サミー前田 ●心の窓に灯火を●

2006年12月16日(土) 急遽呼ばれたリマスタリング

 早くも師走である。早い早すぎる。今年はけっこう仕事したようなしてないような。

 先日、急遽連絡があり、某伝説バンド関連、70年代の名盤2作のマスタリングに立ち会うことに。いろいろめんどくさいので名前は出しません(笑)
 呼ばれたスタジオには、70年代から歌謡曲とかボーカルものを得意とするベテランの有名エンジニアの方がいらっしゃって、結果的には職人肌の丁寧な仕事をしていただいたと思う。しかし個人的にはややものたりなかった。
 やはりロックは、クリアーであったり聴きやすい音像ではなく、インパクトのあるガツンとしたマスタリングだと思うのだ。特に今回の2作品は、元々の音がパンクっていうか、綺麗でバランスのいいものの対局なわけだから。
 いろんなマスタリング、およびリマスタリングに立ち会ったが、俺はレベルを振り切ってしまっても、まずは聴感上の迫力を大切にしたいなと思うのである。



2006年12月09日(土) 「もしも日本にストリートロックというものがあるとするならば、それはフールズのことだよ」

 俺の生涯の名盤がやっと復刻!
 フールズのファーストアルバム『WEED WAR』(84年)が遂にCD化される!!!!!!!!!
 今までLP、CDともに音質最悪な再発(VIVID盤)はあったが、今回はしっかりとリマスターされる予定で、さらに84年の渋谷屋根裏での60分ほどの未発表ライブCDがついての2枚組という噂。
 
 70年代後半の、SEX、サイズを経て、80年に結成されたフールズは、財団呆人じゃがたら(初期の名称)、自販機系のエロ雑誌関係者、ストリッパー、ヒッピー/フーテンらと活動をともにし、あの時代の東京のアンダーグラウンドならではの混沌とした得体のしれないパワーを爆発させていた。当時、俺は冗談半分ながら「フールズは、村八分とスライ&ファミリーストーンが東京で産み落したような怪獣のようなバンド」「フールズのライブの方がファンカデリックよりもイイ」だとか勝手な話を友人としていたもんである。バンドはもちろん観にくる客もめちゃくちゃだったし、一時、東京のライブハウスはほとんど出入り禁止になって、フールズが出れるハコは渋谷のクロコダイルだけだった時期もあった(店長の西さんは懐が深いからね)。
 メディアでは、俺がバイトしていたこともある「月刊シティロード」(ぴあの先駆け、マイナーネタ満載の伝説の情報誌)が唯一の情報源。それでも『WEED WAR』がリリースされた時は「宝島」に小さな記事が載ったが、そこには「メンバー合わせて前科13犯!」と書かれていた(笑)
 ライブに行くと、ロマンポルノのけっこう有名な女優さんたちが客席で踊りまくっているのも、高校生には嬉しかったにゃあ。ボーカルの耕にはまるでクレイジーキャッツの植木等のような「どんなことでも笑い飛ばせる」ポジティヴなカリスマ性があって、ジャガタラのアケミはそこに強く惹かれていただろうし、カズと佐瀬のリズム隊は後のティアドロップス時代の百倍はタイトでファンキーだった。そしてなんといっても良のギターは攻撃的かつ芸術的な閃光を放っていた。この時代のもうひとりのギタリストはジャガタラのエビーだった。
 フールズはロックンロールをリアリティをもって体現していた80年代最高のバンドだったのである。
 80年代というと、リアリティのないR&R系のバンドがメジャーでもてはやされていたが、フールズを聴いてしまった耳にはちゃんちゃら子供騙しっていうか、カッコ満点中身0点な感じがしちゃって、とてもじゃないがダサクて聴いてられなかった。当時のメジャーのロックで普通に聴けたのはRCサクセションくらいか。
 以前も書いたけど、耕は「俺たちロックをとったらただの乞食だ」とステージで発言(確か82年頃)していた。まあ乞食っていうよりヒモだったのかもしれなかったけど・・・。なんとなくちんたらはじまったと思ったら、あっと言う間にとーんでもないテンションのライブになっているのがフールズだった。とにかく、メンバーの佇まい、無駄なMC、すべてがロックンロールとしか言えない音楽性と存在感。そのかっこよさはなかなか言葉では説明でないなあ。江戸アケミは「ストリート」といった言葉が安易に使われはじめた「ホコ天」とか「イカ天」のバンドブームの頃に、「もしも日本にストリートロックというものがあるとするならば、それはフールズのことだよ」と俺に言った。「そんなことガキの頃からわかってるよ、アケミ」。
 
