即興詩置き場。

2004年10月13日(水) 脂喰坊主 と


脂喰坊主 と



脂喰坊主は地下鉄の端で
ホームに顔を突き出して遊んでいる
駅員が慌てて止めるが
大丈夫
脂喰坊主は死なない
脂喰坊主はバツの悪い顔で笑う
それから
目を閉じてかっきり一秒
舌を出す

  油は嫌いだ。
  脂は喰うが、油は嫌いだ。

脂喰坊主は懐から油取り紙を取り出して
額を拭きまくる
脂喰坊主のくせにと言うと
脂喰坊主だからだよと
バツの悪い顔で笑う

  坊主も嫌いだ。
  坊主は喰わない。
  坊主の脂は喰ったことがない。

賭殺場の近くで念仏をあげる脂喰坊主
ラードを少し分けてもらう
坊主になんかなりたくなかったような顔で
ラードを少し舐める
脂喰坊主は死なない
死ぬことができない
それから
バツの悪い顔で笑う
そのあと必ず
目を閉じてかっきり一秒
舌を出す
舌はいつも
ねっとりしている




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