Deckard's Movie Diary
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2007年10月13日(土) |
パンズラビリンス 大統領暗殺 サウスバウンド |
実はギレルモ・デル・トロって嫌いじゃないんですよ(笑)。『ミミック』はもちろん、『ブレイド2』は『1』より好きですし、『ヘル・ボーイ』の続編も楽しみにしているような輩です。彼の作品は日本やヨーロッパの監督のようにちょっとウェットなところがあり、自分の好みに合っているのでしょう。3年も待たされた『デビルズ・バックボーン』はイマイチでしたが、この作品には今回の作品に通じる流れがあったような気もします。で、デル・トロの名前がいきなりアカデミー賞にノミネートされて驚かされた新作の『パンズ・ラビリンス』を観てきました。いやぁ、凄いですよ!この作品は間違いなくデル・トロの最高傑作ですね。スペイン内乱を背景に少女オフェリアにふりかかる過酷な運命。少女は現実逃避をしていたのか?夢を見ていたのか?子供の目には美しいと感じたモノはより美しく、残酷に感じたモノはより残酷に映るモノです。魚眼レンズを超えているKIDS眼レンズを通して描かれた空間は、ある意味リアルなファンタジーとも言えます。それは一般的な“ダーク・ファンタジー”とは違い、作品そのものがラビリンスというか、パラレルワールドのような世界観で満たされていて、残酷な現実を目の当たりにした少女の危くあやふやな心が儚くも美しく描かれています。言い古された言葉ですが、こんなにも切ないラストも久しぶりでした。恐れ多いとは思いますが、多少なりとも少女の心に近づけた気もしました。
今の日本に内乱はありませんが、人々を取り巻く状況は決して楽観出来るようなモノではありません。そう考えると、オフェリアのような少女が居ても不思議ではないでしょうね。
例によってデル・トロの定番である虫や個性的なクリーチャー、リアルな残酷描写が満載ですので、その手が苦手な方は敬遠した方がいいと思います。がしかし!出来れば、全ての人に観て欲しい作品です!キッパリ!
その斬新な手法からかなり期待したのですが、ちょっと期待ハズレでしたね。例えば、このストーリーで普通に映画化したら相当平凡ですよ。そう考えてしまうと、だからこの手法なのか!と勘ぐりたくもなります。
『現職の大統領の暗殺を仮定して、徹底したリアリズムでシミュレーションするラジカルなテーマが世界各国で物議を醸した問題作。911同時多発テロを受けて始まった“対テロ戦争”の泥沼化が進む中、いつしかアメリカ国民からの支持も失ってしまったジョージ・W・ブッシュ大統領。本作は、そんな今や多くの人が世界を覆う混迷の元凶であるかのごとくみなすブッシュ大統領が暗殺されたとの架空の設定を基に、ブッシュ亡き後の世界がどのような方向へと進んでいくかを客観的に考察し、その想像の未来を徹底したドキュメンタリー・タッチで描き出していく野心的政治サスペンス・ドラマ。監督はイギリスの俊英ガブリエル・レンジ。(“オールシネマオンライン”から)』
面白いのはブッシュが撃たれるまでで、それ以降はちょっと眠たいです。インタビューで構成されているので仕方無いのですが、想像の範囲を越えないので、今までに何度も見たようなニュース映像の繰り返しのような錯覚に陥ります。でも、この辺りが限界なのかなぁ・・・この映画の手法に興味が湧いたのですが、自分で自分の首を絞める結果になったのかもしれません。ただ、この手法で描かれたことに寄って分かりやすく見せられた部分もあります。まぁ、分かったことは世界の警察・アメリカの大統領が暗殺されたところで何も変わらない!ってことですね。全てが滞りなく、まさに大統領も歯車なんです。それこそが世界の、政治の、スタンダードってコトなんでしょう!
