私が今の職業に就いたのは、今から約4年前。 学生時代からの、憧れの仕事だった。 文字通り狭き門に、奇跡みたいな確立で潜り込み。 人生の嬉しかったことランキングを考えたとしたら、 間違いなくベスト3には入ると思う。
半ば、夢を叶えたように感じていた。
1つ1つが新鮮で、見るもの、触れるもの、すべてが楽しかった。 月の半分、電車で帰れなくても、業界以外の友達が離れていっても、 毎日コンビニのお弁当ばかりでも、休みが1カ月に3回しかなくても。 それでも満足だった。はずだった。
目の前をよこぎる様々なものを、本能のおもむくまま、 ものすごいスピードで追いかけてるうちに、 何を探しているのかが分からなくなってしまっていた。 嬉しいとか、楽しいとか、そんな感情は置き去りで、 仕事に役立つものばかりを探して集めていた。 ふと立ち止まった時、私は自分が何をやりたいのかが、 すっかり分からない人間になっていたのだ。 肝心な何かが、ぽこりと抜け落ちてしまったように。
“好き”のその先にあるものを、考えた事がありますか? それが限界だったり、失望だったりした時、あなたならどうしますか? 好きな仕事で羨ましい? そんな簡単に言わないで。
深い森に迷い込んでしまったみたいだ。 それでも今、生来怠け者の自分の尻を叩きながら、 立ちあがって歩き出そうとしているのは、 みんな、みんな、ダーリンのおかげだったりする。 最初は彼の言葉さえ、信じられなかった。 頑張れ、と励ましてくれるダーリンに、 「私は頑張ってるよ。いつだって一生懸命やってきたつもりだよ。 なのにまだ頑張れって言うの? それともまだ頑張ってないって言うの!」 そう泣き叫んで困らせたことがある。
ダーリンは、いつも言う。 「蝶ちゃんが会社を辞めても構わない。 だけど、その職業を捨てることだけは許さないよ」と。 それは、とても窮屈な言葉なのだけど、 だからこそ私は、かつて夢だった場所に留まっていられる。 「最初のころ、俺に何て言ったか覚えてる? “表現する事を止めたら、私、死んでしまう”って」 とっても恥ずかしくって、ちょっとくすぐったい。 夢を手に入れたばかりの私。
この1年間、ずうっと考えてきたよ。 いっそのこと逃げてしまえばラクになれるって何度も思った。 だけど、捨てられない。 どうしても、捨てられないんだ。 自信も、何をどうすればいいかも未だに分からないけれど、 “好き”ってだけじゃ、やっぱり駄目かなあ。 私を助けてくれた、沢山のモノに恩返しがしたい。 私が助けられたように、誰かを救ってあげたい。 ただ、それだけじゃ、駄目かなあ。
私、もうちょっと頑張ってみる。 ダーリンをガッカリさせないために。 そして何よりも、私自身をもう一度信じてみるために。 頑張ってみる。 うん。今決めた。
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