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2004年03月14日(日) 鮭、来たる。

●昼1回公演で、4時には仕事から解放されて、我が家へ直帰。4日前から不在届けが入っていて、荷物を受け取りに戻ったのだ。差出人のところには昨秋一緒に仕事した俳優の名前。何だろうなあって思ってたら……

 なんと、北海道から送られてきた新巻鮭。それもかなりでっかい。そう云えば、彼に仕事の参考ビデオを何本か見繕ってあげたら、「今度旅先から何かお礼を送りますよ」って言ってたっけ。すっかり忘れてた……。

 立派な箱を開けてみると、な、な、なんてこと! 4日受け取れなかったからか、自然解凍してしまっている! これはやばい! と、早速おろしてしまうことに。(不在の時間があっても凍ったままにしてくれなきゃ、クール宅急便の意味がないよ、ヤマト運輸さん!)

 一人暮らしの女が新巻鮭を一本貰うってのもなかなか珍しいことなので、さばくのは初めて。立派な鮭だったので、うきうきと初体験。カマを落として、四片に切り分けて、三枚におろして、出来上がり。魚をさばくのって、なかなか気持ちのいいものなのね。
 解凍してしまっているものの、とりあえず、5分の1は冷凍。残りの切り身一切れを焼き、カマは塩抜きしてみそ汁にし、肉のびっちり残った中骨を焼いて、ほぐして、おにぎり用にフレークにして……。2時間くらい、たっぷり料理を楽しむ。カマは意外と食べるところが少なかったけれど、みそ汁の味は抜群。何より、中骨を焼いたのが、香ばしくって実に実に美味しくって。
 でん!とした素材があると、料理って楽しい。恋人がいたら、すぐに呼んで、鮭鍋パーティーとしゃれこみたいところ。今の仕事の友人どもを呼ぼうかとも思ったけれど、部屋を片づけるのが億劫でやめることに。そのうち、でも、やろうかなあ。

●オースターの、まったくもって小説より奇なる事実に、その記述に、魅了されている。彼の小説を、初期作品から全部読み直したくなってしまった。


2004年03月13日(土) 愛すべき女優たち。

●休憩中は、外に本を読みに出るか、主演女優二人とお喋りして過ごすことが多い。今日は後者のパターン。
 一人は今をときめく日本を代表する女優となっているし、一人は売り出し中のフレッシュな女優。二人は姉妹のように仲が良く、日がな一日顔をつきあわせているというのに、休みの日にまで一緒にショッピングに出たりしているらしい。
 彼女たちと、芝居の話をする。飽かず、今の仕事の話をする。自分の心と体で勝負している彼女たちは、真摯この上ない。現場をキープすることだけになっているわたしとは、熱さが違う。彼女たちの話に耳を傾け、アドバイスしながらも、エネルギーを注ぎ込まれることの方が多い。
 彼女たちと、男の話をする。20代と、30代と、40代の女が三人集まって、笑い転げながら話す。時間を忘れて、「あ、もうこんな時間、支度しなきゃ」ってことになる。
 自らの未来将来を夢見ることで生きているような彼女たちは、わたしが忘れそうになっているものを思い出させてくれる、素敵な仲間だ。

●ポール・オースターの新刊エッセイを読み始めた。彼が実際に体験した、実際に聞いた、小説より奇なる事実を集めたもの。それはこれまで読んできた彼の小説にことごとくリンクしており、興味深く、エッセイというよりは短編小説を読んでいるよう。
 野球を題材にした一編を、書き写して恋人に送った。


2004年03月12日(金) アルバムとしての本棚。●デイヴィッド・コパフィールド(5)

●デイヴィッド・コパフィールドを全巻読み終えた。仕事で神経が弱っているときに、丸善で一冊ずつ購入し、ホテルに籠もって読み始めたのだった。今やすっかり精神も安定し、気持ちよく仕事をしている。一つの物語を読む時間の中に、その時々の自分の感情の記憶が織り込められている。
 わたしの場合、読書という行為は、読んだときの自分の状態と大いに関係がある。本棚に並んだ背表紙を眺めているだけで、その時々の自分の記憶がよみがえったりする。
 自分の写真を残すのが好きではないわたしは、記念写真を撮ることがまずなく、友人が一緒に撮った写真をくれたりしても、押し入れにある写真袋(ただのデパートの紙袋!)に投げ込んでしまう。わたしのアルバムは、やっぱり本棚だ。そこに納められた本や映画のパンフレットたちが、自分の過去の記憶を、甘酸っぱくくすぐってくれるのだ。しかしそのアルバムも、このところ本棚の容量不足で、読んだ本をすぐに売ってしまうものだから、成長を止めている。
 だいたい、過去を振り返ることに興味がないのだろう。今が大事だし、何より、先へ先へと進みたい。
 
