夜風がなまあたたかい。 それを私はここちよく思う。 ひとつはここ何週間も微熱と頭痛に悩まされているから、 もうひとつは単純に夏が待ち遠しいから。
最近、 よく楽しかった過去の夏を思い出す。
私は夏がすきだから、 よい思い出はいつも、夏の明るい日差しの下にあった気がする。 気持ちがはじけるような夏のあつくるしい時間は、 あけっぴろげで、 まっすぐで、 全力だった。 不安も疑いもなかった。
近頃の私は、 すっかり冷房の効いた夏に慣れて、 もうあつくるしい時間をもつことはくなった。 そんな夏は、たのしい思い出がなかなかみつからない。 夏だったのか、そうでなかったのか、 見分けることが難しい。 閉じられた気持ちに、 目をそらしたまま、 おびえている私に、 安心と信頼は得られるのか?
思い出の夏がきらきらと輝いて、 つまらなくなってしまった私を責める。 どうしたらいいのかわからない。
それでもきっと、 夏はやってくる。 きっと、 私に感じられるかどうかの問題なのだ。
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