とにかくテンポが悪いし、都会での子供達の演技はワザとらしいし、マジで森田って下手糞になったなぁ。前作の『間宮兄弟』も酷かったですが、どうしちゃったんでしょう。『39』は良かったんですが、それ以降の作品はあんまり誉められたモノではないでしょう。プログラム・ピクチャーをこなしているうちに、緊張感が無くなってしまったのかもしれません。この作品も設定(両親がバリバリの学生運動戦士)は面白いと思うのですが、単にハチャメチャなだけで説得力がありません。ハチャメチャならもっと突き抜けないとねぇ・・・中途半端なんですよ。ラストは嫌いじゃないので、何処かで既成概念と真剣に立ち向かう部分が欲しかったです。
ところで、長女役の洋子を演じているこの腫れぼったい女性は誰だ?と思っていたら北川景子でした。なかなかいいんじゃないですか?そう言えば『間宮兄弟』にも出ていましたから、森田のオキニなのかもしれませんね。
2007年10月06日(土) |
『パーフェクト・ストレンジャー |
ラスト7分11秒に大どんでん返しがあるらしい『パーフェクト・ストレンジャー』。まぁ、この手の宣伝コピーが付いている映画で面白かった映画はほとんどありませんので、最初から期待しないで観ました。で、ほとんど想像した通りの内容でしたね。別に犯人が分かったとかじゃなくて、ワザとらしいというか無理があり過ぎというか、要は演出とか脚本とかが稚拙なんですよ。映画そのものが、どんでん返しの為のストーリーになっちゃってるんですね。どんでん返しまでのお話が自然じゃないので飽きちゃいます。例えばシャマランの一連の作品(「どーなの?これ!」みたいな奴も多いですが(笑))とか、記憶に新しいところではトルナトーレの『題名のない子守唄』とか、ちょっと前なら『アイデンティティー』とか『フルイルティー』とか、それなりに良く出来ている作品はオチに行くまでに自然と謎が謎を膨らます感じになっているんですが、ダメな奴ってのは不自然さばかり目立ちますし、とってつけたようなシーンがいきなり入って来ます。この作品も、そういうダメ映画の典型的なパターンでした。ぶっちゃけ、ラスト10分だけ観れば十分な映画ですよ。ハル・ベリーもブルース・ウィルスも笑っちゃうくらい魅力も存在感もありません。っつーか、こんな映画に出るなよ(苦笑)
2007年09月27日(木) |
グラインドハウス/プラネット・テラー |
どちらかというと好きなタイプの映画なんですけど、長いですよ!本来はタランティーノが仕組んだプロジェクト、自身が監督した『グラインドハウス/デス・プルーフ』との2本立ての1本なんですが、個人的には「B級映画は90分以内がベスト!」という持論を持っているので100分を越えはいただけません。案の定、ダラダラと長いんです。15分くらい切ればサクサクと進んで観終わった後に「いやぁ、いい時間つぶしが出来た!さぁ、仕事でもするかぁ!」となったと思うんですけどねぇ(相変わらずの“オイラは何様だよ”発言)。まぁ、ぶっちゃけ、金持ちが「たまには居酒屋とかで飲んでみる?」みたいな印象がちょっとしましたね。金持ちになっても「やっぱ、玉子かけご飯が一番美味い!」って感じになってれば良かったんですけどねぇ・・・・・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ で、あのフェイクの予告編は実際に作るんですかね?
常に『ニュー・シネマ・パラダイス』の亡霊が付き纏うトルナトーレの新作『題名のない子守唄』。一流の監督はどんな題材で撮っても、完成された映画はその監督の匂いに満ち溢れているモノです。トルナトーレの作品は常に優しく、その目線は子供たち見守っている父親のような温かさを感じさせてくれます。今回もまた一人の女性の過酷な運命を、最後には大きな手のひらでの些細な出来事のように(どんな出来事だよ!)優しく包んでしまいます。腑に落ちない部分もあったりしますが、それこそ些細な事です。男には経験出来ない女性の喜びや悲しみの全てをサスペンス仕立てで凝縮してみせる手腕は、さすがはトルナトーレ!です。映画が始まり、断片的映像の積み重ねでグイグイと引っ張り込まれるのですが、心地良かったですね。結局は何を書いてもネタバレになってしまいますので、大したコトは書けませんが、観て損はありません。優しい気持ちになれる映画でした。
全くの余談ですが、主演の***の最後の顔が誰かに似ているなぁ・・・・と、考えていたらアーセン・ベンゲルでしたd( ̄  ̄) ヾ(^o^;オイオイ・・・
さて、最初に書いた「一流の監督はどんな題材で撮っても、完成された映画はその監督の匂いに満ち溢れているモノです。」という言葉の意味ですが、出来上がった作品の出来不出来は全く関係ないんですよ。どうしようもない駄作でも、その監督の匂いがします。何故か?それはその監督が自分を貫いているからなんですね。で、それこそが監督業の辛さだったりするワケです。まぁ、天才には関係ない話でしょうけどね(苦笑)
2007年09月21日(金) |
包帯クラブ スキヤキウエスタン/ジャンゴ オフサイド・ガールズ |
