Diary 有加利 【
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- 2010年07月11日(日) お久しぶりです+α
こんばんは。
久しぶりの日記になりました。
生存報告してから丸1ヶ月書かないままで・・・
日記として存在していていいものかと思ったりしてるこの頃です^^;
私生活の方では、6月いっぱいで会社を退職しました。
色々あったけれど今となっては先輩方に感謝です。
迷惑ばかりかけてたのに良くして頂いて嬉しかった。
また沢山勉強させてもらいました。
前会社での経験を活かして、新たな環境で頑張って行こうと思います。
近況はこのくらいにして。
リハビリ小ネタ(未来リョ→桜)を1本。
リョーマヘタレで季節はずれで尚且つオリキャラ(♂)出てくるので苦手な方はご注意を。
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彼が久しぶりに日本の地に立ったのは、季節が冬から春へ移行を終えたばかりのある日のことだった。
日本を離れ、活動の拠点を完全に海外に移してから早5年。
『越前リョーマ』という名前が日本だけでなく世界中に認知されつつある中で、彼はようやく休暇を取り、日本へと帰ってきた。
5年目にして初の帰郷となったことの理由は、表向きにはやっとスケジュールに余裕を持つことができるようになったため、ということにしているが、実はそれだけではなかったりする。
かつて慣れ親しんだ風景の中をリョーマは歩いていた。
本当はこの道を通ることには随分と躊躇いがあった。
思い出してしまいそうだったから。
あの頃を。
あの気持ちを。
あの子のことを。
全て吹っ切ったつもりでいたはずなのに。
春の暖かな風がピンクの花びらを運んでくる。
ふと見ると、そこには満開の桜の木が立っていた。
(この木の下で待ち合わせしたっけ・・・)
無意識に苦笑する。
こちらから、つまり公園前の道路から死角となる位置で、彼女はいつも自分を待っていた。
リョーマは桜の木に歩み寄ると幹に背を預ける。
そう、こんな風にして自分も彼女を待っていたのだった。
突如強く吹いた風が桜の花びらを巻き上げて、リョーマは思わず目を閉じた。
「なんだよ、ったく・・・」
毒づきながら髪に体に付いた花びらを払いのける。
視界一面のピンクは少しするとゆっくりと地面に落ち着いて広がった。
『絨毯みたいだね』
そう言って笑っていた彼女の姿を思い出す。
これ以上ここにいると思い出に飲み込まれそうな気がして、リョーマは桜の木からそっと体を離した。
引き返そうと一歩踏み出す。
と。
視界に人の姿が映りこんだ。
(え?)
後姿に『まさか』という思いの一方で、本能的に『そうだ』と確信する。
穏やかになった風にみつあみが揺れている。
記憶の中の彼女のものと比べたら少し短いけれど、十分長いと思える長さ。
彼女のトレードマークと言えたその髪型は、あの時から5年経った今でもまだ健在だった。
「りゅぅ・・・」
口を開いたその時。
「竜崎さん!」
はっきりと彼女を呼ぶ声が別の方向から聞こえた。
それと共に走り寄ってくる影。
「須山君」
「ごめん、遅くなっちゃって。待った?」
「ううん、私も今来たところなの」
「ホント?なら良かった。・・・行こうか」
「うん」
「・・・」
会話が聞こえなくなって、リョーマはひっそりと息を吐いた。
名前を呼ぶこともできなかった。
それどころかその場から一歩も動けなかった。
『須山』と呼ばれた男と並んで歩く彼女の横顔は本当に楽しそうで。
遠ざかっていく二人の後姿からリョーマは視線を逸らした。
(なんだこれ)
自分は彼女に何の約束もしなかった。
むしろ「約束なんてできない」と突き放したのはこちらの方だ。
今更もう取り戻すべきものなんてないのはわかっている。
はずなのに。
虚しさだけが胸の内にいつまでも残って消えようとしない。
(・・・どうかしてる、俺)
頭を振って、リョーマは見えなくなった二人の姿に背を向けて歩き出した。