halu
高校2年に進級するとき、
文理選択をしなければならなかった。
私はとにかく数学がわからなくて、
文系に進んだ。
親しい友人たちはみな、理系に進んだ。
文系クラスに親しい友人はなく、
「勉強なんかキライ」という、
派手で騒がしい子ばかりが集まった。
私の苦手な子たちばかりだった。
私は彼女たちから「変わった子」という印象で、
何かするたびに、
「やだーウケるー」
といった、笑いの対象だった。
多分その笑いに悪意はなかった。
けれど、
私はそれが嫌だった。
授業中もうるさかった。
日本史が好きだった。その授業がいちばんうるさかった。
私は先生の話が聞きたかった。
それは毎回、休憩時間と大差ない話し声に妨害された。
先生は怒った。
けれど若い先生だったせいもあって、
みんなナメきっていて、
誰もそんなのに耳を貸さなかった。
毎日がストレスだった。
学校が、嫌いになった。
毎日いらいらしていた。
幼いころから、私はつめきりを使わない子だった。
ストレスが溜まると、
血がでるまで、爪を短くむしった。
常に深爪だった。
秋、胃を壊した。
今まででいちばん体重が多かった。
常に頭が痛かった。
いつもいつも、あたまの片側が痛かった。
部活は好きだった。
部室にいるときだけは、
楽しいと思えた。
リストカットをし始めた。
いらいらしている自分が嫌だった。
誰かに悪意を持つ自分を赦せなかった。
ストレスを与えてくる周りが赦せなかった。
手首の傷は毎日少しずつ確実に増えていって、
隠すためにリストバントをつけ始めた。
そのころ、
私はウェブ上で、ひとつの日記を書き始めた。
私とは違うもうひとりを作り上げた。
リストカットやいらいらや、
そういう醜いものすべては、
「彼女」がしていることにした。
そうすることによって、
私はほんの少しだけ、
救われていた。