原作の力もあるのでしょうが、とても良く出来た青春映画でした。まぁ、この手の作品に甘い採点をする小生ですので、閉店間際の2割引目線で読んで下さい。個人的には今年の邦画ではベスト3に入る作品です。まずは冒頭で石原扮するワラの独白で既にやられてしまいました。全編に渡ってハンバートハンバートの音楽も心地よく(途中でちょっと過多でしたが・・・)、そのあまりに真っ直ぐな彼らの行動と相まって涙腺が必要以上に緩んでしまいました(苦笑)。後半で「そんな程度の決着なのかなぁ・・・」と訝しげに思っていたら、最後に今の時代(時代は関係ないのかな・・・)を象徴するような深遠を見せてくれて、評価が上がりました!主役の二人を演じる柳楽裕也と石原さとみは実に魅力的でしたねぇ・・・二人とも将来の邦画界を背負って行けるだけの素質は十分です。
堤幸彦と言えば、時代を先取りした写真雑誌を映像化したような実験的なTVドラマ『池袋ウエストゲートパーク』が有名ですが、その後の作品はその亡霊に意地悪をされていたような気がしてなりません。先日TVで観た『明日の記憶』も決して凡作ではなかったのですが、堤が得意とする映像センスが邪魔していたような気がしました。映像を駆使するという事は、ある意味、演出の自信の無さの裏返しだったりする場合もあります。堤幸彦がそうかどうかは知りません。ただ、今作に関して、その演出は堂々たるモノですし多少冗漫な部分もありましたが、彼の『IWGP』以降の最高傑作と言っていいかもしれません。
まさに三池にピッタリの題材だと思ったんですが、その出来は落胆させられるモノでした。この映画の致命的な欠点は主役の伊藤英明ですね。とにかく薄い!存在感ゼロ!主役の背景がほとんど描かれていませんが、そんなコトはどーでもいいんです。存在感があれば、そんなコトは必要ないんですよ!せめてオダジョー辺りが演じていたら、もう少し違った印象だったかもしれません。それにしても、このようなトンデモ設定の場合は役者の実力が分かりますねぇ。一番良かったのは桃井かおり!伊達に70年代からチヤホヤされていませんわ。一層のこと桃井かおりを主役にした方が良かったんじゃないですか!この人だけ英語が上手いので、ある意味浮いていますが(笑)。とにかく、笑えないギャグやしょーもないストーリーがまるで隠し芸大会の英語劇のようで寒くて仕方がありません!っつーか、幾らナンでも、もうちょっと脚本を煮詰めようよ!あまりに酷いでしょ!マカロニ・ウエスタンの脚本なんて、そんなに難しくないですからね!ラストの決闘シーンも北島三郎の歌も悪くないし、もったいないなぁ・・・。
映画が終わって中年カップルが以下のような会話をしながら出て来ました。
男:「なんだこれ!」 女:「全然意味が分からない・・・」 男:「失敗したなぁ・・・」 女:「『釣りバカ日誌』にすれば良かった!」
相手は『釣りバカ』かよ!そりゃ、違うだろ!でも、世間なんてそんなものなのかもしれんませんね(苦笑)。そういう意味でも、もうちょっとマトモな作品を作って欲しかったです。
あの『チャドルと生きる』のマジッド・マジャディ監督の新作です。はっきり言って予告編以上のモノはありません。題材はとても面白いので、おそらくもっと作りこんだ方が娯楽度が上がったのは間違いありません。でも、このテイストがイラン映画なんでしょうね。ストーリーは2006年ドイツ・ワールドカップ最終予選イランvsバーレーン戦の一日だけを描いているのでドキュメンタリー色が濃いです。臨場感はありますが、92分の映画なのにちょっと飽きてしまいました。っつーか、サッカー好きじゃなかったら、そんなに面白くないんじゃないですかね?良く分からなかったのが、一人の少女のお兄さんだったかな、事故で死んだみたいな話があったんですね。これはイランvs日本戦(2対1でイランの勝利)の後にスタジアムの外で観客と兵士の間でトラブルがあり、大勢の下敷きになって7人が死亡した事件のことらしいです。その際に報道された人数が6人だったらしく、7人目は女性だったんじゃないか?という噂がたったという話で、それも監督が映画を作るきっかけになったというコトでした。なるほどねぇ・・・。色々な意味でイランでの女性の扱いやら、サッカーに対しての情熱やら、ダエイはともかくメタリカの人気やら(笑)、イランという国を知る上で興味深い映画なのは間違いありません。
2007年08月29日(水) |
シッコ/SiCKO ベクシル |
マイケル・ムーアの新作『シッコ/SiCKO』。題名は“SICK”から派生したスラングで日本語では「ほとんどビョーキ!」とか「病んでる!」みたいな意味だそうです。個人的には彼の作品では一番好きです。アメリカに国保が無いのは知っていましたが(『走れ走れ!救急車』なんて映画もありましたしね。ラクエル・ウェルチが出てました!)、ここまで酷いコトになっているとは夢にも思いませんでした。っつーか、ダメじゃん!仕事柄、アメリカ人とは何回も仕事をして来たのですが、その度にアメリカ人のスタッフ同士が必ずと言っていいほど保険の話をしている場面があるんですよ。で、コーディネーターに「何で、アメリカ人って保険の話が好きなんですか?」と聞いたことがあって、その時に国保が無いことを知ったんですけど、驚きましたねぇ!「じゃ、医療も資本主義原理なワケ?それって大丈夫なの?」って言ったら「特に問題ないよ!」って答えていましたが、この映画を観る限り問題大有りじゃん!
