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2004年02月10日(火) 生きてる限り。

●仕事が終わったら。 
 仕事するだけでも大変なのに、大先輩で大酒豪な女優に誘われたりするわけだ。
 で、同席するのは地元のやくざだったりするわけで、わたしのいつもの仕事後の穏やかな時間はどこへやら。
 いまだかつて食べたことのないような旨い牛肉のしゃぶしゃぶを食べながら、先輩とやくざの思い出話を聞く。これが、どうにもこうにも可愛らしくってウブで、実に人間的で……。

 生き続けるってことは、なんだか複雑かつ面白い。さんざんに酔っぱらいながら、とりあえず、そのことを書いて寝よう。

 人間は、生きてる限り、面白い。そしてわたしも、その一人だ。


2004年02月09日(月) 半日の自由時間。

●久々の一回公演。ホテルに帰り着いたら眠くって眠くって、1時間宵の口の眠りを貪る。こういうとき、きれいにベッドメークされた、生活感がない部屋って、いい。浅い眠りの中で、すぐに忘れるような夢をうつらうつら見ながら、気持ちいいなあと感じつつの眠り。
 起きあがって、外に出て、美味しいと評判を聞いていたうどん屋で、女ひとりの外食。それから、新しい本を読み始めたり、昨日読み終わった本の感想を書いたりなんぞして、だらだらと過ごす。……半日だけでもずいぶん気分の転換がはかれる。1ヶ月ぶりの完全OFFは3日後だ。映画でも観ようかな。

●まとまったギャラが入ったものだから、なんだかお金を使いたくってうずうずしている。ついぞ持ったことのないビデオカメラが欲しかったり、調子の悪いメビウスに変わるウインドウズが欲しかったり、高級エスプレッソメーカーが欲しかったり、新しいベッドが欲しかったり、もう、買い物したくてしたくって。でも、一度火がついてしまうと後に引きそうなので、今は自粛。

尤も、いちばん欲しいのは、まとまった休日とパリへのエアチケット。チケットはお金で買えても、休日はね……。
3日あれば、なんとか行ける。飛行機に乗って、半日逢って、それでまた飛行機に乗って……そんな旅にでもポンとお金が出せるように、もうしばらく倹約生活して暮らそうか……?


※Book Review に「神も仏もありませぬ」をup。


2004年02月08日(日) 一生懸命。ただひたすらに。●神も仏もありませぬ(佐野洋子)

●仕事上、問題多く、悩めること多く、毎日が真剣勝負。わたしは今のところ、仕事のことしか考えてない。人生にそれしかない。余裕、まったくなし。

●佐野洋子さんのエッセイを読む。65歳の彼女が、死を当然のごとくいつかやってくるものとして、「いつ来てもいいけど、でも、今日じゃなくってもいい」と、書きつづる、人生の美しさ。我が心、仕事の合間に、ぶれまくる。

●仕事の上で整理しきれなくってやりきれない思いをぶつけるために、20年来の友人である出演者を誘って飲む。思いっきり建設的な話が4時間続く。
 恋人は、その間に、電話をかけてくれていたらしい。すれ違いを哀しく思いつつ、次に話せる時間を夢見る。
 わたしがここで生きていて、彼がパリでやっぱり懸命に生きていて……それだけで、とりあえず、わたしは、いい。奥さんがいようがいまいが、もうどうでもよくなってきた。
 ただただ、彼のいない人生より、彼のいる人生の方が輝いているという、その事実だけ忘れずにいよう。あとは、もう、なるようになれ。


2004年02月07日(土) モスクワへ、モスクワへ、モスクワへ!●王国その2(よしもとばなな)

●一昨年の秋、モスクワ旅行に発つ前に、わたしはネットで知ったモスクワ在住の見ず知らずの女性に連絡を取った。わたしにしては、実に実に珍しいことだった。
 彼女はモスクワの劇場とモスクワの演劇を紹介するメールマガジンを発行していて、それがなんとも面白かったのだ。内容も、文章が想像させる彼女の人柄も、わたしを惹きつけた。
 もうすぐモスクワに芝居を見に行くので、その期間の演劇事情を紹介してほしいとのメールを送ってみたら、丁寧な返信があった。わたしはそれを頼りに、現地での観劇計画を立てて出かけた。
 12日間の旅行中、電話連絡をとって、1日だけ、彼女と行動をともにした。文章から想像していた以上に、明るく、タフで、素朴な彼女との時間はとても楽しかった。その日は、チチェン人による劇場テロのあった翌日で、のんきなわたしの代わりに、日本大使館に「旅行者××は無事である」との連絡をしてくれていた。

