日々雑感
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2006年02月05日(日)

先週の出来事。

友人より、いきなりのメールあり。中学の担任であった先生が地元の写真コンテストで金賞をとったという。

担任だった頃から、先生といえばカメラだった。愛用のニコンを手に、何かあってもなくても、生徒たちの写真を撮っていた。授業風景、休み時間のあれこれ、クラス全員で雪の積もった校庭に繰り出しては一人ずつポーズをつけて撮影会をしたり、その他にも、休日には散歩や遠出をして写真を撮っていたらしい。

やがて先生は他の中学に転任し、私たちは卒業、東京へ出たり、地元へ戻ったり、それぞれにいろんなことが起こる中で、連絡はとりながらも先生と実際に会うことはほとんどなかった。

昨年、定年を迎えた先生と東京で久々に会ったとき、「喋ればごしゃがれる(怒られる)」から奥さんには内緒だと言って、買ったばかりという念願の新しいカメラを嬉しそうに取り出し、私たちの写真を撮ってくれた。この正月に地元の居酒屋で新年会をした際にも、最近撮ったという写真を何枚も持ってきては、どれがよいかとか、これはどうだとか尋ね、いっぱしの批評家きどりで好き勝手を言う私たちの言葉を神妙に頷きながら聞いていた。

先生はずっと、カメラを手放さなかったのだ。

メールが届いたちょうどその日、やはり中学時代同じクラスであったもう一人の友人が上京、我が家に来ていたのだが、彼女もこの知らせに大興奮。思わず二人して秋田まで電話をかける。お祝い電話殺到中なのか、何度目かにしてやっと繋がった。先生、照れくさそうに「なして分がった」と笑う。その後、最初に報告メールを送ってくれた近所に住む友人も呼び出し、3人して遠く秋田に向かって祝杯をあげた。

他の人が目新しいものに手を出したり、楽なほう、キラキラしたほうに流されたり、とりあえずの日々に安住したり、あるいは名をあげようと猛進したり、そうしたことをしている間も、自分にとって大事なものを見失わず、ぶれることなく、一歩ずつ確かに歩いてゆく。そして、ふと気がつくと、誰も見たことがないような所に立っていたりする。

こうした「ウサギとカメ」、あるいは「急がば回れ」話は数あれど、このニュースはしみじみと嬉しかった。ちなみに、今回のコンテストのテーマは「心和む風景」。先生の持つ眼差しにはぴったりだったと思う。

私が愛してやまない佐々木昭一郎ドラマに出てくる、イタリアの諺が思い出されます。

"chi va piano va lontano"

「静かに行く人は遠くまで行く」


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