対比として国保のあるカナダ、イギリス、フランスを取り上げ、その中でも特にフランスをこの世の楽園のように描いていますが、この辺りの仕掛けの塩梅が上手くて、マイケル・ムーア節が円熟の境地に入ってきた印象を思わせます。つまり、この映画をそのまんま受け入れちゃうような人々にはアメリカの民間保健医療がいかにダメか!ってことになりますし、それなりの知識層には「本当かなぁ・・・」と疑わせる作りになっていて、結局は『サンキュー・スモーキング』のように“与えられた情報ばかり鵜呑みにしてんじゃねーぞ!”っつー感じで、面白おかしく見せながらも、自分でバンバンしなきゃダメ!という極上のドキュメンターテインメント(こんな言葉ねーよ!)になっています。さて、予告編で胡散臭く見えたグァンタナモへの旅は前フリで、その後に興味深い展開が待っているのですが、ちょっと泣けてしまいました。
それにしても、ムーアは20キロの減量がこの映画のきっかけだった言ってますが、全然痩せたように見えないばかりか、酷い目に遭っているアメリカの人々が揃いも揃って肥満体ってのは、ジャンクフードしか食べられないからでしょうか?これも狙いだったりするんでしょうか?
しかし、やはりどう転んでもアメリカの民間保健医療は間違っているし、この映画を観たアメリカ人がどう捉えているのか興味深いです。まぁ、置かれた立場によってかなり違うんでしょうね。今更、どうにもならないんでしょうかね?と、よその国の心配ばかりしている状況では無さそうですね・・・・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ…
『ピンポン』で一躍名を挙げた曽利文彦監督の新作は3Dアニメを屈指した『べクシル』。まぁ、プロデューサーとして『アップルシード』に関わっていましたから今回の作品はその延長線上にあると言っていいでしょう。まぁ、『アップルシード』での映像よりは進化しましたが、結局のところ脚本はダメダメです。前半はそれなりに惹き付けられるのですが、後半はメチャクチャでした。大友克洋とかもそうなんだけど、ストーリーのツカミ(発想)は上手いのに、行きつく先はしょーもないんだよなぁ・・・それも、かなり低次元だし・・・コレって、どういうことなんでしょうか?誰か教えて下さい。というワケで、映像とSE以外は見所無し!で、その映像ですが、メインのキャラはもう少し頑張ればそれなりのステイタスを獲得するトコまで来てると思います。後は背景となるような人物達の描きこみかなぁ・・・。どちらにせよ、相当魅力的になって来ているのは間違いありません!