 モスクワとモスクワの演劇をこよなく愛する彼女は、昨年の春、卒業とともに日本に帰ったが、どうにもこの国の水に自分をあわせることができず、モスクワ再訪を夢見て暮らしていた。大阪公演の際に再会して飲みに行った折、彼女の顔にはまるで「三人姉妹」のイリーナのように、「モスクワへ、モスクワへ、モスクワへ!」という台詞が貼り付いていた。

●その彼女が、とうとう念願叶ってモスクワへ発った。なんと、テロ当日の昨日のことだ。当然ながら、わたしは一昨年のテロを思い出し、因縁めいたものを感じてしまう。
 どこでいつ読まれるかも知れぬまま、わたしは昨日、すぐに彼女にメールを書き送った。
 そして今日、返事が届いた。
 無事にモスクワにたどり着き、用心して過ごしていること。街は意外と平静であるということ。インターネットカフェから書いており、日本語フォントは読み取れないので、受け取ったメールの内容を想像して書いているということ。そして、メールをくれたことに感謝しているということ。それらが英文で綴られていた。
 簡単な文章だったが、悲惨な事故のただ中で到着したと思えぬ、ウキウキした感じと、相変わらずのタフな感じが同居していた。

●自分の場所と出会い、何にも屈せず自分の場所で暮らそうとする彼女が、わたしはとても好きだ。わたしは、ちゃんと自分の場所にいるかしら?と自問しつつ、彼女の無事で幸福な暮らしを願う。

彼女のサイトはこちら


 


2004年02月06日(金) そして人生は続く。●王国その1 アンドロメダハイツ(よしもとばなな)

●また起こってしまった。モスクワのテロ。
 今のところ、カフカス系の男性が「祭りが起こるぞ」と駅員に言ったこぐらいしか犯人像を知る術がないようだが、何を契機のことにしろ、無作為な殺人には、そのたび胸を痛めるしかない。

●よしもとばななの新作が出たので、まず未読の第一巻を読んだ。昨夜、まさに一気読み。
 暗く辛いことの多い時代に、人の心の闇ばかりが目立つ時代に、美しく優しいものを、敢えて描き続ける姿勢に、わたしは共感する。
 心がきしんでいた時だったので、胸がぐっと熱くなった。今夜は、新刊の第2巻を読もう。

●現在の主演俳優は、とにかくきまじめな人。
「あそこのあの芝居が……」と、帰りに楽屋に寄ったら、今日も明日もマチソワだというのに、1時間近く話し込んでしまった。
 彼は、自分が演じている役、自分が演じている人間を、観客に信じてもらうためには、自分の感情、自分の表現に、一点の曇りがあっても許せないのだ。
 わたしはルーティンワークどころか、再演ものゆえ何百回と見てきた芝居を、一回一回真剣勝負で見なければ太刀打ちできない。
 飽きたり慣れたり、新味を求めることが常の人間にとって、それは実に実に大変なことだ。いやはやまったく、ほっとすることのなかなかない生活ではある。


2004年02月05日(木) 傷ついて。

●わたしはやるべきことを短い時間でやり遂げ、初日は開いた。自分も、まわりも、いい仕事をしたとと認める時間を過ごした。後輩とレストランに行って、シャンパンで乾杯もした。そして、作品を守り続けるというルーティンワークが始まる。

●始まったばかりだというのに、いきなり哀しい事件が起こった。
 人の心の暗いところが、ちょっとしたいたずらを起こし、それがたくさんの人間に波及し、怒号が飛び交った。暗い心を持つ当事者と、それを囲むたくさんの人間を同時に守るべき立場にあるわたしは、事件の矢面に立ち、もう心がぼろぼろに疲れてしまった。
 ようやく事件は収束し、水面下にはまだ泡立ちが認められるものの、水面は静かになった。
 
