世間は三連休。 あたしはこの日は仕事で、残り2日で連休をとっていた。 少しだけの期待を込めて。
でも、その期待も水曜日のメールでなくなった。
「土日の休みさえ危ういよ。」
そか。そうなのか。
夕方の休憩に煙草を吸っていると、携帯にメールが届いた。
え?
「…終わった。」
ん?
「それは明日はお休みということですか?」
「そうです。」
「あたしはどうしたら?」
「さあ?」
…相変らずだね。
逢いたいと思っていた。ずっと。
一昨年の11月、最後に後ろ姿を見送ってから、あたしは彼の姿を見ていない。 何度か電話で話したきりだ。
倒れたんだ。病気になったんだよ。大変だよ。
嘘じゃないかと思った。 本当は逢いたくないから、そういうのかもしれないと、心のどこかで思っていた。 どちらにしろ、あたしは確認しなければならない気がしていた。 自分の事。彼の事。
生憎、仕事はラストまでで、しかも彼は車を修理に出しているらしい。 どう考えても、最終の新幹線にも間に合わない。
「じゃぁ、名古屋で。」
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仕事を終えて、いったん家に戻って支度をする。 彼に逢う為に新幹線に乗るのは、どれくらいぶりだろう。 不思議と嬉しい気持ちは沸かなかった。 自分で決着をつけなければ、あたしは前に進めない。
新大阪21時58分発。 のぞみに乗ると、名古屋までは1時間足らず。 彼はもう下りの新幹線に乗っているんだろう。
あなたは何を考えているの?
名古屋駅近くのビジネスホテルの予約を入れたらしい。 少し前に着いた彼は、居酒屋に居るらしい。
22時49分。のぞみ54号、名古屋駅着。
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新幹線口を出てすぐの居酒屋に彼は居た。 さんまの刺身とエイのひれと、枝豆と、そしてビール。
…別人のように痩せている。
そんなでもないよと、笑う彼を正視出来ない。 あたしの知ってるmasayaとは違う人みたいだ。
あ、あたし。緊張している。すごく。
飲まないカクテルを2杯飲んで、少しだけ食べ物を食べて 日付が変わる頃に、ホテルへ移動する。
手を繋いだ。 あたしは左手で、彼の右手を取る。 ポケットに入っていた右手が、自然に外に出た。
柔らかい、指。 そして、細い。 この人はこんな指をしていたのかしら? 曖昧な記憶がもどかしくて、少しだけ泣きたくなる。
あたしはこの1年10ヶ月の、彼の変化を全然しらない。 彼もあたしの1年10ヶ月を知らない。 それが現実。
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