MEMORY OF EVERYTHING
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2002年09月08日(日) |
吐き気のもとを吐き出すために |
ネット上の、例えば小説などを読むことで、泣いたりすることはあまりない。
笑うことはある。でも、泣くほどの強い影響を及ぼされることはほぼない。
ショックを受けることもそうない。
間違ってアダルトサイトを開けてしまったとしても、「よくあることだ」で事が済む。
しかし今、この深夜にネットを回っていて私は、心から吐き気をもよおしている。
その原因を吐き出してしまいたい。そう強く思うので、とりあえず、ここへ記しておきたい。
誰も見なかったとしても、誰かに伝えられる可能性があるのはここしかないから。
この気持ちの原因は、恐らくひとつではない。
だがそれは、大きく2つの事柄に分けられる。
「盗作」と「荒し」だ。
今の私が最も優先するもの、それは恐らく「ルパン三世」だ。
・・・ちょっと待って、オタクの話をしようと言うんじゃないんだ。
その「ルパン三世」に現在、ある「盗作」疑惑が浮上している。
2002年9月6日に発売された、ルパンのタイピングソフト。
そのパッケージに描かれたルパンのイラストが、あろうことか、あるファンサイトの管理人のイラストのパクリだと言うのである。
もちろん、アドレスもその情報と共に掲載されていたので、実物を両方拝見した。
確かに似ていた。いや、正直、ほぼ同じだった。
ここで私がハッキリと「盗作」であると言い切るのはあまりに危険なので控えておくが、「その可能性がないとはいえない」のは確かである。
その問題により、何箇所かのファンサイトはもちろん、公式サイトのBBSにも、批判的意見が募りつつある。
ルパンファンを自負する以上、気にならないわけは無い。いろいろな意見を、いろいろな場所で見させて頂いた。
「盗作」をした、という疑惑のある作画監督名は明白にされている。
今年のTVスペシャルも手がけた人だ。
もちろん、BBS等での発言の中で、その作画監督の擁護記事など1つもない。
今現在、凄まじい批判の嵐である。
オフィシャル側からは、今のところ何の返答も返されていない。
本当に「盗作」をしたのだろうか。
それは気になるところだが、実際、私が吐き気をもよおした原因は、オフィシャルが「盗作」を行ったという事実を仮定したからではない。
恐らくそれは、「疑惑」そのものに対して起こったのだ。
公式ページのBBSに集まる批判の数々。
その全てが、目に痛い。
オフィシャルを攻撃する書き込みを見る事が、ファンにとって気持ちのいいことであるわけはないのだ。
何故なら、それはあってはならないことだから。
作品は、オフィシャルのみに生み出される。オフィシャルを否定することは、意思ならずも、作品そのものを否定することになりかねないのだ。
ただでさえ、ルパンという作品の成り立ちは複雑である。
最近の作品には、賛成意見は殆どないといっても過言ではなく、昔を懐かしむ声や、改善を求める声、様々な批判。それらが痛烈につきまとっている。
何故そこまで言われながらも、もしくは言いながらも、ルパンという作品を好きでい続けることができるのだろう?
その問いに答えることは、自分でもできないのだ。
いつ見限ってもおかしくない状況まできているのだ。ルパンという作品は。
それでも、どうしても、嫌いになれない。
好きだから、だから、今、涙が出るのだ。
有名になればなるほど、透明な水の中で泳ぐのは難しくなる。
がんじがらめになって、それでも底の見えない濁った水中に沈んでいる、自分の愛する「作品」を・・・・・・もう、見たくないのだ。
実際に盗作があったかどうかはともかくとしても、今はとりあえず、オフィシャルの返答を待ちたい。オフィシャルの対応が、私のこの吐き気を、吹き飛ばしてくれるようなものであることを、期待したい。
ファンと作品=オフィシャルが、通じ合えることを祈りたい。
事件そのものについても考えてみたいとは思うのだが、私は盗作について、意見をいうことができるほどの知識がないのだ。
ファンサイトが著作権を違反しているかと言えば、「言えないことはない」と、それくらいしかわからない。悪意がなければ訴訟の相手にならないのかと問われても、「そう信じたい」と、そう言うしかない。
オフィシャルがあってこそファンがある。
その当たり前の関係が、本来、尊重し合うべき関係が、お互いを縛っているのが、哀しい事実である。
もうひとつは、口で言うだけならいたってシンプルなものである。
ルパンのゲーム関係の公式ページにおける掲示板で、見るに耐えない「荒し」が発生している。
私は、ツリー掲示板の見方がいまいちよくわかっていないのだが、管理側が記事を削除した場合、「削除記事」というタイトルの、内容のカラッポな記事が形として残るらしい。
その「削除記事」というタイトルを使って、ファンによって書き込みされる正規の記事ひとつひとつに、悪意のあふれる返信を行っているユーザーがいる。
つまり、「削除記事」というタイトルを本物だと思ってクリックすると、実際はただの悪口ばかりの書き込みが現れる、という仕組みである。
目にあまる、とはこのことだ。
悪口というのは、言う時も、言われる時も、言葉を見るだけですら、きまって気分の悪くなるものである。公式ページでのそういった行為。目にする人はたくさんいる。
こちらは一言で感情を表せる。「許せない」。怒りを感じる。
更に、(恐らく「いい意味で」、というべき)血の気の多い利用者は「荒し」に対して反論や口論をけしかける。
確かにそれは、無視するにはあまりに、無視するこちらのストレスが一方的にたまるタイプの書き込みなのだ。
しかし、荒しというのは、反応があれば増長するものと相場は決まっている。
しかもその反応によって、次第にどちらが荒しなのかもわからなくなってくる場合が多い。
そのやりとりを、オフィシャルが見てどう思う?
