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■夏祭り
歩き難い浴衣なんて厭だと言って 飛び出していく姪の背中を見送ったら 遠い夏の日の記憶が 思い出の引出しからひょっこり顔を出した
集合場所の 鳥居の小さな神社には 色鮮やかな浴衣を着た 教室の匂いのしない同級生と
目が合うたびにひっそりと微笑む 姿勢の正しい先輩が
夕立に濡れた傘を弄びながら待っていた
動き難いと何度も小声で愚痴る 友人の言葉が耳を掠めるその度に 私は振りかえって貴方を見ていた
「着なかったんだ。」
右隣では友人が夢中で金魚をすくっていた
同じ歩幅で歩きたくて しまい直した浴衣の模様を 鮮やかに思い描きながら ほんの少しだけ後悔した
身体の左側だけがとても熱くなって 窮屈だから と ぶっきらぼうに答えた私に
貴方は
気持ちのシャッター下りるような 笑顔を向けた 姿勢の正しい貴方の肩越しに オレンジ色の打ち上げ花火
貴方の
漂う視線が 肩から腕までの真っ直ぐな線が 必ず1度躊躇って発言する唇が
今でも私を あの日に帰してくれる
今でも私を 熱い想いで包む
あの娘がもし 来年も浴衣を嫌がったら 今度は無理にでも 着させてしまおうかな
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