自分ひとりで我慢するものになったけれども、「痛くしないようにしてください」と言ってくれる人がそばにいたら、どんなにいいだろうかとも思う。

夕方は人の声が近い。


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