2007年08月15日(水) |
図鑑に載ってない虫 ファウンテン |
巷で評判が良いので観てきました。監督はテレ朝深夜ドラマ『時効警察(オイラは未見)』で名を挙げた三木聡。う〜ん、何処が面白いのか全く分かりませんでした。テーマがあるとすれば“生きていても死んでいても大差無いんだから、だったら生きていようよ!”みたいな感じなんですが、全編に渡ってしょーもないコネタが散りばめられていて、そんなテーマなんてどーでもよくなってしまいます。その押し付けがましくない辺りが“脱力系”と言われる所以なのかもしれませんが、オイラは苦手です。まぁ、ギャグセンスというのは人それぞれですし、一概に否定する気もありませんが、他人様には絶対お薦めしません。例えば、水野美紀がキッツイおならをして「実が出ちゃったかもしれないから、トイレ行ってもいい?」とか、乾いてないコンクリートの上をはしゃいで歩くとか、呼び鈴にアロンアルファを塗るとか、ヤクザが電車移動しているとか、ホルモン屋の店名が“内臓”とか、ナンちゃってのポーズを強くやりすぎて頭から血がピュ〜!とか、そんな程度のギャグが笑えるんですかね?そういうコネタっていちいち“どうよ!”って描くより、もっとさりげなく描いた方がセンスの良さを感じるんですけどねぇ・・・ナンだか、コネタが中途半端なんですよ。リスカの痕で山葵を下ろすシーンがあるのですが、だったら、そういうブラックネタで行けよ!と言いたくなります。ギャグのセンスに多少なりとも魅力的な部分もあるので、次作はもっとキチっとストーリーを描いた上でそのセンスを発揮してもらいたいものです(オイラは何様だよ!)。というワケで次作はこの秋公開の三浦友和、オダジョー、小泉今日子共演の『転々―てんてん』だそうです。松尾スズキは出てないようですから、一応観るつもりです(苦笑)。
『π』で注目され『レクイエム・フォー・ドリーム』で映画ファンの度肝を抜いたダーレン・アロノフスキーの新作『ファウンテン』。いやぁ、ダメでしたわ!なんですかねぇ・・・言いたいことや描きたいことは分かるんですけど、いかんせん強引過ぎでしょ!力技とも言えますが、かなりイっちゃってるんでついて行くのに骨が折れます。個人的にはヒュー・ジャックマンのテンションの高い演技が鬱陶しくて疲れましたし、宗教色の強い演出に失笑モード(ヒューちゃん、耳の形ヘンじゃね?とか・・・)でした。様々な宗教からの引用、語り継がれる永遠や生命の概念、ビッグバンに代表される誕生、“源”と云われる大樹や泉、指輪に纏わる物語・・・ありとあらゆるそれらしいモノ(ソレらしいモノって何?(自爆))をごちゃ混ぜにして、♪現在過去未来〜by渡辺真知子 って、描かれてもなぁ・・・。それなりの予備知識が無いとチンプンカンプン!っつーか、そういう知識に溢れている人たちにはメチャクチャ受けそうな・・・ある意味、嫌らしい映画とも言えます。この作品が最初からそういう“線”を狙っているというワケではありませんが、結果的にそういう状況になっているような気もします。いくらなんだって、もう少し分かりやすく作れないですかね?この作品を観る限り、ダーレン・アロノフスキーは当分ハリウッドメジャーから声はかからないでしょうね。でも、この作品でも5年かかっているからあまり関係ないかな。まぁ、レイチェル・ワイズをカミさんにしたことだし、とりあえず食うのには困らないでしょうけどね。
2007年08月09日(木) |
リトル・チルドレン トランスフォーマー フリーダム・ライターズ |
監督としてのトッド・フィールドを一躍有名にしたのは初の長編だった前作『イン・ザ・ベッドルーム』ですが、そのストーリー展開にいまいち釈然しないモノがあり、個人的には苦手な作品でした。ただ、隙の無い演出力だけは記憶に残っていました。さて、5年ぶりの新作となる『リトル・チルドレン』ですが、コレは素晴らしい作品です!小生の大好きなジョン・アーヴィングの世界“人間は、しばしばこっけいであり、悲しいものだ by T.S.ガープ”にも通じる“ダメダメだからこそ愛すべき人間”に近い印象です。ただ、アーヴィング作品には前向きに生きていく人間模様(ある意味、楽観的な・・・)が描かれているのですが、トッド・フィールズ作品にはもう少し後ろ向きというか、生きていくのに足掻いている状況が見え隠れします。そういう意味ではアーヴィングよりシリアスな印象が残ります。また同じ名前持つトッド・ソロンズに通じる部分もありますが、彼ほどはシニカルではありません。