ファンがオフィシャルを見限る前に、
オフィシャルに見限られることになりえないだろうか。
もちろん、現実的に言ってファンというのは「金ヅル」であるので、制作側から突き放すということはまずありえないが、マナーのないファンの存在は、結果として作品の質を落とすことに繋がる。
もうこれ以上、悪影響を及ぼしあうのはやめようと。
一体誰に言えばいいのか。
2002年09月02日(月) |
Where will you take me to? |
私は重ねた両手の人差し指で引き金をひいた。
一瞬間、耳に入る全ての情報がその音だけに支配される。相変わらずの爆音だ。
あの朝、突然私の元にやって来ることになった黒い銃身は、だいぶ私の手に馴染んできていた。
射撃の反動にも、簡単には飛ばされなくなった。
最初の頃、近所の空き地で練習のために銃声を響かせていた時は、引き金を引く度に体が弾かれて、しつこい程に後方へ尻餅をついていた。
今、練習場所は郊外の廃墟ビルの地下に移った。空き地での妙音に人々が騒ぐことはなかったが、いつ銃を構えた自分の姿を目撃されてもおかしくなかったからだ。
あの朝から、確かに人生は想像し得なかった方向に動いていた。それまで過ごしていた毎日が、全て捨て去られたといっても過言ではない転換だった。
予期せぬ男の襲来はあれから幾度となくあったし、それらは全て、あの時と同じように銃弾に沈むと一瞬で霧散した。
本当にこちらの身が危うくなったこともあったし、もう少しで一緒にいた友人まで巻き込まれそうになったことすらあった。
しかしそうはいっても、自分の全てまでが一緒に変わったとは思いたくなかった。
住民は射撃練習をする私の姿を目撃しても、手元の銃が本物だとはまさか思わないだろうが、妙な噂を立てられるのは我慢ならなかったのだ。
そんな時に、偶然に見つけたのがこのビルだった。
周囲に人はほとんど来ないようで、以前だったら私でも好き好んで近づかないような荒れ果てた建物だったが、今はそれが幸いだった。
照明もろくにつかない、暗く薄汚れた部屋で、私は一人銃声を響かせる。
怖くもなかった。
もしここで何者かに襲撃を受けたとしても、手には心強い味方がある。
しかし――そう感じている自分に気づいた時、別の恐怖が心を覆った。
拳銃という武器を使うことを当たり前としている自分がいる。
謎の男は銃弾を受けて空気に掻き消える。
しかし、「普通の人間」だったらどうなる?
身の危険を楯にする時、私はこの銃で人間を撃つのだろうか?
いつか私はこの銃で、人間を撃つのだろうか?
私は人を殺せるのだろうか。
誓え!
大いに誓え――
誰のために今そのことを行うのかと云う事を知れ
誓え!
自分のために誓え――
全ては自分のためにあれ―今、誰のためでもなく
自分のために動くのだ!
「キライ! ・・・キライ、キライ、キライ!!」
アタシがそう言うと、目の前のコイツは何でもなさそうな顔で、でも口では違うことを言った。
「哀しいな。そんな風に言われると」
だから、余計に腹が立つ。
アタシの言葉が、どれだけアナタの心臓に穴を空けられるっていうの?