 デイヴィッド・コパフィールドは、実に面白い物語だった。ゆっくりと感想文など物してみよう

●気温の変化が激しい。今年のわたしは花粉症に苦しめられることがなく絶好調なので、季節の変わり目の揺らぎを楽しむことが出来るが、脳梗塞から立ち直ったプロデューサーは、とても苦しそう。麻痺の治りかけていた手が、硬直してつらいのだそうだ。……長嶋さんは、大丈夫かなあ。
 父親が大の巨人ファンで、長嶋さんと王さんがホームランを打った翌日には、朝の食卓に、4紙くらいのスポーツ新聞が並んでいた。父が早起きして駅で買い求めてくるのだ。父の顔が長嶋さんに似ていることもあって、ずっとずっと、生きるエネルギーを与えてもらってきた。早く元気になって欲しい。きっと遍く日本国民の願いだろうな、これは。


2004年03月11日(木) 春がきた。

●わたしを励ます会という飲み会が催された。
 構成メンバーは、わたしがオーディションで選んだ俳優たちだ。稽古中ずっと続いた役取り合戦で、いい役や台詞をもらった者もあり、敗退した者もあり。それぞれが、自分の現在と闘いつつ、怖いくらいの結束力、気持ち悪いくらいの仲良さで、日々の公演をこなしている。
 わたしが旅公演中にへこんでいたことを何気に察知して、誘ってくれた。

 彼らがどきどきしながらオーディションに臨んだこと、わたしが彼らを選んだこと。そこからすべてが始まっており。稽古でわたしの期待に応えた者、応えることができなかった者、それぞれがそれぞれの事情と心情を抱えながら、わたしを信じ慕ってくれていることが、うれしかった。
 3時間、これでもかと大騒ぎして、笑って、今まで聞くことのなかったぶっちゃけた話をたくさん聞いて、他者と出会う仕事の喜びを実感した。

 看板とのつきあいで人間不信のような状態に陥っていた時も、彼らの視線がわたしに降り注がれていたと思うと、何やら神妙な気持ちになる。彼らがわたしの背中を追いかけていたと思うと、気持ちが引き締まる。
 社会人としての、自覚のようなもの。自分は開かれている場所で、人の視線を浴びながら仕事をしているということの再確認。

 まあ、そんな難しいことを言う前に、実に実に楽しい夜だった。いつもそうなのだけれど、人間とのつきあいで傷ついた時は、人間によって救われている。なんだか、生きてるって感じだな、これは。

●今日、東京には、暖かい、暖かい、風が吹いた。今年はなぜか花粉症の症状が出ないので(酒量が減ったせいか?)、ひたすらに春を感じて心地よかった。
 なんたって春はいい。何もかもが、新しく芽吹いていくじゃないか。
 でも、夏がきたら、夏は最高と思い、秋がきたら秋が好きと思い、冬がきたら冬が心身にしみると思い、生きていけば、面倒な人生でも、そんなにへこみ続けることがないんじゃなかろうか?


2004年03月10日(水) メビウス臍を曲げる。

●新しいPCを買ったら、それでなくても調子の悪かったメビウスがすっかり臍を曲げて(それとも新しいのがやってくるまで待っていてくれていたのか?)、液晶が暗くなったまま戻らなくなってしまった。修理に出すために、最低限のファイルをLavieにコピーする。暗い画面を光にあてて透かし読みしつつの作業。かなり面倒くさい。今日は早くやすみたかったのになあ。

 思えば、37歳までワープロユーザーだった。シャープの書院を15年以上使い続けていた。恋人に勧められてパソコンに乗り換えたものの、時折、あの何にも芸のないワープロが懐かしくなる。言葉を打ち込んでいくことしか能のないワープロが。
 確かにパソコンを使うようになって、自分がいる「ここ」から居ながらにして動き出せるし、「ここ」にいるのに様々な情報を得ることが出来る。でも、ワープロを立ち上げていたときの、自分だけの世界への偏執は、薄まってしまったように思う。
 携帯だって同じこと。便利なもので失っていくことは多い。

●恋人が誕生日を迎えた。遠くにいながら、その幸せを祈ろう。


2004年03月09日(火) しばしの安定。

休演日。確定申告を何とか終えて、帰り道。目に飛び込んでくるのは終わりかけの梅の花。わたしはあの花たちの、濃い紅色に染まった萼と、花びらの薄桃色と、おしべの黄色のコントラストが好きだ。カメラを持っていないのを悔しがりながら、滅多に使わない携帯のカメラを持ち出して、パシャッとおさめる。