日本では20歳になると選挙権が与えられ、酒・煙草が許され、世間一般的には“大人”の仲間入りとなります。バヌアツ共和国ではバンジージャンプの原典であるナゴール儀式で大人の仲間入りとなります。つまり“大人”なんてのは便宜上の仕分けであって(肉体的な“ほぼ”成長終了という意味はあるでしょうけど・・・)、幾つになっても精神は成長?し続けているワケです。言い方を変えると、多くの人間は“子供”から“大人”になろうと、日々下手糞なクロールで終わりの無いプールを泳いでいるようなものです。この映画は大人になれない大人たちの話じゃなくて、少しずつ大人になっていく人間たちの話だと思いました。
プールサイドで隣の人妻の水着姿に目を奪われるのと、幼い異性に目が奪われるのは、異性に性的な欲望を持つという意味では同じです。例えばイスラム教では不倫は死刑に値するような行為(一夫多妻は許されていますが)だったりもします。もちろん、幼い性に異性としての度を越した興味を示すのは明らかに病気ですから、それなりに善悪の判断が出来る人間同士の泥沼不倫劇などと一緒に語れるモノではありません。どちらにしても人間とは出来損ないの塊で、その出来損ないの部分が人に寄って異なるだけで、場合に寄って滑稽な時もあれば悲しい時もあるというコトです。そして出来損ないの人間は、どうして自分ばっかり!と自分勝手に嘆き、ふと目にした隣の芝生が輝いて見え、まるで夏の虫が光り輝く炎に魅せられるのとなんら変わりもなく、炒られてしまう人も多かったりします(そうなの?)。
それにしても、かの二人が男は少年性、女は母性という定番の形で決着するのが(二人とも心の何処かで何かの理由が欲しかったのかもしれませんね・・・)、いかにも俗物的でいいですねぇ。物足りない人は渡辺淳一の小説でも読んでください(笑)。
<オマケ> タッチダウンを決めて、その瞬間を自分だけのプロムクイーンが図らずも見てくれて居て、子供のように大喜びしてくれたら・・・二度と味わえるコトは無いと思っていた人生最良の時が!!!そんな時、男は何でも出来ると思うものです!そりゃ、スケボーなんて屁の河童でごわす!彼にしてみれば♪空も飛べるはず〜♪っつー気分なのは間違いありません(笑)。
ハリウッド系娯楽大作映画のフロントランナー!マイケル・ベイの新作はブラッカイマーではなくスピルバーグとのジョイントで実現した日本製アニメの実写『トランスフォーマー』!とにかく、お湯をかけて3分で出来るようなマイケル・ベイ節が炸裂ですなぁ。決して貶しているワケではなく、インスタント・ラーメンの素晴らしさも踏まえて言ってます。ただね、それぞれにキャラ付けされているトランスフォーマー達なんですけど、セリフだけの性格付けなんで薄っぺらいんですよ。その辺りも相変わらずのマイケル・ベイなんですけどね。で、巷ではCGが凄い!という話をよく耳にしますが、そんなに凄いかなぁ・・・個人的には『シュレック』の髪の毛のが凄い!と思ってしまいます。だって、機械なんてCGが一番の得意分野じゃないですか!だいたい、どう変身しているのかも良く分からんし、敵味方も分からんし、何であんな人での多いところを戦い場所に選んでいるのかも分からんし、たくさん生まれちゃったチッコイ連中はどうなったのか分からんし・・って、ツッコミがCGからズレてますね。まぁ、こういう映画に細かいコトをグズグズ言ってもねぇ(苦笑)。どうせ、1匹逃げたから『2』はあるんだろうし、楽しみましょ!
『フリーダム・ライターズ』ぶっちゃけた話、実話だから観られるような作品の作りでしたね。もちろん、悪い映画ではないし、観て損もないですけどオンエアで十分でしょ!興味をそそられたのは、生徒たちが変わっていくきっかけになっているのが“知識”ってコトなんです。どんだけ無知なんだよ!とツッコミを入れたくもなりますが、そんなものかもしれませんね。あまりに狭い世界しか知らない井の中の子供たちが大海を知った時に自分たちの小ささを知る!みたいな感じでしょうか。ただ、日記を書かせるという手法は分かるような気もします。今のブログ・ブームや携帯での日記ブームとか、結局は自分のコトを分かって欲しい、共感して欲しい、共有して欲しい、つまりは寂しいんですね。お父さん、お母さん、食事時にTVなんか観ないで、もっと子供と話しましょうよ!