アナタの目のどこら辺に、アタシの姿が映っているの?
アタシはどこにいて、アナタはどこにいるのよ?
「嘘ばっかり」
鬼を退治する正義の死者のように、思いっきり睨んでみたけど、結局それは絶望という風になって返ってくるだけ。
それなのにアナタはまだ言うの?
「嘘じゃないよ」
アナタの仮面をはがすのはアタシじゃダメなの?
全部見たいと思うのはワガママ?
アナタの悲しみも
アナタの涙も
アナタの怒った顔ですら
アタシは見た事がない。
ねえ、せめて――
いつもと違った笑顔を見せて。
「キライよ」
「ね、そういう事は『好き』って言いながらするものだよ」
座るソイツの頭を抱きしめたアタシに、また、変わらない調子でソイツは言った。
それから、
「こうしている時、僕がどんな顔してるか、知ってる?」
不意に言ったその言葉に、アタシはハッとして抱きしめていたソイツを突き放した。
・・・何てことない。いつもの顔だ。
「なるほどね」
と、アタシはあんまり上手くない笑顔を零してしまった。
アタシが見てないときにだけ、違う顔してるんだ。
なるほど、アタシにはまだ隠しておくつもりなの。
「・・・キライよ」
今度はきちんと笑って言った。
そういうつもりなら、まだしばらく付き合ってあげる。
アタシの知らないアナタの全部が次第にアタシにバレるまで。
2002年08月12日(月) |
Our Night tastes spicy! |
校舎の3階の窓から、そっと身を乗り出した。
下は中庭だ。コンクリートの小道と盛り上がった芝生が、さすがに少し遠く見える。
一度上体を引っ込めて、窓の桟に手をかける。弾みをつけて、からだの半分を窓の外へと投げ出した。
まさか投身自殺しようという訳ではない。窓枠の上部に手を移して、体重を預けて無理矢理からだを反転させる。三日月の光る夜空が視界に広がった。背中をのけぞらせて、屋上のフェンスを下からのぞく。頭に血がのぼりそうだったけれど、何とか上着のポケットからミニロケットを出して屋上へと投げる。細い、しかし丈夫な糸をぶら下げたロケットは、フェンスを越えて視界から消えた。
ぐ、と手に巻いた糸を引っ張ってみる。ロケットの鉤部分はきちんとフェンスに引っかかったようで、ちょっとやそっとでは外れない強い抵抗を感じた。
そこで、ようやく校舎内に残っていた下半身も外へ引きずり出す。制服のプリーツが捲れ上がったのも束の間、とうとう全身が宙に釣られる状態になった。衝動で足はぶらぶらと揺れている。
スカートを短くする目的でウエスト部分を巻き上げるのに使っている、ベルトのバックルに手を伸ばす。パチンと取っ掛かりを引っかくとふたが開いて、中には小さなハンドル。指先でへそのあたりに位置するそれをくるくると回すと、からだが下へと降り始めた。これは以前見た映画で、ある泥棒が使っていた道具。面白そうだったので真似してみたのだ。
ゆっくりと降下して、足が地面に触れた。あたりを見回そうと首を回したが、突然強い光に照らされてその首をすくめた。上空からのスポットライト。
「まだまだ」
勝ち誇った笑み、というより、こちらの敗北をわざわざ知らせてくれるような笑みを浮かべて、背後にアイツが立っていた。
今日は負けたか。
諦めて、屋上から釣り下がった糸を断ち切ろうとした瞬間、ガクンとからだが引っ張られる感覚がした。実際、信じられない力でからだは先ほどと逆に上へとのぼっていく。背中が窓や壁にぶつかって引きずられて、ブラウスが破れるかと思うほどの痛みを感じた。まさか人の手で、校舎の1階から屋上まで引き上げられるとは思っていなかった。乱暴な手口は誰のものかすぐにわかった。地上でアイツがぽかりと口をあけてこちらを見ている。当然だ、引き上げられているこっちだって驚いているのだから。
からだが屋上のフェンスまで到達すると、ようやく声がした。
「あとは自分で上がって来い」
言われる間でもない。これ以上傷つくのはまっぴらだと、フェンスの網目をよじ登って屋上内へと飛び降りた。始めに見えたのは声の主より何より、小さな自転車。小さいけれど、大きな翼を広げている。
「ホラ、乗れよ」
そう言いながら自転車へと駆けていってそれにまたがったのは、気まぐれなあたしの「相棒」。すぐさま同じように走り寄って、その後ろへとまたがる。