 無事、何事も無ければ・・・2007年春リリース・・・の予定・・・・。



2006年12月02日(土) 宝箱の続報

 1/13発売のエンケンの10枚組ボックス『遠藤賢司実況録音大全1968−1976』の曲目がエンケンのオフィシャルHPで発表されて、掲示板もかなり盛り上がってる。
 73年、74年あたりのエンケンの過激ぶりは、村八分や頭脳警察の比ではないかもしれない。73年の大晦日に1万人が集まったフェスでエンケンは年越し直前に出演(今でいうカウントダウン)し、最後に「歓喜の歌」を歌うまで、「満足できるかな」を16分以上歌い、体制や政治家に対して怒りまくり、興奮してステージにあがった客をぶっとばし、掲げてあった巨大な日の丸を燃やしたという。CDの音源だけでもそんな様子が伝わってくる。
 そして74年になり福島の公演後、突然暗闇で数人の暴漢に襲われ、瀕死の重傷を追ったエンケンは、入院してた病院を抜け出し、松葉杖、包帯だらけで「春一番」に出演。傷口が開いてしまうほどの熱演で、血だらけになっても歌い続けた。これも伝説のライブである。
 
 まだ商品じたいは完成されていないが、中身ばかりか、ブックレットの充実も含め、自分にとってもこれ以上はないってくらいの宝箱。で、ブックレットにはこんな序文を書きました。


「歴史を超越した宇宙の叫び」

 膨大な記録テープがエンケンさん宅の押し入れに眠っているという話を聞いたのはもうずいぶん前の事で、そのほんの一部は1990年に『黎明期LIVE!』という1枚の素晴らしいアルバムとして世に出た(『黎明期LIVE!』からは本箱に全曲収録)。それらの音源をまとめて箱シリーズ化できないものだろうか?という話が浮上したのが3年以上前のことである。さすが、デビューから現在まで、一貫して自信と責任を明確に持って活動してきたエンケンさんだ。「過去のライブ演奏や未発表録音を箱にいれて年代順に発売したい」というやや強引なこちらのお願いをやさしく許可してくれた。
 曲順は、一部をのぞき時系列に並べてある。元々の録音状態やマスターテープの劣化などの問題もあったが、厳選に厳選を重ね、貴重度や音質本位ではなく純音楽魂本位で選曲させていただいた。DVDはテレビの公開録画とはいえ、まさしく73年のエンケンさんのライブだ。
 この『実況録音大全』の登場は、確かに日本のロック史の潮流としても重要な意義を持っている。しかし、我々エンケン・ファンおよび純音楽愛好家たちはそのような聴き方を越えなければならない。エンケンさんを歴史や時代性というような次元で語るレベルでは日本のロックは終わってしまうのだ。歌いたいことを歌い主義主張することが、極めて独創的な芸能として昇華されているエンケンさんの希有な音楽に触れればわかること。選曲作業中、これは時空を超えて永遠に瞬く「宇宙の叫び」なんだと、私は何度も何度も実感したのだ。
 まずは第一巻である。今回は、エンケンさんがギターを持って間もない頃の68年から、「ハード・フォーク」を打ち出していた76年までの収録となった。
 
 不滅の純音楽道、大河の如くまだまだ続きます。

 2006年11月10日(アルバム『満足できるかな』発売日からちょうど35年)   
 サミー前田



2006年11月06日(月) J-POP批評〜忌野清志郎特集

 発売中の「 J-POP批評〜忌野清志郎特集」(宝島社)にて、国立とか福生について書きました。
原稿で触れたのは、福生の裏ロックを代表する名バンド「くまばんど」や、伝説のフーテン/ダンサー「時計」(昨年死去。この人の弟は某一流企業の幹部で有名人)など、誰もわからない超ローカルなのに宇宙レベルで凄かった、そして自分の人生に深く影響を与えた人たち。
 変な記事ですがおもしろいのでぜひ立ち読みして下さい。



2006年11月04日(土) エンケン実況録音大全。例えばこんなかんじ

DISC1 <1968年 エンケン登場>
1ほんとだよ 
2ミスター・タンブリン・マン
 (68年5月12日第1スタジオ 3人編成で演奏)
3外は雨だよ
 (68年8月12日ラジオ関西)
4ほんとだよ 
5君がほしい 
6外は雨だよ
 (68年9月4日東京六本木自由劇場)
7猫が眠ってる
 (68年12月5日東京世田谷メロン宅)
8外は雨だよ 
9ほんとだよ 
10猫が眠ってる 
11終わりの来る前に
 (68年12月20日福岡市民会館小ホール)