2007年07月25日(水) |
ダイハード4.0 キサラギ |
マクティアナンじゃないんですね(苦笑)。今までで一番好きかも(笑)っつーか『トゥルー・ライズ』より好きです(って、どういう意味だよ)。意外だったのは親子の情がいい塩梅で描かれていて好感触でした。で、この娘がマクレーンにそっくりの性格っていうのもいいじゃないですか!成り行きは見えても「命の恩人を殴るワケにはいかない!」ってのが、今までに無い人間味を感じさせてくれて嬉しかったりもしました(苦笑)。アクションはほとんとコメディですが、それはそれでいいんじゃないのかな・・・。あまりのスーパーマンぶりについつい笑っちゃうんですけど、それは決してマイナスじゃないんですよ。それって、結局は「まぁ、いいか、そういう映画だもんな(苦笑)」って感じですから、ある意味“お約束”なんですよ。こうなったら、次回作(あるのかよ!)は父娘で頑張って欲しいですね(笑)。
はっきり言って舞台劇です。というワケで、最初は舞台風のオーバー演技がウザかったのですが、脚本が良く出来ているので気にならなくなりました。ああ、なるほど!おお、そうか!もう一回捻るだろ!ひょっとして?みたいな感じで段々と全貌が見えて来て、最後はほとんどオチが分かりますが、それでも十分面白いです。最後の落としどころにした相手にも好感が持てますし、それぞれのキャラのアイドルとの関わり方にも、マイナーアイドル特有の寒々しさがあり納得させられます(苦笑)。ただねぇ、演出が中途半端なので画的な魅力に欠けますし、いまいち貧相な印象が残ります。どうせ舞台劇なんだから、もっと遊んでも良かったと思いますよ。アングルとかもそうですし、特にライティングはお粗末でした。もっと蜷川みたいにしちゃえば良かったのに!それでも、この映画は好感触です!脚本さえ良ければ邦画だってまだまだバカに出来ないですよ。でも、悲しいかな脚本が読めるプロデューサーが少ないんですねぇ・・・。まぁ、『世界の中心で愛をナンタラ』とか『海猿』があんなにヒットしちゃうんだから、観客のレベルも知れたモンなのかな・・・\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ…というワケで、出来ればもっと多くの映画館で上映して欲しかったです。大手がキチンと作ればマリオンで上映出来るだろうに!だって『舞妓Haaaan!!!』が出来るんだからさ!もったいないよなぁ・・・( ̄o ̄;)ボソッ
2007年07月14日(土) |
アヒルと鴨のコインロッカー ゾディアック 傷だらけの男たち |
巷の評判がけっこう良いので観てきました。う〜ん、どうなんでしょうか?オイラは普通よりはちょっとだけイイかなぁ・・・って程度でした。まずは前半がダル過ぎです。主人公以外のキャラがいわく有りげな雰囲気を醸し出しているので、後半に何かがあるんだろうなぁ・・・と、思いながら観ていたのですが、とにかく退屈でした。案の定、後半は俄然魅力的な展開を見せるだけに残念です。例えば、絡まった糸を、積極的に解きたくなる様に見せるのが演出の力だと思うのですが、この映画にはそれが足りません!だから、本来ならばゾワゾワって来るシーンも「まぁ、そういうことになるね。」と淡々と流れてしまいました。つまるところ、ボブ・ディランに関してだけ饒舌過ぎるんですよ。ぶっきら棒な前半部の中で、やたらと登場するディランに纏わる話がバランスを悪くしてるし、結局はこの事が作品の足を引っ張ったような気がします。だから、後半は観ながら先を急いでしまいました。「うんうん、それで、それで!」じゃなくて「サッサと次へ行けよ!」みたいな感じです。まぁ、後半の展開にしたって、サッサと警察に届けろよ(普通はナンバーを見てるでしょ)とかツッコミを入れたくなる部分もありますが、それは\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ、視点は面白いですし、原作は読んでみたくなりました。ぶっちゃけ!この作品に関しては演出が下手過ぎ!ってコトなんでしょう。それとも・・・ボブ・ディランを知らない世代にはこのくらい饒舌じゃないとウケないんですかね?今回はちょっと辛口過ぎかな?だって、ボブ・ディラン=神の声って、こそばゆいですよ。そんなんだったら、ミック・ジャガーだって、デビッド・ボウイだって神の声でしょ!別にディランが嫌いなワケじゃないですが、あんまり神格化されてもなぁ・・・みたいな。まぁ、仕方無いか、オイラが歳を取り過ぎなんですね(苦笑)。