「今日は来ないかと思ってた」
「気が変わった」
自転車はぐいぐいと漕がれることで、前方ではなく上空へ。こんな不思議な発明ができるからこそコイツが好きだ。
「アイツ、あとでリベンジね」
既に、地上の小さな点に過ぎないアイツに、ひとつ小さく投げキッス。今ごろ地団駄踏んでいることだろう。
さあ、夜の旅路を月明かりで帰ろう。
2002年08月11日(日) |
Where do I go? |
それは、近所のカフェで人を待っているときのことだった。
待ち人来たらず。
もっとも、とっくに縁は切れているはずのお互いだから、もし来なくても構わない。むしろ、わざわざ顔を見ながら改めて別れを言い合うより、このまま自然に消滅した方が気分が良かった。
どっちが二人を結ぶ糸を切るハサミを持ち出したのか、今となってはわからない。わからないけれど、ひとつだけは確かだった。今ふたりの別れによって、傷つく人は誰もない。
アイスティーのグラスを持ち上げると、からりと氷の音がした。テーブルの上のナプキンに、水滴がぱたぱたと落ちる。ずっと手をつけていなかった紅茶は、レモンが染み込んで味がすっかり酸化していた。
飲むのを諦めて外を見る。よく晴れた日。夏の日差しが路上を歩く人々を照らしている。車道に車の影はまばら。5分に2,3台、湯だった空気を掻き切って右から左へ。
車体に照りつけた光が跳ね返って、思わず目をつぶった。視界が途切れた瞬間に、代わりとでもいうかのように鋭く聴覚が働いた。正確に言うと、無理矢理聴覚に音をねじこまれたのだ。
凄まじいブレーキ音。
目を開けてガラス越しに通りを覗き込む。商店街の路上を走るにはどうみてもスピードを出しすぎている一台の自動車が、角を曲がって目の前を通り過ぎた。あまりないようで、実はよくある光景だ。必要以上に飛ばすオーナーはどこにでもいる。
それだけならその車を気にとめることはなかっただろう。しかし、そこからがどこにでもある光景とは明らかに違っていた。
バラバラバラ・・・と荒いプロペラ音が追って聞こえ始めた。瞬く間に通りの上空に現れたヘリコプターの腹。商店街の店のひさしと同じ程の高さまで下がってきている。目をみはったのも当然だ。
更にヘリコプターは先を行く車体に向かって、機関銃を発射した。外で悲鳴があがるのが同時に聞こえる。
椅子を蹴るようにして立ち上がった。ショックを受けるよりも、体が動く方が先だった。
外へ出ようとして、待ち人について一瞬だけ迷った。待っていなくてはと思ったわけではない。呼び出されて待たされた挙句、アイスティー一杯分の勘定を払うのが嫌だった。
ガラスを振り返ると、先ほどの自動車がUターンして戻ってくるのが見えた。ヘリコプターは明らかにそれを狙って、またしても銃音を響かせる。ハンドルをとられたのか、自動車は道を外れてこちらへ向かってきた。近づいてくる。高い悲鳴のようなブレーキの音と共に、車体は目の前のガラスに突っ込んだ。破片が周りを舞う。しかし、からだの方は何ともなかった。
ハンドルを握り締めたままの運転手が顔を上げた。目が合う。当たり前だが知らない顔だった。しかし、・・・何故だろう。初めて会う気がしなかった。恐らく向こうも同じように感じたのだろう。ヘリコプターの騒音の中、ほんの数十秒見詰め合って・・・バタリと開かれた助手席のドアから車内に滑り込んだ。
背後で名前を呼ばれた。
今ごろ到着して、店の状態に唖然としながらこちらを見ている過去の人に、最後の言葉をかけた。
「アイスティー飲んだの。よろしくね」
車は走り出した。ヘリコプターを巻くように、恐ろしいスピードと巧みなハンドルさばきで狭い通りを疾走する。
シートベルトを締めて、運転席に座る男を見た。
名乗り合った名前はやはり、初めて聞くものだったけれど、始まりなんてどこでも良かった。
破壊され尽くした星
見渡す限りの廃墟
誰が、どうして? ・・・そんなの関係ない。
大切なのは、この星が死んだあとで生まれた命の、その事実。
ヒビの入ったガラスに少し力を入れると、
まわりの水と共に体が外へと流れ出た。
砂っぽい空気
ほこりまみれの地面
ここはどこ?
わたしは、なに?
不意に耳をくすぐった空気の振動
見つけた源は壊れかけたレコーダー
からからと回るテープから「音」
きれい
これはなに?