2006年11月03日(金) 遠藤賢司 実況録音大全 第一巻1968−1976年

 2007年1月13日、60歳になるエンケンさんの誕生日に発売される10枚組ボックス。
 CD9枚、DVD1枚というボリューム。全10時間弱くらいかな? 豪華ブックレット付きで15000円は格安でしょう。
 ここんところ、ずーとこの選曲や構成にかかりっきりだ。でももう7割が完成したと言っても良い。音源も映像も最強に濃厚な内容。間違いなく、早くも来年の発掘/復刻作品の最高峰、第1位決定でしょ!。
 例えば、はっぴいえんどの前身「ヴァレンタイン・ブルー」をバックにした69年の「夜汽車のブルース」は10分以上に及ぶサイケデリック・ロックで、イントロではなんと大滝詠一が大正琴を弾いているのだ!!! 代表曲「カレーライス」だけでも14のバージョンが収録されているが、その全てが、サイズも違えば、歌詞も当時の世相や気持ちを歌詞にいれているので、まったく飽きる事がなく楽しめる。
 非常に膨大な音源の中からの選択基準は、「珍しい」からではなく「凄い」から選んだのである。(某バンドのボックスとか珍しいだけで、一回聴いただけで飽きちゃった)

 近日、さらなる詳細が決まり次第、また報告します。



2006年09月24日(日) 今のロックバンドには怒りがないYO!

  常に各所で開催されるような表層的に似たジャンルのバンドが集まるイベントを見てると、自分にとって何がOKで何がダメなんだろうと考える。昔で言えば、ローリングストーンズとハーマンズハーミッツとの違い?エンケンと南こうせつの違い?MC5とカーペンターズの違い?(笑)
 それは明確なことで、世の中に対して「怒り」があるのかどうか?。子供の頃からあたりまえに言われすぎですっかり風化してしまった言葉だが「ロックとは反逆の音楽」なのだった。直接的だったり過激な歌詞であればロック(パンクでもいいが)であるなんて短絡的な話しではない。音に怒りが込められているかどうか。例えばロマンチックな歌詞が多いサイクロンズの演奏には怒りがあると俺は思う。まぎれもなくロック。ハーマンズではなくストーンズである。しかし最近のロックバンドをやる人たちに怒りを感じるか?先日もあるバンドコンテストの審査員をやった時にもつくづく感じた。親の金で音楽専門学校に行ってそこでバンドを作り、ロックやパンクのような形態の演奏をやっている連中の表現は耐え難いものであった。そういや日本の60年代後半を象徴する最大のアイドルグループでありロックバンドであるザ・タイガースに「怒りの鐘を鳴らせ」という名曲があったよな。クニ河内が作曲の。紛れもなくタイガースも怒れる若者だったのだ。
 
 二十歳くらいの頃の話し。なぜか芥正彦さんの舞台の打ち上げに紛れ込んでいた俺は、恐れ多くも日本を代表する舞踏家・土方巽(故人)の隣で飲んでいた。土方さんは今日の舞台の感想として「今の舞踏家には怒りがないよ!」と激怒していた。関係者一同、神妙な空気になり、以後精進します的に打ち上げはオヒラキとなった。もう深夜だったので、芥さんの事務所というか稽古場らしき近所のマンションにいくと、誰かがドアーズ「ジ・エンド」を巨大なステレオ装置で爆音で流した。30メートル以上先のマンションの住人から「うるせえ!」と怒鳴られ、「ジ・エンド」のエンディングのあたりになると苦情をうけた警察がやって来て小競り合いになりドアーズ終了。俺にとっては舞台の本番より打ち上げ以降の出来事の方が何倍も面白かったけど(笑)。



2006年08月14日(月) ビーチボーイズ来日の記憶

 なんだかんだ言っても夏はビーチボーイズを聴くのだ。
 好きなアルバム? 『フレンズ』って穏やかなサイケって感じで好き。
でも、生まれてはじめて買ったアルバムは、74年に出て全米1位を記録した初期(62年〜65年)のベスト20曲入『エンドレス・サマー』。中学1年の頃、新宿を拠点とする当時最大手の輸入盤ショップ「ディスクロード」でイギリス盤を1380円で買った(アメリカ盤は同じ曲数で2枚組だった)。
 
