2002年02月23日(土)
君さえ泣かなければこんなところに落ちてこずに済んだのに…―――
「お前がセレスなのか?」 「…は、はいっ!よろしくおねがいします!!」 「ハハハ、そう硬くなるな。私たちは兄弟なんだから。」 「…でも…」 「…ん?」 「…でも、僕は今まで一度も貴方と会ったことがなかった。神様だからって。」 「…そうだな…。でも、これからはずっと一緒だ。何があろうとも。」 「はい。頑張ってお仕えします神様!!」 「……そう言うのはナシにしないか?」 「え?」 「私は、普通に接して欲しいんだ。…『神』ではなく。せめて二人のときだけでもいいから兄と呼んでくれ。」 「は、はい………あにうえ。」 「…うん、よろしく、セレス。」
そう言って微笑んだ彼の表情は何よりも神聖で綺麗だった。 …僕が彼を特別に想うようになるのは簡単なことだった。
「兄上、何を読んでるの?」 「花言葉の本さ。」 「はなことば?」 「そう、花にはそれぞれ言葉を持たされているんだよ。」 「へぇ〜…バラにも?」 「…何故バラが出てくるんだい?」 「だって、バラは綺麗じゃない?」 「確かにそうだけど…」 「バラの花言葉は何て言葉なの?」 「色によって違うんだがな…赤いバラは『真実の愛』、白いバラは…」 「黄色いバラは…嫉妬?」 「…ああ、そうだな。…この天上には…無縁とされる言葉だ…。…どうして…」 「…?あにうえ?」 「…どうしてこんなに取り繕った世界になってしまったんだろうか…」
その時の彼はとても悲しそうな瞳をしていて。当時の自分にはわかることが出来なかった。 心は幼く。…けれど確実に醜い独占欲に支配されていって。
「イヤだ――――――――――ッツ!!」 「…?」 「うるさい!!さっさと歩け!!」 「イヤだ!!堕ちたくなんてない!!」 「何を言っている!自業自得だろうが!!」 「…ねぇ?」 「は!せ、セレス様!!」 「どうしたの?さっきの人…。」 「いえ、不敬を働きまして…。御神以外に『一番』の好意を寄せていたんですよ。」 「…ふぅん。」
この世に神を、彼を愛せない人がいるなんて理解なんて出来なかった。 だって僕自身、彼を愛しているから。
でも、ある日…
「セレス…この世界を、どう思う?」 「え?綺麗なところだよ?!」 「…見た目だけは、な…」 「?」 「本当に愛しているものに『愛している』といえない世界は…綺麗なんかじゃないさ…」 「そう?僕は言えてるけど?『愛してる』って…」 「それは、私に対してだろう?本当に愛しているものでは…」 「僕は君が好きだよ?世界で一番…」 「…それはお前の本当の意思ではないよ…」 「そんなことない!!本当に…本当にッツ!!」 「…セレス…?」 「僕は君が好きだ!愛してる…独り占め、したいくらいに…」 「セレス…」
綺麗な君。美しい君。 他の人のことなんて考えないでよ。僕だけを見つめていてよ?
「私も…お前が好きだ…愛している…。でも…」 「でも、神は一人だけを愛しちゃいけないんだよね?」
判ってる。判ってる。
「そんなことは、ない…」 「え?」 「そんなことは…あいつ等が勝手に決めたことだ。」
七人の大天使たち。
「他の天使たちも…私が一番じゃなくてもいいんだ…あいつらが、勝手に決めたことだ。…操りやすくするために。そんなのは、民達が不幸になるだけなのに!」
貴方はいつだって心底では民のことばかり。 僕がいくら想っても。…貴方は『神様』だから…。
「…泣かないで…?」
僕に、僕の中にあの言葉が、あの感情が芽生えた。
「…僕だけは、本当に君のことが好きなんだから…泣いて欲しくない。」
…『嫉妬』…
「セレス……。」
そうして、彼の唇は僕の唇と重ねられた。 それは、たくさんの重罪の始まりだった。 神が一人だけを想うこと。 同性間での恋人意識。 兄弟間での性行為。
暫くは誰にも知られることがなかったけど… だからと言って幸せなときが続いたわけじゃなかった。
「それは重罪ですよ?」 「判っている。」 「いくら貴方が絶対唯一の存在でも、…いや、だからこそ示しがつかないんです。民達に。」 「ああ、わかっているさ。」 「どう、なさるおつもりですか?」 「堕ちればいいんだろう?」 「…ほう?」 「堕ちてやるさ!こんな見た目ばかりの土地なんていらない!」 「…そして、繰り返されるのですな?」 「!?」 「『奈落』を第2の天上にするおつもりでしょう?…そしてここを滅ぼす。」 「…違う!」 「違わない。いずれ貴方は奈落を支配し、ここを滅ぼす。…それだけはね、避けなければならないんですよ。」 「違う!違う!!」 「堕ちなさい…『奈落』ではなく、『黄泉』へ!!」 「…!!」
…セレス…
「…?あれ?」 「どうかしたの?」 「ん…今、呼ばれたような気がして…」 「?私には何も聞こえませんでしたわ。」 「気のせい、かなぁ…」
「フローラ様!!」
「どうしたの?マゼンタ。」 「は!セレス様とフローラ様には辛い報になるけど…」 「?」 「先ほど御神がミカエル様方に…処刑、されたジャン…。」 「!!!!!」 「セレス様!逃げて!!じきにここにもミカエル様が貴方を処刑しにやっくるジャン!!」 「そ、そんな…」
「処刑なんてしませんよ。」
「…ミカエル!!」 「そう恐い顔をなさらずに、蛍石の花女神。安心して下さい。セレスは処刑しません。…だって彼は被害者なんですから。」 「どういう、こと?」 「彼はただ従順に『神』を愛していただけだ。罪を犯したのは御神の方…」 「違う!僕が…僕が!!僕は…!!」 「違わないよ。恐かっただろう?セレス…。君は偉いよ。その偉業に敬意を表して…君を次の『神』にしてあげよう。」
「セレス!!逃げなさい!!」 「…あね、うえ…?!」 「あの子と、…ルシファーと約束したんでしょう?…『本当に好きな人に愛を告白できる世界を作る』と!!こんな…こんなところでは無理よ!別の世界でその願いをかなえなさい!!…マゼンタ!」 「ハイ!!さ、セレス様!!」 「あねうえあねうあねうえー!!」 「…アタシが手引きします!!…一先ずは…奈落に。」
どうしてどうしてどうして? 僕はここに来たかったんじゃない!! …君のいるところへ。 ルシファー…君さえ泣かなければ僕たち離れ離れなんてならなかったんじゃないの?
□□後書き□□
スミマセン…訳わからん。 ただ、なんとなーく、セレスの堕天してきた話を書きたかったの。 ちゅーか、もうルシファーとか、深く突っ込まないでね。色々と間違いまくってるのはすっごく判ってますので。天使の本とかいっぱい読んだけどどれもピンとくる名前がなかったのよ…
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