聞いたことのあるような懐かしいその響き
理由もわからず涙が出た
・・・それが涙だとはその時まだ知らなかったけれど
震える声で鳴き続けるレコーダーの隣で泣きながらいつのまにか眠っていた
太陽はまた昇ってきた
からだは大きくなっていた・・・成長している
レコーダーはならなくなっていた
きのうの音色をもういちど聞きたくて
真似をしてみた
けれど
声は出なかった
音の出し方も 言葉も
・・・知らないから
何日も 何日も 経って
からだもどんどん大きくなって
ここにいる意味を知った
ひとりで生きてる意味を知った
それから
何年も 何年もかけて
星をつくった
全てそろった 全て
足りないものは ヒトと ・・・音楽
からだのつくりはもうずっと変わらず止まっていたけれど
わかっていた もうすぐ役目が終わること
何年も 何年もかけて
探し続けた、あの日聞いた歌を
広い
広い 広い 広い 広い 空の下で
歌った
地上に光
ここから光
星に広がって
また 始まる
終わりと始まりがまた、同時にやってきた
2002年08月08日(木) |
行きたくても行けないキモチ。 |
正直なところ。
今まで、本気で欲しいと望んだもので手に入らなかったものはなかった。
もちろん、子供が望むものであるのでそんなに大それたものではないが、
初めはどれも、手に入る可能性は限りなく0に近いものばかりだった。
しかし、最終的に手を変え品を変え・・とでも言うのだろうか。
ほぼ全てが手元に集まることとなった。
妙なところに対して、燃え尽きない情熱と打ち倒れない根性があるらしい。
そんな自分であるので、
「どうしても欲しい」しかし「手に入らない!」という
渇望とでもいうべきものを感じることが、最近になってからは全くなくなっていた。
と、言っても例えば犬なんかは、実際、十年ほどねばって手に入ったものであるので、「やっと」という感はある。子供の頃、どんなに頼んでも聞き入れてもらえなかった時はさすがに「何故なんだ」と苦しい思いをした。
しかし、子供の頃とは違いほとんどが自分の金でものを変える今、そういった辛苦を感じることはほぼないに等しい。
正しく言うと、「等しかった」。
前振りが長くなったが、つまるところ、
今日という日に私は久々、「欲しい」しかし「手に入らない」という図式を痛感することとなったのである。
明日、8月9日は東京ビッグサイトで夏のコミックマーケットが開催される。
ここ数ヶ月、イベントというものから離れ、「もう行かないだろう」とそれ自体に永遠の別れを感じていたのだったが、7月と8月を股にかけるほんの1ヶ月の間に、状況は一変してしまった。
「同人誌」になるべき「ジャンル」から完全に離れたと思っていた自分だが、なんと言う事か新たに「ルパン三世」にハマってしまったのである。
その経緯にはいろいろと考察やら確信やらがあるのだが、ここでは省いておき、とにかく今、私は心からコミックマーケットに出向いてルパンの同人誌が欲しい!! と望んでいた。
しかし先にも述べたように、それで簡単にコミックマーケットに出かけることを決断できるのなら、こんな文章など初めから存在しないのである。
認めたくはないが、私は受験生だ。
しかも明らかに今の時期としては勉学の足りない大学受験生だ。
建前だけになっている危惧もあるが、とりあえず毎日予備校に通っている。
友人からの誘いにも、「時間がない」「遊べない」とことごとく断りの返事を入れている。
更に、親というあまりに厳しい目が張り付いている。
まさかそれまでのように、朝、始発に飛び乗って片道約2時間、1000円以上をかけてビッグサイトに向かえるわけがないではないか。
(しかももちろん明日当日も予備校の授業が存在する)
落胆していた。
コミックマーケットに行けない事がこんなに悔しいと思ったことはなかった。
よく、地方に住んでいて「東京に来られない」と嘆くネット上のファンや友人がいたが、「そうか、残念だね」と声をかけるのは当然としても、それがどんなに歯痒いことなのかと理解していなかった。
行きたくても行けない。
制約のある自分を1日恨んだ。
そんな気持ちを感じた今日。
幸運なことにそれから、買い物を頼める後輩を発見し、心底申し訳ないと思いながらも数冊の本を頼んだ。
(余談だが、この日−今日−はまた、MSNメッセンジャーに初めて心から感謝した日でもあった)