 不出来な自分を知りつつ……それでも、なんとか……どんなに正しくいようとしても、どんなに誠実でいようとしても、どんなに愛しても、わたしを裏切り、消耗させる世界に、すっかり傷ついてしまった。

 少し立ち直った今日、わずかな自由時間で、ゆっくりお茶を飲みながら、ゆっくり風呂に浸かりながら、ゆっくりストレッチをして体をほぐしながら、自分を慰めている。
 PCの小さなスピーカーから流れてくる音楽を聞きながら、こうして書く気にもなった。

 誰かにひたすらしがみついて、繋がりたい気分だ。
 その誰かは、恋人でしかありえないと知っていても、彼はそばにいない。
 だから、とりあえず、誰か、と、書く。


2004年01月31日(土) 頼もしい自分。

●幸せなことに、今日は、自分を頼もしく思う1日だった。すべて段取りよく好調に進み、どこにもしわ寄せがいかず、文句を言う人もおらず、100人余をしきった自分を、今日は誉めてやりたい気分。

 体は肉体も頭脳も、心地よい疲労。2時終了予定だったところが12時に終わり、ほっとしつつ、明日の鋭気を養っている。明日もまた大事な1日。元気にでかけよう。


2004年01月30日(金) 興奮冷めやらず。

●午前3時まで仕事をして、3時半、ホテルにたどり着いたが、仕事の興奮が体と心に残っていて、とてもすぐには眠れそうにない。ビールを飲んでしばしクールダウンしなければ。
 明日は、わたしの仕事ぶりが全体の運命を左右するリハーサル。どこまで立派にやれるかな、と、自分の明日を不安にも頼もしくも思う。


2004年01月29日(木) 姉たるわたし。

●自分がアシスタントとして長く働いてきたので、その自分がアシストされる身になると、有り難さが本当に身にしみる。
 考えるだけ考え、判断するだけ判断すると、、それを伝達したり事務処理したりという雑務はあっという間にこなしてくれる。疲れた顔をしていたら、「何か飲み物持ってきましょうか?」と気遣いしてくれる。わたしに尽くしたって、何の現実的な得もないはずなのに、一緒に働くのが嬉しいと言ってくれる。いやはや、こんな幸せもあるのだなあ。
 ひたすらに頑張らねばなあ。ひたすらに人間らしく。妹たちのあるべき姉として。

●今日は11時に仕事が終わったので、妹たちを連れてちょっと飲みにいく。なんと、酒飲みのわたしが、今年はじめての酒である。彼らの現在の悩みを聞いている時間は少しも惜しくなく、幾ら奢ってあげてもいいって感じ。そう言えば、わたしは若い頃から、「姉」という立場になることが多かったなあと、つくづく思う。自分でも支えきれない自分を支えるための力を、「姉」としておおらかにかつ気丈にふるまうモードから、得ているのだろうか?

●明日から深夜作業開始。3日間は、まともに眠れない日々がつづくだろう。ハイテンションで、明るく、いい仕事をするぞ。


2004年01月28日(水) ホテル暮らし。

●年末のパリ行きで散財し、倹約生活を続けているわたしは、スーツケースを転がしながらラッシュの電車へ。これが大失敗。満員の車内、回りの人に睨まれて小さくなりながら品川駅へ。やっぱり、タクシーに乗るべきだったのだ。いい歳なのだから、状況に応じた行動をとるべきだった。おかげで新幹線に乗るまでにすっかり疲れてしまう。

●劇場に到着し、明日からの作業に備える。わたしの助手になってくれている二人の女の子と、1日、和やかに仕事。嵐の前の静けさといったところか。

●ホテルは、小振りなツインのシングルユース。もうすぐキッチンのついたダブルが空くというので、完全に荷解きをせずに、コンピュータと本だけテーブルに出す。ホテル暮らしは、不便だが、ストイックになれるので、1ヶ月くらいなら十分楽しめる。読んだり、書いたり、静かに過ごそう。


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