2008年07月11日(金)
何の曲だかよく解らないけれど綺麗なんだっていうことはよく解るピアノの音色が終わって俺は一人、拍手する。
獄寺君が俺のために、と照れながら、ピアノを弾かせてくださいと申し出てきた。 ピアノどころか、音楽なんてJ−POPぐらいしか聴いたことないから良し悪しなんて解らないけれど。いいよ、と頷いたのがほんの10分ほど前。
「獄寺君すごいね!綺麗な曲だった!!」
さっきも言ったけど、音楽の良し悪しなんてわからない。 でも、獄寺君が俺のために弾いてくれるのがよく解ったんだ。
「ありがとうございます。」
へにゃり、と照れたように笑う。 獄寺君のそんな表情は俺が彼を褒めたときに見ることができる俺だけが知っている、レアなもの。
ふと、さっきまで鍵盤を叩いていた獄寺君の手を見る。 俺よりも大きな手のひら。長い指。 以前、手の大きさをくらべっこしたときに、山本よりも少しだけ大きかったのを思い出した。そして、どこかで大きな手はピアノが弾きやすいってのを聞いた事も。
「…じゅう、だいめ…?」
無意識に、獄寺君の手を両手で持って見ていた。 獄寺君の声にはっとして慌てて引っ込める。
…うわ、何やってんだ俺…。
「や、大きな手だなって、思って!!」
顔が真っ赤になっているのが解ってるから視線をそらして少しうつむく。
「そういえば、大きな手はピアノを弾くのに向いてるって聞いたことがあるんだよね。」
俺がそう言って、獄寺君が「あ…」と声を漏らした。
「…俺は、『柔らかい手』だって聞きました…。」
少し元気のない獄寺君の声に違和感を感じて獄寺君のほうを見れば。 何だか複雑そうな顔をしていて。
今度はちゃんと意識して獄寺君の手を取った。
「本当だね。よく触ってみたら獄寺君の手、結構柔らかい。」
にぎにぎと、獄寺君の手のひらや指の感触を楽しむ。 獄寺君は顔を真っ赤にして俺が持っていないほうの手で口元を隠した。 なんだかそんな獄寺君の様子がすっごく可愛くて俺はくすぐったい気持ちになるんだ。
俺は獄寺君がさっき弾いてくれた曲とか、どうして元気がなかったのかはわからない。 でも、俺がこうやって獄寺君に触ったりさっきみたいに褒めたりしたら盛大に照れて嬉しそうに微笑んでくれることは解ってるんだ。
顔を真っ赤にして盛大に照れて慌てる獄寺君にお構いなしで、獄寺君の大きな柔らかい手を触って俺は届くわけもないテレパシーを送る。
大好きだよ。元気を出して、って。
アニリボの獄寺君の過去話を見て突発的に書いたSSでふ。 捏造スマソ。
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