デビッド・フィンチャー新作『ゾディアック』。相変わらずツカミは上手いですねぇ!いきなりスリードッグナイトの♪EASY TO BE HARD 、ドノバンの♪HURDY GURDY MAN、サンタナの♪SOUL SACRIFICEと三連発で流れて来た時には「この映画、大好き!」とメチャクチャ好感触で始まったのですが・・・結局は長さを感じてしまいました。まぁ、元々長いのですが、やっぱり良い映画ってのは長さを感じさせないというか、気にならないというか、ズっと観ていたいというか・・・、今回はちょっと( ̄― ̄; ヒヤリ。
劇場型連続殺人事件に魅了されていくポール・エイブリー記者、デイブ・トースキー刑事、ロバート・グレイスミス風刺漫画家の3人への受け渡しが上手く行ってないような気がします。別々の印象というほどでは無いのですが、3話完結のような感じでしょうか。1本の映画の完成度という点ではイマイチでした。決して詰まらなくはないですが、長いです(笑)。
とあるコトに興味を惹かれた時・・・身近な誰かがその事について自分よりも詳しく、そして心血を注いでいたりすると応援しているだけで満足出来たりするのですが、その誰かが何もしなくなると「えぇ〜止めちゃったのぉ?なんでぇ?」みたいにグズグズ言い出して、挙句の果てには自分が追求し始める・・・人間の性ですねぇ。一時期は熱中症のように魅入られるのに、ある時、嘘のように全く気にならなくなる・・・。例えば次のような経験は子供を持つ親ならば誰でも経験があると思うのですが(ねーよ!)、酒を飲んだ帰りに場末の路上で「お子さんにどうですか?レアなキャラですよ、旦那!」なんて言葉に煽られ、その気になって手に入れ、家長の威厳タップリにポケモンに夢中の子供に「ほら、レアキャラだぞ!」なんて見せると「ふ〜ん・・・偽者だね」と冷静に対処され、その反応があまりに冷たいので、カミさんに聞くと既にポケモンは過去の人になっていたりするのと同じです(苦笑)\(-_\)(/_-)/ ソレハコッチニオイトイテ…結局、ミイラ取りがミイラに取り付かれてしまうわけですが、誰がやったか?じゃなくて、その事件そのものに取り付かれてしまうってことなんですね。つまり、事件が現場で起きているのは当たり前ですが、何年も前に終わっている事件でも生き続けているワケです。もちろん、仮死状態(休火山)だった事件を生き返らせるのは人間ですが、何年経っていてもそのような事件は人を魅了し続けます。何故なら、人間の底知れない深い部分を刺激しているからで、そこには少なからず自分と重なる部分があったりするのでしょう。
ただ、この映画が『殺人の追憶』を見終わった時のような不気味さが残らないのは、饒舌過ぎたからでしょうけど、それは監督の狙いの違いでしょう。人間が不気味なのか、事件が不気味なのか?個人的にはその辺りに物足りなさを憶えました( ̄。 ̄ )ボソ。スタイリッシュより泥臭い方に軍配かなぁ・・・(何様だよ!)。結局のところ人間は分からない・・・だからこそ魅了されるのでしょう。言い方を変えれば、人間というのは様々な意味でバケモノなんですね。長い映画でしたが見応えのある1本でした!
『インファナル・アフェア』は突然変異的な傑作であり、アンドリュー・ラウ&アラン・マックの二人が毎回傑作を作るとは思えないので(ファンの方、ゴメンナサイm(_ _)m)、新作『傷だらけの男たち』を観に行く予定は無かったのですが、デカプリオがまたリメイクすると聞いてチェックしてきました(行くなよ!)。というワケで足を運んだのですが・・・やっぱりなぁ、行かなきゃ良かった(苦笑)。今更使い古されたネタを下敷きにするのは構いませんが、登場人物達があまりにステレオタイプだし、脚本にもな〜んの捻りもありません。はっきり言って稚拙です。松本清張原作の2時間ドラマの方が面白い作品が多いような気もしますしね(ホントかよ!)。早い段階で犯人が分かってしまうのがサスペンスで、最後に犯人が分かるのがミステリーと言われていますが、そういう意味ではサスペンス系の作品なのですが、全くと言っていいほどサスペンス感がありません(っつーか、サスペンス感って何?)。つまり、サスペンスでもミステリーでも構いませんが緊張感は皆無で、ひたすらウェット系の毒ガスが漂っています。幾らナンでももう少し魅力的に作れたような気がするんですが・・・。相変わらず人物関係も分かり辛く、それでも魅力的な内容なら必死に追いかけるのですが、どうでも良くなってしまいました。デカプリオのリメイクですが、考えてみるとこういうウエットな復讐系(何年にも渡って恨む!みたいな・・・)の話ってハリウッドではあんまり無いですねぇ。
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