●旅公演のときの迷妄状態から抜け出し、安定した日々が始まっている。すべては仕事がうまくいっているから。
 夜公演と昼公演の間に、長いつきあいの主演女優の楽屋で馬鹿話に盛り上がったりするのも楽しい。子役たちをからかっているのも楽しい。静かに本を読んでいるのも楽しい。夜公演の準備が続く空舞台を何気なく眺めているのも楽しい。
 すべては穏やかに、時間が進む。自分を泡立てる何かが欲しい、見つけなければという心は常にあるが、先月の心の乱れを思うと、今しばらく静かに過ごしたい、と、どこかで願っているようだ。



2004年03月06日(土) 疲れた!●デイヴィッド・コパフィールド(4)

●穏やかであれば、それでよし。
 毎日同じことの繰り返しでしばらく暮らすわけだが、2月のことを思えば、なべてことなく過ごせれば、それだけでいい。
 100人の人間と同じ場所で膨大な時間を過ごすということの難しさを、改めて、いやというほど知り、そのまとめ役として、わたしはただただ祈るようにして職場に赴く。

●体に積もり積もった疲れ。わずかばかりの眠りでは解消されそうもない。この仕事を終える前に、もうダブって次の仕事に入ることになっているし、いったいわたしはどこでどうやって疲れを癒していけばいいのか。そういう、現実的な自分自身のサポートのことを考えると、頭が痛い。
 いくつになっても、格好良くいたいし、不良でいたいし、暴れん坊でいたい。そのためには、健康であるべきなんだよなあ。


2004年03月05日(金) ぶれまくる数日が過ぎ。

●またまた眠りを削って働き、困難を乗り越え、やっと初日を迎えた喜びを味わったと思ったら、スッタフワーク失敗の連続。悔しさで興奮冷めやらず、後輩を連れ4時まで飲んでクールダウン。朝から汚名挽回のため立ち働き、今日は最高の出来。感情の針が、ぶれまくる数日。

●長嶋さんの様態が気がかり。日本の宝物だもの。

●パリのテロ予告が心配。恋人はパリでも移動移動で仕事をしている。

●眠くて倒れそう。今夜はとにかく少しでも疲れを取ろう。


2004年02月28日(土) メランコリック、でも、元気回復。

●仲間たちの新作の稽古場を訪れる。稽古といっても、もう本番を間近に控えた通し稽古。
 内容を説明するのは難しいが、見終わって囚われた感覚を記すことはできる。

……喪われてしまったすべてのもの。善し悪しを問わず、自分の過去を過ぎったものたち。守りきれなかった大事なもの、捨ててしまった大事なもの、去ってしまった大事なもの。明日を生きていくために蓋をしてしまったあらゆる負の記憶。
 自らの掌から零れ落ちていったものが、砂時計をひっくり返すように、自分の現在に立ち戻ってくる。
 見終わって、わたしはしばしセットを眺めて呆然。俳優たちが今の今まで生きていた場所に、自分の記憶までが棲みついているような気がしてしまい……。

 帰ってきてもメランコリックなまま、あれこれと自らの過去と時間を過ごしている。同時に、ここまで人の心を揺さぶってしまう、自分が選んでいる仕事の可能性を再確認し、元気を取り戻している。
 あらゆるマイナスの事象も、すべて強くなるためのレッスンと思い、頑張らなくては。


2004年02月27日(金) 衝動買い

●好きなだけ眠って、体力回復。旅先から荷物が届くものの、荷解きする気になれず、デイヴィッド・コパフィールドの原文を拾い読みしたりしてだらだら過ごす。ふらふらと外へ出て、各種支払いだのなんだのすませ、ふらふらと新宿へ。喫茶店でまた読書。そしてふらふらと立ち寄った電気屋で、ノートパソコン衝動買い。

●今使っているメビウスのキーボード、Iキーの調子が悪い。反応してくれないときがある。液晶もしばしば突然真っ黒になって、再起動を繰り返していた。確かにもう一台欲しいとは思っていたが、予定外のタイミングで、しかもかなりの上位機種を買ってしまった……。
 テレビが見れたりの流行の型ではなく、キーボードのタッチがひたすら気にいってしまったのだ。
 自らの散財癖に呆れながらも、楽しくセットアップ。ついでにワイヤレスラン環境も作った。今は使い慣れたメビウスで、「Iが打てない!」と嘆きつつ、ベッドで書いている。アップしたら、そのまま布団をかぶろう。無線は確かに便利。

●1日、仕事のことを何も考えずに過ごして、気分良いことこの上ない。こうして夜更かししても安心……と言いながら、明日は新作の稽古場を見学にいくので、起きられるかどうかが少し心配。

 がむしゃらに気分転換しようとしている自分を、泳がせてやりながら、大丈夫、大丈夫、頑張れる、頑張れる、と、鼓舞している感じ。

 あさってには、もう仕事再開。


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