 79年の8月、江ノ島の浜辺で「ジャパンジャム」というフェスティヴァルが行なわれ、これは「カリフォルニアジャム」の日本版という触れ込みにしてはショボイ企画であった。すでに気持ちはパンク〜ニューウェイブだった15歳の俺であるが、ロック好きな同級生を誘って観に行った。
 なんといってもイベントのトリはビーチボーイズなのだ。一応『LA』という最新アルバムが出た時期で「思いでのスマハマ」というインチキ日本語の曲が収録されていたので、その辺りの新曲も聴けたが、60年代ヒットパレードが中心だった。この時期、心身ともに絶不調だったブライアン・ウィルソンは、来日していたことはしていたが、ジャージ姿でステージのピアノに座っていただけで、ほとんど何もしていなかったという話はわりと有名。
 
 で、この時、ビーチボーイズの本番前、俺は食堂みたいなところにいってジュースを飲んでいた。太ったヒゲで短パンの白人が階段から降りて来たと思ったら、サインをもらってる人がいた。ビーチボーイズのメンバー?またはサポートのミュージシャンかもしれないと思ったが、誰だかわからない。自分もレポート用紙とサインペンを出してサインをお願いした。そこにはひとこと「BRIAN」と書かれてあった。あ、この人ブライアンだったんだー。感激だったけど、ステージのブライアンはどこにいるのかさえわからない感じだったので、そのありがたみは後年になり重みを増していくのである(笑)。そのサインは今でも『エンドレス・サマー』のジャケットに挟んであるはず。



2006年08月09日(水) やっとできました!

『昭和元禄NOW!第2集』
CD 10月7日発売 税込定価¥2300 BQGS-12

収録曲目
1サイケデリック・マン /ザ・サイクロンズ
作詞:橋本淳 作曲:三原綱木 
2ダンケ・シェーン・ブンダバー /ザ・シロップ
作詞:安井かずみ 作曲:かまやつひろし 
3レナウン・ワンサカ娘 / thee 50ユs high teens
作詞作曲:小林亜星 
4からっぽの世界/田渕純
作詞作曲:早川義夫 
5アイ・カウント・ザ・ティアーズ/夜のストレンジャーズ
作詞作曲:Pomus /Shuman 
6どんたく/ミステルズ
作詞:松山猛 作曲:加藤和彦 
7木遣りくずし/ザ・ヤング
作詞:高橋掬太郎 編曲:ザ・ヤング
8こきりこ節/サロメの唇
編曲:サロメの唇
9シェビデビでいこう/ SHOTGUN RUNNERS
作詞:水沢圭吾 作曲:六ツ見茂明 
10メロンの気持ち/ chocomates
訳詞:ホセ・しばざき 作曲:C.Rigual
11マイ・ボーイ・ロリポップ/ Gravy
訳詞:安井かずみ  作曲:J.ロバーツ/M.レビー
12ミッチ−音頭/ The Yeh! Yeh!s
作詞:岩瀬ひろし 作曲:伊部晴美
13 空色のくれよん/いちかたいとしまさ
作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一 
14バイバイ・アダム/コンカオリ
作詞:阿久悠 作曲:村井邦彦
15かもめ4分の3/野村麻紀と蟻地獄
 作詞:能吉利人 作曲:桜井順
16風をあつめて/酒井麻友子
作詞:松本隆 作曲:細野晴臣 
17アリゲーター・ブーガルー/ザ・ハプニングス・フォー
訳詞:松島由佳 作曲:Lou Donaldson



2006年07月05日(水) なにやってんの?

 最近何やってるの?ときかれることがよくあるが、いろんなことをしてるのでいつも一言で説明できないままである(笑)。
 CD復刻の企画監修や選曲に関しては、メーカー側から依頼があれば喜んで受けるが、近年は自分から企画を持ち掛けることはない。各ジャンルに自分なんかより詳しい権威の方々がいるわけで、発掘も研究も相当進んだ時代である。
 では俺にしかやれないような復刻仕事は何か?って考えたら、売れるかどうかは別として、例えばフールズのボックスとかかなあ(笑)。以前フールズの名盤「ウィードウォー」がビビッド(レーベルはUNITY)からアナログで再発されたことがあったんだけど、なぜかオリジナルマスターではない不完全なテープでプレスされてしまい、音質の悪いレコード盤が出回ってしまった。しかしその再発盤のライナーには、メンバーも驚いた詳細なフールズ史が載っていて、何を隠そうそれは若き日の俺が変名で書いたもの。これは少し自慢である(笑)。ボックス、やらせてもらえるならやりたいけど、マニアックというかほぼ東京限定のバンドだったので、多分300人くらいしか喜ばないのではないだろうか。
 で、ボックスといえば、実はあの偉大な音楽家の1968年から10年間の未発表10枚組ボックスが出る!秋に向けて只今制作作業中!


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