即興詩置き場。

2005年06月24日(金) 塔の上でワルツを踊る



雲はかすかに薄い。満月はわずかに遠い。星
たちは月の輝く姿に目を細め身を寄せ合いな
がらその眩しさを囁く。塔の下ではいくつか
の波が押し寄せる。浸食は彼方の記憶。崩壊
は遥かな追憶。廻る者と廻られる者は対とな
って塔の上でワルツを踊る。

完全な輪廻。不確かな手触り。塔の中では忘
れられた者たちの忘れられた祝宴が繰り広げ
られ、忘れられた約束が生まれている。海峡
は水平線の彼方。水平線は闇の彼方。月の恩
恵も懲戒もそこにはない。届かない。新たな
契約は陰暦の隙間で交わされている。

もうすぐ凪が来る。終焉はわずかに遠い。塔
の機能は停止に向かい直進するが、塔の成長
はそれよりも速く直進する。塔の上でワルツ
を踊る。塔の上でワルツを踊る。対となる者
はそれぞれの境界を越え、嗚咽もなく絶滅へ
向かう。不確かな手触りを元にお互いを確認
し合う行為の危うさ。凪が来る。凪が来た。
塔は満月に突き刺さる。塔は先端から崩れ落
ちる。塔の崩壊は根元からではなく先端から
始まり、魅惑的な直進は塔の崩壊によって停
止する。そして、完全な輪廻。星たちは囁き
ながら、ワルツの痕跡を見下ろす。



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