嗚呼、解った――之は、恐怖だ。
快晴、全開にした窓は、夏の風を室内へと招き入れた――其れは、網戸と、純白の紗幕越しだったけれども。
関東に来て初めて雨戸という言葉と実物と概念とが、一致した。北国ではお目に掛かれない代物だなぁと思いつつ、あれを毎日閉めるという行為には慣れなくて、結局私は開けっ放しになっている。朝陽が差し込まない窓に何の意味があるだろう。日中でもカーテンを明けられないことにも苛立ちは募るけれども、其れは其れ、土地が狭く密集した住宅地で、隣家との境界が、つまりは窓と窓とが近い此処では、仕方のないことと納得するしかないのだろう。 夜になると、猫が縄張り争いをして喧嘩している。何て、長閑。
卯月に夏日を体感できるとは思わなかった。冷え性の私は、暑いのも寒いのも嫌いだけれども、部屋の中に居る分には外が暖かいのは好ましいことである、何せ部屋の中が心地良いから、其れはもう、眠気を誘うほどに。
音に過敏に反応するようになったのは何時からだろう。幼少時からピアノやら声楽やら習っていた所為? 成程、確かに其れは一理あるかも知れないけれども。そうではなくて。――声だ。脳内に響く声がある。 今夜も携帯が鳴る。嗚呼、ほら、だからこんなの持ちたくなかったんだ。何時だって縛られている、監視されている。自由なんてないことを、其の希望さえ持ち得ないことを、思い知らされるだけ。
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