結局、頼んだ本が全部買ってきてもらえるかはわからないにせよ、依頼だけは出来たわけだ。
しかし思う。
『どうにもならないこともあるんだな。』
2002年08月07日(水) |
I meet‘Danger’! |
気温は高かった。けれど、それほどの湿度を伴っていない朝は、からりとしていて温かかった。
眠りに付く前に回した扇風機が、傍で首を振っている音がする。
左右の最先端に届く度に、ガチャリと接続部分がきしんでいる。
さらりと肌をなでる風を気持ちよく感じて、目をあける気もせずに寝返りを打った。
シーツの上で、左手にぶつかったものがある。
やたらとゴツゴツしていて、そのままでは掴み所がない妙な形。
ぼやけた頭はそれを、目覚まし代わりに置いた携帯電話だと判断した。半分、いや、それ以上にまだ寝ぼけているくせに、普段の習慣から状態をチェックしようと右手をも伸ばしてそれを掴んだ。
しかし違和感があった。
軽々と持ち上げられるはずのそれは、シーツにずっしりと沈み込んでいて手に吸い付いては来なかった。
眠気を振り払って、何故か今朝に限って頑固な携帯物をなんとか支配しようと、うつぶせの状態から体を起こした。
そして右手の下敷きになっているそれを見て、霞んだ視界が急激にクリアになった。
カメラがだんだんピントを合わせるように、目の前のそれに視神経が集中する。
携帯電話は青いはずだった。しかしその、深い海の底のような色を携えているはずという記憶が、裏切られたような気分だった。
物体の全体像は明らかに黒い。夢からまだ覚めきっていないような闇の色だ。
一見すると鉤型にも見えるそれの折れ曲がった部分だけが茶色い。通常、そこを握り締めて扱うのだろう。
いつ現れたのか、どこからやってきたのか。それは普通に日本国内に生きている限り、ほぼ確実に遭遇することのないある種の「武器」―――拳銃だった。
改めて驚く間もなかった。
左のこめかみに慣れない感触。慣れない、どころではない。恐らく経験したことのない硬質の感触。
寝癖であちこちに跳ね上がる髪を掻き分けて、銃口は押し付けられていた。
一瞬、息が止まりそうになる。ほんの少しでも動けばその口が火を噴く気がして、ズレ下がるパジャマの肩口も直さずに硬直した。
いまだに右手の下に位置する黒い拳銃に目を落とす。これと同じものが、今自分のこめかみに牙を向けて命を握っている。
一体、誰が横に立っているのだろう。黒目を限界まで左に寄せてみても、視界に姿は映らない。
せめて、男なのか女なのか。疑問はすぐに解けた。
男の声が何事かを言う。
日本語ではなかった。英語かもしくは知らない言語だった。聞き取れなかっただけとも思えたが、わざわざ胸で反復してみる余裕はどこにもなかった。恐らく、必要もなかった。
心臓が小刻みに振動していた。閉じるタイミングを失って、半開きのままの唇から渇きが広がっている。
こめかみの物体がかすかに動いた。そして男がもう1度言った言葉は、今度は容易に聞き取れる短い言葉だった。
「GOOD-BYE」
その言葉は引き金だった。男の握った拳銃のものではない、理由も原因もわからず命を握られた自分の体の引き金だった。
その時の行動は、自分の中にまさか秘められていたとも思えない、強引で、迅速で、正確な、ひとつの連結した行動だった。シーツと手のひらの間で眠っていた黒い銃身のグリップを握り締め、持ち上げ、身を翻し、左手を添えて、迷いなくトリガーを強く引き寄せた。
鼓膜を引きちぎられるような音が響いて、同時に体は背後の壁に叩きつけられた。
思わずうめいたが、男の声はそれを容易にかき消す壮絶さだった。当然の結果として真っ赤な血を見ることになるのだろうと頭は即座に予測していたが、男の体は血を噴出す代わりに、中心からはじけるようにして掻き消えた。
男は消えた。男の銃も目の前の危険も消えた。足の間には、既に力ない両手でただ触れているだけになっている銃身が横たわっていた。
現実味を帯びた夢だと思おうと無意識下で思考が働いていたが、再び眠りに付くこともできなかった。
その朝は、それまで毎日歩いてきた日常を覆す、始まりの朝だった。
もはやこれは日記ではないと思いつつも。
あなたに、恋をしました。
あなたが逝って、何年・・・経ちますでしょうか。
今ごろ・・・あなたを好きになるなんて。
・・・でも。
あなたを知るたびに。
好きになります。
今、私はあなたを、心から尊敬しています。