週末、蛍を探しにいった。
昔、毎年通っていた場所は、 記憶の深い森の奥に消えてしまい、 地図とにらめっこ。 たどり着けるのか不安だらけで 思い出のかけらをひろい集めていった。
記憶の中で残っている最後の目印を右折、 暗い夜闇の中へ心細くなりながら進む。 目的地にたどりつける確率より、 森の中で迷子になってしまう危険性の方がよっぽど高い。 どうかみつかりますように。
たいして進まないうちに、 たくさんの路駐車を発見。 山際の、 田んぼくらいしかない暗い道に、 たくさんの家族連れや恋人たち。 あわてて車を止めて、 私たちもついていく。 少し歩いていくと、 小川があって人、ひと、人。 そしてそれよりたくさんの蛍。 あのころより、 どの年よりたくさんの蛍。
さやさやと流れる水音を聴きながら、 ほんとうはこんなものなのかもしれない、と思う。 もう、 信じるべきはあのころの思い出じゃない。 それがどんなに美しくても、切実でも。
ひらひらと揺れる光を見つめながら、 新しい場所を探さなくては、と ひそやかに強くそう思った。
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